宮崎伝統「冷や汁定食」は夏でもそそる涼味! 実は新宿のど真ん中で食える
東京にある都道府県アンテナショップは、有楽町・銀座や日本橋、新橋界隈に集中している。世界一の乗降客数を誇る新宿駅近辺には数えるほどしかない。南口・新宿サザンテラス内にある「新宿みやざき館KONNNE」は同界隈で最大のアンテナショップだ。
軽食コーナーの看板料理は「冷や汁定食」。冷や汁は鎌倉時代の「鎌倉管領家記録」に記述がある伝統的な郷土料理で、全国に同名の料理が伝わるけれども、宮崎の冷や汁は鎌倉管領家記録に一番近い内容と言われる。
宮崎の方言が飛び交うアンテナショップ!?
2014年7月26日、東京地方は最高気温33.6度を記録した。湿度は50%以上でアスファルト上の体感温度はさらに高く感じられる。
14時ころに筆者は新宿を歩いていた。すっきりしたものを食べたくなり、みやざき館で冷や汁定食を販売していることを思い出した。
同館ははじめて訪れた。サザンテラスは新宿でもモダンな雰囲気のスポットで、遠めから見ただと、ここがアンテナショップと気づかない人もいるに違いない。
お昼のピークは過ぎているから空いているだろうと思っていたが、8割方席は埋まっていた。
素朴な田舎料理の味わい
値段は550円。思っていたより安い。入口付近にある自販機でチケットを購入し、カウンターに提出して番号札をもらう。
宮崎弁らしき言葉をしゃべる男女の隣に座る。故郷にいる気分に戻ったのだろうか、彼らのおしゃべりは止まらない。声のボリュームは高くなく、「へぇ、こんな口調でしゃべるのか」とむしろ心地よく感じられるほどだ。
数分ほどで女性従業員が席まで運んでくれた。左に温かいご飯、右に冷えた汁が盛られた碗がそれぞれある。
「ご飯に汁をかけてお食べくださいね~」と従業員は一言いってその場を離れた。
汁は焼き味噌をベースにイリコと煎りゴマなどをすり合わせ、ほぐした木綿豆腐やスライスされたキュウリ、大葉、ミョウガが加わっている。温度は山麓水のようなひんやりとした感じで、氷水のような、刺さる冷たさではない。
はじめて食べる冷や汁定食。豆腐は結構大きく、ほどよく弾力がある。無造作にちぎった感が田舎料理っぽくていい。
「これは...先に食べるのか? それとも一緒に?」と一瞬躊躇したが、えいやっと全部かけることにした。
碗から碗へダイレクトに投入するのはがさつにすぎると感じ、田舎杓子で少しずつ移していく。
ふと、大学時代に所属したサークル合宿の出来事を思い出した。ご飯に味噌汁をぶっかけて食べて、周囲に「ありえない!」と大笑いされたのだ。山奥だからいいやと思ってトライしたものの......あれ以来、ご飯にみそ汁をかけることは自らに禁じていた。
豆腐と汁をそれぞれ単体で少し味わいたかったので、数口分残したが、それ以外はかけ終えて、いざ試食。
ご飯の熱はまだ多少あった。一方で冷やし汁は冷たい。両者は完全に融合しているわけではなく、それがかえって絶妙なバランスになっている。豆腐やキュウリといった具、汁、ご飯それぞれの味が残り、ボリューム以上の味わいを楽しめた気分だ。
味噌は濃い味好みの自分にはピッタリで、山形出身の母の実家で食べた味をほうふつとさせる。調べたら、山形にも冷し汁が存在するそうだ。幼少期、毎年通っていたときに食べたような記憶もうっすら......。こんな感激が蘇ってくるとは――あなどれないぞ、冷や汁定食!
斜め向かいには外国人率の高いスタバの店舗。そんな都会のど真ん中で味わった宮崎の郷土料理は、シンプルながらも田舎風な味が凝縮されている。満腹になる量ではないが、ヘルシーな食事をささっと済ませたい人におすすめできる。
(7月29日追記:店に電話で尋ねたところ、チケットを渡すときに申し出ればご飯の量は調整してもらえるそう)