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球児が涙で持ち帰る「甲子園の土」って、いったい「どこの土」なの?

竹内 翔

竹内 翔

2015.08.19 17:11
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甲子園の風物詩となっているのが、惜しくも敗れた球児たちが、涙ながらにグラウンドの土を集め、持ち帰る光景だ。この風習は故・川上哲治さんの球児時代にはすでにあったといい、甲子園から出ていく土の量は、年間なんと約2トンにも上るという(朝日新聞2013年7月13日付朝刊)。

甲子園の土を集める高校球児(DX Broadrecさん撮影、Wikimedia Commonsより)
甲子園の土を集める高校球児(DX Broadrecさん撮影、Wikimedia Commonsより)

ところでそんな「甲子園の土」だが、いったいどこから来た土なのかご存じだろうか。

2種類の土を匠が絶妙にブレンド

甲子園球場のグラウンド整備を一手に担っているのは、阪急阪神系列の企業・阪神園芸だ。

グラウンドの土の素材となるのは、園芸にもよく使われる「黒土」と、水はけのよい「白砂」。黒土ばかりだと硬くなりすぎてしまうし、白砂が多いとグラウンドが白くなってしまい、ボールが見えにくくなる。

天候などとも相談しながら、季節に合わせて両者をブレンドして作られるのが、「甲子園の土」なのだ。そのバランス調整は、まさに匠の技だという。

最初は甲子園の近くで集めていたけど...

さて、その黒土と白砂の産地である。

創設当初は、岡山県の丘陵地・日本原から黒土を、また白砂は球場のすぐ近く、香櫨園の砂浜から集めていた。ところが1975年ごろから、採取への規制などの事情で、この2カ所からの調達が難しくなってしまう。

その後は試行錯誤を繰り返しながら、現在まで主力となっているのが鹿児島県産の黒土だ。きめ細かさと適度な粘り、そして保水力を持ち合わせ、甲子園にとってはまさに理想の土だった。過去の新聞報道(朝日新聞1996年8月16日夕刊)を見ると、この土の存在を知った阪神園芸側が、現地の業者に入れた電話がなかなかふるっている。

「いい土があるそうですね」

白砂の方は中国から来ている

甲子園球場の公式サイトによれば、鹿児島以外にも三重、大分、鳥取などからも土を納入し、これらを混ぜて使っているという。「初代」である岡山・日本原の土も使用されているそうだ。もっとも産地は「毎年決まっているわけではない」とのこと。

また、白砂の方は、意外にも遠く中国・福建省から運び込まれている。水はけの良さが、選ばれた決め手だったそうだ。

というわけで、甲子園の土は「どこの土」というより、担当者がこれまでの経験と技術に基づいて作り上げた、まさしく「甲子園の土」と呼ぶべきだろう。観戦の時は球児はもちろん、その土に精魂を傾ける人たちのことも、たまには思い出してみては?

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