「作ったところで赤字や!」 地下鉄構想とん挫でどうなる大阪の鉄道網
いっそ「路面電車」?
だが、どうやらこの計画が達成されることはなさそうだ。2014年8月28日、市の審議会が市営地下鉄の路線沿線について議論したところ、今里筋線や長堀鶴見緑地線など残り4路線の延伸・新規開業について「市の人口は将来減少を続けることが予想され、累積赤字を解消するのは難しい。代替の交通手段も検討すべき」との答申がまとまったからだ。
≪審議の対象となった4路線≫
【延伸】
・千日前線の「南巽―弥刀方面」(4.2キロ)
・長堀鶴見緑地線の「大正―鶴町」(5.5キロ)
・今里筋線の「今里―湯里六丁目」(6.7キロ)
【新路線】
・敷津長吉線の「住之江公園―喜連瓜破」(6.9キロ)
大阪の地下鉄は市が都市計画と一緒に進めるという形をとっているため、東京の地下鉄と比べて「市内の交通機関」という色合いが一層強い。昭和30年代まではほとんど御堂筋線だけしか開通しておらず、1970年開催の大阪万博前後に営業を開始した路線が多い。
また堺筋線を除き独特の規格を採用しているため、そのままではJRや大手私鉄と相互の入り入れができない。
さらに終点が他路線と接続していない行き止まりになっているため、乗り換え客を呼び込めていない路線も見られる。
●千日前線
1969年開通の古い路線で繁華街のなんばを通っているにもかかわらず、4両編成で運行されている。地下鉄しか利用しない人には一定のニーズはあるものの、近鉄・阪神と区間が重複しており集客に苦戦している。
延伸区間は導入空間となる道路がないこと、JRおおさか東線が2008年に開業した結果ある程度鉄道空白地帯が解消されたことで、延伸しても黒字化は難しいと見られる。
●長堀鶴見緑地線
リニア式地下鉄の元祖で車体が通常よりも一回り小さい。湾岸部の大正区は、大阪環状線がかすめるように走っているだけで鉄道空白地帯となっている。ただし同区は空き家率が20%以上に達し、出生率も低い。バスの需要は高いけれども、地下鉄建設となると採算面で厳しい面がある。
●今里筋線
今里筋線はJR大阪環状線内を通らない。東京でいえば山手通りを走っているようなものだ。鉄道空白地帯を解消した意義は大きいが、乗客数は伸び悩んでいる。
今里は日本有数のコリアンタウン。西成区と並び高齢化率の高いエリアでもある。
今回の延伸ルートの反対側、北の終点である井高野駅から約2キロ先は、阪急京都線やJR京都線が走っている。こちらを延伸した方が乗客を増やすには手っ取り早い気もするのだが、阪急の反対で接続に至らなかったという話だ。
※2014年9月19日追記:門真南駅→井高野駅に修正しました。
●敷津長吉線
沿線の住吉区・東住吉区・平野区は比較的一戸建てが多い住宅地だ。東西を走る鉄道がなく、地元住民から開設を望む声は多い。開通すれば南海線や近鉄南大阪線の利用者がある程度シフトすると予想されるけれども、6.9キロを新路線で建設するのは――。
審議会は地下鉄ではなく、LRT(次世代型路面電車)の活用を提言している。しかし、敷津長吉線のルートは道路が混雑しており、LRTは現実的ではないという声もある。