移住希望者同士がともに「なりわい」を探す―鳥取県が始めた新しい形の講座「とりラボ」
女性に多い「故郷じゃないけど鳥取が好き」
プログラムは13時30分に始まった。進行役は鳥取ラボラトリー事務局代表の小谷草志さん。なかなかのイケメンでしかも若い。関西出身らしい軽妙なトークで場を和ませる。
最初に参加者の自己紹介が行われた。応募した理由や鳥取でしたいことを各人が簡単にスピーチする。
男性は全員鳥取県の出身で、故郷に対する秘めた思いを素直に述べていた。
一方、女性は出身がバラバラ。鳥取に縁のある人もいれば、「旅行して気に入ったから」という人もいる。ある既婚女性は「旦那はあまり乗り気じゃないけど、引っ張ってでも連れて行きたい」と意気込んでいた。
第1部は「今の『とっとり』を知る」。鳥取市鹿野町(地区)・八頭町・智頭町からやってきたゲストスピーカー3名が、各地域の実情と抱える問題点、町おこしの活動について、プレゼンテーションを行った。
彼らは市役所や町役場の正規職員ではない。腰の重い行政を動かすため働きかけを行ったり、集落の意見調整、地域おこし運動、地場産業の活性化などに汗を流してきた。
鳥取市鹿野地区は移住者を受け入れる体制が整っていて、移住者が移住者を呼ぶ状態になっている。2014年度は21人が移住した。店を開く人も入ればゆるい仕事観の人もいて、いろんな意味で人材は多彩そう。
話を聞いて感じることは、人口の少ない地方は住民一人ひとりの存在が重いこと。平成の大合併で市や町の規模は大きくなり、行政の合理化が進んだ一方で、職員も手が回らなくなってきているのではないか。
移住先に骨をうずめる――地域の歴史をつむぐ覚悟があれば、出身地でなくてもキープレイヤーになり得るのではないか。
ゲストスピーカーからは意外な話も飛び出した。鳥取県全体では空き家が増えているものの、移住者に人気の地域は空き家の確保が追いついていないというのだ。
3地域が移住者受け入れ先進地で、人気が高いことが一番の理由だが、所有者が出し惜しみをしていること、定住意欲に乏しい「渡り鳥」に対する警戒心なども背景にある。鹿野地区の場合、協議会と所有者の間に信頼関係があるので、空き家活用に至っている。