北国で続出「ぼったくり雪かき」、勝手に作業して「金払え」
豪雪地帯の住民にとって冬の大問題が「除雪」だ。
雪質と量にもよるがこれがなかなかの重労働。毎年100人前後が除雪事故で亡くなるくらいなので、不慣れな人が1人でやるのは危険だ。足腰の弱った高齢者はもちろんのこと、仕事の忙しい現役世代にとっても頭が痛い。ちなみに、2015年の日本列島はおおむね平年より積雪が深い。
自力で除雪できない世帯を対象に「福祉除雪」を実施している地域もある。しかし行政も予算が潤沢にあるわけではなく、作業員が有償ボランティアだと無理もさせられない。そして担い手は不足気味だ。
対象にならない世帯は自分でやるか、雪かき代行業に頼むことになる。
雪国で増えている!? 除雪サービス契約のトラブル
なんだ、そんな業者がいるなら安心じゃないか――ところが、雪かき困難者にとって心強い味方の代行業者も、そのすべてが良心的とは限らない。この季節、雪国に頻発するのが「ぼったくり雪かき」だ。
商品やサービスに関する相談を受け付ける「国民生活センター」によると、2011年度は144件、2012年度は115件、2013年度は127件だった。2014年度も例年同様、北海道や東北地方、新潟県などから多数の苦情が寄せられている。
同センターはメルマガ「見守り新鮮情報」を発信している。2014年2月分に掲載された除雪トラブル事例を紹介しよう。
【事例1】
雪下ろしを依頼した業者に、「1人2千円で3人で行く」と言われ、6千円ならよいかと思い来てもらった。作業終了後、「3人で3時間かかったので1万8千円」と請求を受けた。時間当たりの金額とは聞いていなかった。(70歳代 男性)
【事例2】
除雪作業を頼んだ業者から、シーズン契約の方がお得だと言われ、1月から3月まで月々2万円で契約し前払いをした。しかし、雪が積もっても除雪に来ないため連絡すると「10センチ以上降らないと除雪しない」と言われたり、作業内容によっては「シーズン契約に入っていない」と追加料金を請求されたりした。契約時にそのような説明はなかった。(60歳代 女性)
【事例1】は一種のぼったくりといってよく、【事例2】は契約内容にまつわるトラブルだ。国民生活センターの担当者によると、相談者はいずれも高齢者だという。
契約内容に関するものとしては、「1シーズン10回で契約したのにまだ作業してくれない」という相談も受けています。またありがちなのは除雪作業に伴って(隣家の)庭などを壊してしまうケースで、「業者が直すと言っていたのに直してくれない」という苦情もありました。
これは東北地方に住む80代の方からの相談ですが、頼みもしないのに「何でも屋」がやってきて、勝手に雪かきをして1500円を請求。やむなくお金を支払ったのに領収書をくれない。代わりに渡されたのは「広告から家の修理まで何でもやります」と書いてあるチラシだったそうです。
除雪を請け負う業者も1年中排雪をしているわけではない。彼らの本業は建築や塗装、リフォームであることが多い。
雪かきは重労働で危険を伴うだけでなく、建物・設備を壊さない慎重さも要求される。大雪時に依頼が殺到するのは当然で、依頼者がやってほしいタイミングと業者が来られる時刻が合わないことは珍しくない。そして作業量はケース・バイ・ケース。相場が分かりにくこともトラブルの温床になっているともいえる。
Jタウンネットが調べた限りでは、狭いコミュニティの田舎に悪徳業者は少ないようだが、地縁が強くない都市部にトラブルが目立つ。
札幌市は、消費者センター消費生活相談室を設けてトラブル解決にあたっている。おやっ?と思ったときは、行政の窓口に相談してみるといいだろう。
相場をウェブサイトで公開する自治体も
北日本ほどの積雪はないものの、鳥取県日野町も冬場は雪が降る。各世帯の屋根の雪下ろしなどについて、町では地元建設業者や建築業者などに協力してもらっている。
料金の目安をウェブサイトで公開しており、屋根の雪下ろしが作業員1人当たり1時間2000円、家周りなどの除雪が作業員1人当たり1500円となっている。
豪雪地帯は雪の量が多いので当然これよりも金額がかさむ。2.5倍程度増えると見た方がいい。
除雪する側も楽じゃない
最後に。各家庭の除雪とはタイプが異なるが、北国の道路除雪の取り組みが10分で理解できる映像を紹介しよう。
北陸地方整備局北陸技術事務所の「北陸の道路除雪」(YouTubeより)
2014年2月、埼玉県秩父地方は記録的大雪に見舞われたが、北陸地方整備局北陸技術事務所が除雪に大活躍した。
雪かきに乗じた業者のぼったくりは論外だが、プロフェッショナルな仕事であることは記憶されてよい(こちらも参照:海外が驚嘆した! 世界一の豪雪都市「青森」の鮮やかすぎる除雪テクニック)。