ぐるぐる回る地下鉄「都営大江戸線」と「名古屋市営名城線」を勝手に比較してみた(後編)
では、実際の比較に移ろう。
【前編の記事】
「ぐるぐる回る地下鉄『都営大江戸線』と『名古屋市営名城線』を勝手に比較してみた(前編)」
快適に乗れるのはどちら?
大江戸線の列車本数は多い。朝は3・4分、日中は6分おきにやってくる。時刻表とにらめっこする必要は始発・終電を除きほとんどない。
裏返せば利用者が年々増えていることの証しでもある。朝夕のラッシュはひどくなる一方。一部に積み残しも見られる。
それに輪をかけるように、光が丘から先に延伸することがほぼ決まっている。開通は当分先とはいえ、阿鼻叫喚の光景が展開されるのは間違いない。
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赤羽橋駅のホーム側面は多数の四角いガラスが埋め込まれており、利用者の目を引く。イタリアのガラス工芸会社が制作したものだ。

東京が運営する路線として、世界に誇れるデザインにしよう――。そんな意気込みは伝わるし、実際絵になっている。
ただし手放しでは称賛できない。大江戸線は1メートル当たり180万円の建設費がかかっていて、総額は1兆3000億円を超える。減価償却が完了するのは何十年も先の話だが、滞りなく返済は続けられるだろうか。シルバーパスの乗客だらけになりそうな予感もするけど。
一方、名城線の駅施設はいたって普通の設備だ。建設費の返済問題は名城線も他人事ではないが、「借金まみれのクセにこんな豪華なもの作りやがって」みたいな雰囲気はない。
バブル的な雰囲気は否めないものの、大門で羽田空港行きの東京モノレールまたは都営浅草線につながっていることもあり、外国人旅行者の大江戸線利用者は年々増えている印象だ。
納税者として多少の腹は立つものの、世界に通ずるデザインと知名度は大江戸線の方が上だろう。
世界標準に近いのはどちらだ?
名城線や山手線のように環状運転をしている路線はソウルや北京、ロンドン、モスクワにも存在する。山手線の場合、方向を「内回り」「外回り」という言い方をするが、国際標準では「右回り」「左周り」が普通だ。
名城線はこのルールに従っていて、外国人にも分かりやすい表示になっている。

一方の大江戸線は「大門・六本木方面」または「両国・春日方面」という言い方をする。地名が頭に入っている人には便利だが、東京に慣れていない人には少々つらいだろう。 国際標準に近いのは名城線だ。
以上、4つの観点から大江戸線と名城線を比較した。
道路整備が不十分で、しかも地下構造物の多い東京。その隙間を縫うように作られた大江戸線は、日本の土木建築技術の精華ともいえなくもない。工事関係者の苦労がしのばれるが、利用者目線からすれば窮屈なところも残る。
戦後復興計画を名古屋のように徹底していれば、地下鉄を含め全く違った東京になっていたことだろう。
Jタウンネット編集部としては、3対1で名城線に軍配を挙げたい。