地方の鉄道・バスは、無闇にIC乗車券対応すべきではない?
市民の要望が多いからといって、行政がなんでもかんでも対応することは、本当に正しいのか――。
そんな問いを発しているのが、千葉市の熊谷俊人市長だ。
モノレールにPASMO導入→年に運営費1億円、企画の自由度も...
千葉市では先日、公立小中学校へのエアコン設置の是非が議論となった(「小学校にエアコンは要らない」という千葉市議会は、本当に時代遅れの精神論者なのか)。
「子どもたちが熱中症になってもいいのか」という推進意見と、「限られた予算の優先順位を考えるべき」という反対意見。結局市議会では否決となったのだが、メディアなどでは推進派の意見が比較的大きく取り上げられる傾向にある。
反対側に立つ熊谷市長が過去の事例として挙げたのが、2009年に千葉モノレールがIC乗車券「PASMO」(およびSuica)を導入した際の経緯だ。
モノレールがPASMO対応する時、私は議員でした。導入費用が10億円、運営費用が0.5億円かかるので、沿線住民ながら「費用対効果がないのでは」と反対したら「利用者の要望が多いので」という理由。
導入後、運営費用が1億円となり、自由に企画切符も作りづらくなり、所管は後悔しています
— 熊谷俊人(千葉市長) (@kumagai_chiba) 2014, 7月 16
利用者は楽になったかもしれないが...
IC乗車券を導入するためには、改札の改修などの「初期費用」はもちろんのこと、システム運用にかかる費用を事業者は負担しなくてはならない。
千葉モノレールでもPASMO・Suica導入により、もちろん多くの利用者は朝晩の通勤・通学が便利になったはず。熊谷市長自身、それは認めている。問題は、導入が年間1億円というコストに見合うかどうかだと市長は述べる。
私も大変楽になりましたが、少なくともPASMOが使えるから乗る、というケースはあまり無いかと。 RT @YoYosakuma9228 Suica対応になってよかったです。以前は切符を買わなくてはいけなくて憂鬱でしたが、今では楽です。モノレールの売り上げは伸びていないのでしょうか?
— 熊谷俊人(千葉市長) (@kumagai_chiba) 2014, 7月 16
もちろん、市長の考え方には異論もある。
私はSuicaが使える様になってから利用回数が増えました。少ないケースに分類されるでしょうけども。 QT @kumagai_chiba: 私も大変楽になりましたが、少なくともPASMOが使えるから乗る、というケースは (cont) http://t.co/8giA4uyPWc
— m3@_(゚。3」∠)_ (@m3_jp) 2014, 7月 16
@kumagai_chiba PASMO使えないと市外から来た人の中には「今時未対応?千葉市って‥」と思う人もいるでしょうから市のイメージ作りに役立ってるのでは。
— ぼんさい (@dareuma_com) 2014, 7月 16
こうした「見えない・見えにくい経済効果」を重視する主張に対しては、熊谷市長はこう返している。
モノ社は第3セクターです。増分費用は最終的に市民負担になりますが、それでも意義ありと市民が評価するのであれば良いかと RT @dareuma_com PASMO使えないと市外から来た人の中には「今時未対応?千葉市って‥」と思う人もいるでしょうから市のイメージ作りに役立ってるのでは
— 熊谷俊人(千葉市長) (@kumagai_chiba) 2014, 7月 16
やはりコストの大きさを主な理由として、首都圏でもSuica・PASMO未導入の事業者は少なくない(湘南モノレールなど)。全国IC乗車券の相互利用が始まった際には、小規模な加盟社は負担増に文字通り悲鳴を上げた。ローカル路線にとってそのコストは「死活問題」ともいえる。
IC乗車券の便利さに慣れた利用者としては、「Suica(PASMO)使えません」の注意書きを見ると、「なんで今どき使えないんだ!」と正直むっとくることもある。しかし時にはその背景にある問題を考えることも大切かもしれない。
要望を出していた利用者もきちんとコストの説明があり、他にどのような投資の選択肢があるか示されれば違う意見だったかもしれません。
利用者や市民の要望は一番大事ですが、それは判断できる情報が正しく示されていることが大前提です。将来の人にも影響の出る決定は安易には選択できません
— 熊谷俊人(千葉市長) (@kumagai_chiba) 2014, 7月 16