岡山駅と岡電とイオンモール岡山が「つながる」日、街は大きく変わるかもしれない
岡山市には日本で一番短い路面電車が走っている。運営会社は「岡山電気軌道」といい、営業したのは明治45年(1912年)と100年以上の歴史を有するも、営業距離は2路線で約4.8キロしかない。ピークでも約5.2キロしかなかった。
愛称は「岡電」。1968年にワンマン運転を導入したり、1991年に日本初の女性路面電車運転士を誕生させたり、低床車「MOMO」を導入して業界の度肝を抜いたり、「猫のたま駅長」で有名な和歌山電鐵を南海電鉄から引き継いだり――。規模の割に意欲的な会社として有名だ(参照:和歌山電鉄で人気の「たま電車」 「猫耳」にバージョンアップ)。
そんな岡電にもウィークポイントがある。
起点駅は「岡山駅前停留場」だが、JR岡山駅から約180メートルの距離がある。乗車用ホームは市役所筋(駅前交差点)を超えた、桃太郎大通りの中央部に位置する。辿り着くには地上の横断歩道を渡るか地下街を通らなくてはならない。
岡電からJR岡山駅への乗り換えはさらに遠く、20メートル以上後方の降車用ホームで下車させられる。
車と路面電車が分離されていることで駅前の混雑緩和は果たされているが、他地域からやってきた人にとっては少々分かりにくい。また足腰の弱い人や大きな荷物を持った人は「岡山駅前から乗れればいいのに」と思うことだろう。
約180メートルを縮めることの大変さ
路面電車をもっと岡山駅に近づけたい市は、(1)平面乗り入れ、(2)高架乗り入れ、(3)地下乗り入れ、(4)乗り入れずに歩行者デッキ設置、の4案を公表している。
2015年1月21日の検討会では平面で3パターン、高架で3パターン、地下で2パターン、デッキで4パターンの計12パターンを提示した。
一番事業費がかからないのは (1)の平面乗り入れだ。ただし市役所筋を横断するため渋滞を引き起こす可能性があるし、パターンによっては東口広場のバスターミナルの一部を移設しなくてはいけない。そしてJRの改札は2FとB1Fにあるので、JRからの乗り換え客は階段を上り下りする必要がある。
車と路面電車の分離を徹底しつつ、電停を岡山駅に近づけるなら(2)の高架か(3)の地下になる。
(2)の高架は、2FのJR改札口に最接近できる点で理想的だが、最大46.1億円の事業費がかかる。
(3)の地下化案だが、駅前広場直下は地下街が広がっているので大して距離は縮まらない。またJR利用者にとっては乗り場の位置がやや分かりにくい。
(4)のデッキ案では乗り換えにかかる距離は変わらない。せいぜい階段を乗り降りする苦労が軽減されるくらいだ。
ただしメリットもある。2014年12月17日に開業したイオンモール岡山方面にもつなげることになれば、歩行者の回遊性が高まる。
活気づく駅前をさらに盛り上げるためには
イオンモール岡山は、JR岡山駅から徒歩5分のところに2014年12月17日にオープンした。 地下2階地上8階で、延べ床面積25万平方メートル、総賃貸面積9万2000平方メートルもある巨大商業施設だ。食品テナントも入れると専門店数は約400。駐車場は約2500台ある。西日本でも屈指のスケールなのは間違いない(参照:「女子力高すぎ」と話題の岡山イオンモールのトイレがやっぱりすごい)。
JR岡山駅と岡電の岡山駅前が地下街でつながっているように、JRとイオンも地下街と地下通路でつながっている。イオン開業前と比べて通行量は90倍に膨れ上がったという。
イオンモール岡山 地下通路♪ナウ pic.twitter.com/ltCrdYmnNl
— butubutu727 (@butubutu727) 2015, 1月 13
JRと岡電の乗り換えを便利にすることで、イオンだけでなく市中心部にも足を運んでもらいたいという思いがあるのだろう。
地元商工会議所や市民グループは東口広場乗り入れだけでなく、岡電の延伸を度々市に対して要望している。しかしなかなか前に進まないのが実情だ。
岡電は市営ではなくて地元の両備グループ系列だ。設備投資しても回収できる見込みがあるか、シビアにみているのかもしれない。
市が設備を保有して、運転のみ岡電が受け持つというやり方もある。一方で「環状部の道路整備を優先してほしい」という声もある。
駅前広場乗り入れが実現して利用客が大幅アップすれば、路面電車復権の勢いが、岡山だけでなく全国に波及するかもしれない。