ココからあなたの
都道府県を選択!
全国
猛者
自販機
家族
グルメ
あの時はありがとう
旅先いい話

「クラウドファンディングで終わるつもりはない」 FAAVOが見据える「地方創生」、その真の目標は?

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2015.04.26 11:00
0

これまでに350件のプロジェクトが終了したFAAVO。事業部リーダーの八木輝義さんによると、目標金額の達成率は平均で66.7%、直近3カ月に限っていえば75%を超えており、日を追うごとに成功率が高まっているという。

この記事の前編
「地方創生のキーは、地元を離れた『出身者』たちだ―地域特化型クラウドファンディング『FAAVO』が描く日本の未来像」

よそ者が気づいた「地域に眠る価値」

――これまでに実施した中で反響の大きかったプロジェクトは何だったのですか。
八木 金額上で反響が大きかったものの1つは、宮崎県日南市の補助金事業だった飫肥杉(おびすぎ)を使ったプロジェクトです。「obisugi-design」というサイトもあって、木材を使ったオシャレな小物や家具などが掲載されています。その世界展開をプロジェクトとして募り、目標金額を250万円に設定したところ325万円集まりました。地方レベルでこれだけの金額が集まるのは珍しいケースです。
このプロジェクトを起案した人はIターンの人です。商品に惚れ込み「海外に売り込みたい」と勝手に思ったそうです。実際に海外の反響もあった。
もともと行政のカネでやっていたことを、補助金や助成金を使わずに海外で展示会やギフトショーに出展したいと起案者は考えて、周囲を巻き込んで実現させました。

2014年8月にニューヨークで開催されたギフトショーの様子(obisugi-designフェイスブックページより)
2014年8月にニューヨークで開催されたギフトショーの様子(obisugi-designフェイスブックページより)

そもそも飫肥杉再活用の補助金事業が始まったのは、植林で杉が増えすぎて間引きしなくてはならなくなり、その使い道を作る必要があったからです。
昔は林業が盛んでしたから、杉の育林が地域のためになると思って祖父の世代が植えたところ、今それが使われずに赤字になって残っている――。その地域に住む高齢者の気持ちをどうするのかというときに、obisugi-designが現れ、共感が生まれたのです。

フィーは数万~数十万

――FAAVOのビジネスモデルについてお聞かせください。
八木 本部が受け取るフィーはエリアの広さや契約期間で数万から数十万と異なります。
最初は県単位だけでしたが、実際にやってみると県全体を網羅できるオーナーさんがあまりいないことに気づきました。
小回りを考えると市やエリア単位で出した方がいいという意見が出たので、つくばエリアや横浜市みたいな形でエリアを絞り、その大きさとコミットいただける期間によってフィーを相談させていただいています。

――そのほかの追加費用は発生しますか。
八木 イニシャル料、つまり最初に支払う頭金などは一切ありません。毎月かかるフィー以外ですと、プロジェクト成功のたびに発生する手数料をプレイヤーからお預かりします。
その内訳ですが、弊社はプロジェクトの成功報酬をほとんどいただいていません。
プレイヤーが支払う手数料は成功報酬の20%です。例えば100万円のプロジェクトを達成した場合は、プレイヤーに80万円が振り込まれます。残り20万円のうち、クレジット決済手数料として5万円を弊社が預かります。残り15万円がエリアオーナーに丸ごと振り込まれます。

――サーチフィールドが儲かるわけではないのですね。
八木 弊社がどんなに頑張っても利益はあんまり伸びないのですが(笑)、それでもいいかなと思っています。全国を網羅して地方を盛り上げていきたいですし、その代わり本部の仕事がダブルチェックで済むくらい、現地のCFマネジャー育成に注力したいと思っています。
現地のCFマネジャーとしてのスキルが上がるほど、成功率も上がってきます。普通のCFよりもFAAVOの成功率が高い理由は、地元に対する偏った愛情があるからです。成功させたい人が多いんですね。普通だったら5000円しか投資しないところが、6000円、7000円という金額の応援につながっています。

FAAVO事業部リーダー 八木輝義さん
FAAVO事業部リーダー 八木輝義さん

CFの枠を超えて、移住やU・Iターンでも貢献したい

――今後の目標を教えてください。
八木 まずは日本全国をカバーすることが一番の目標ですね。例えば私が最近まで住んでいた栃木県宇都宮市にエリアオーナーはいません。そういう状態はなくしていきたいです 先ほどの飛騨高山信用組合のような金融機関や、自治体との連携も強化していきたいと思っています。誰が運営母体になるかということも重要なので。

地方創生関連事業として、内閣府主導で「ふるさと投資」連絡会議という会議体が立ち上がり、クラウドファンディングのスキームを用いた地方の新たな資金の流れをつくるべく、現在「ふるさと投資」の手引きを作成中です。
もちろん、FAAVOも構成団体の一つとして参画しています。手引きとしての精度は高く、網羅性もあり、事例も豊富で素晴らしい仕上がりになるとは思いますが、これから課題となるのはこの手引きを地方にインストールできる翻訳者の存在です。
はじめて見る横文字やスキーム図、きっと簡単には腹落ちできないと思います。地方ごとに環境も課題も違うわけですので、事例そのものを真似するのではなく、参考にすべきはプロセスだったりします。
そういった運用上の課題が露わになるとき、弊社は地方発のプロジェクトを立ち上げる起案者を最大限フォローアップできる体制を整備し、「現地のフォローアップが優れているのはFAAVO」と言われる環境を作りたい。
※「ふるさと投資」とは、地域資源の活用やブランド化など、地方創生に資する取り組みを支える様々な事業に対するクラウドファンディング等の手法を用いた小口投資であって、地域の自治体や地域づくり団体の活動と調和が図られたものをいう。

――最後に、日本の地域の未来像をどうお考えでしょうか。
八木 この席にはいませんが、事業発起人の齋藤は次のように申しています。

「日本の人口が減少するなかでキーとなる存在は出身者だと思っています。人口移動する可能性が高いのは、I・Jターンよりも圧倒的に出身者ではないでしょうか。この出身者の存在がまだまだ軽視されているような状態で、地方から適切な情報が発信されていないように思います」

八木 実は先週、私の母校である今治市立美須賀小学校の閉校式でした。128年続いたのに学校からその情報は県外には発信されず、地元のタウン誌に掲載されただけ。恩師経由でその情報を知った私は、(1)母校が閉校すること、(2)閉校記念事業が行われることを自分のフェイスブックに書いて拡散したのです。
記念式典には私を含む卒業生が出席しました。有名な画家や地元テレビ局に出演するコメンテーターも来校して、大変に盛り上がりました。

そういう思いはお互い伝えた方がいいのではないでしょうか。地方は自ら情報発信することが必要になってきますし、それを欲する出身者は地元にアンテナを向けています。両者の距離をFAAVOというサービスで埋めていきたいです。

CF事業としてFAAVOを終わらせるつもりはありません。
我々は出身者とつながっているので、どこにどういう出身者が何人いるかを可視化できると、それが地方創生における人の動きの情報ソースになると思っています。
入口としてはCFかもしれませんが、今度は実際に足を運んだり、移住もしくはUターン・Iターンといった形につながる可能性もある。
「出身地と出身者とをつなげる」というコンセプトの下に、地方創生のなかでキーになる存在になりたいですね。

PAGETOP