公式ゆるキャラに「しゃべれ」は無茶ではありませんか、松井府知事?
大阪府の松井一郎知事がゆるキャラに「しゃべらなあかん」と迫ったところ、思わぬ波紋を呼んでいる。
舞台は大阪府庁本館正庁の間。府立花の文化園マスコットキャラクター「フルル」が、南河内農とみどりのミュージアム大使を務めることになり、2014年2月12日に任命式が行われた。その席上で知事が先の発言をしたという。
式場には大阪府のモッピーや南河内エリアのゆるキャラなど10体が集まったが、彼らに対しても「いっぱいいるが、ふなっしーに勝てない」と苦言を呈した。
お祝いの席で愚痴る!?知事
知事がそのように発言した以上(しゃべることも)検討しなければいけないと県職員は話したそうだが、ツイッターにはフルルを励ますコメントが相次いで投稿されている。
「フルルちゃん可愛そう...」
「「フルル」という名前が府知事に迫られて怯えてる様子を連想させて切ない...」
「フルルちゃんはこんな理不尽なパワハラに負けないでほしいです」
ゆるキャラグランプリ2012で12ポイントしか得票できず、下から3番目の863位だった「フルル」。2013年はワースト3を逆手にとって「ビリキャラ」と自虐キャラでアピール、府のイベントにも積極的に参加した結果、722ポイントを獲得して大幅に順位を上げた。
今回の任命式は、「ビリキャラから卒業できたのはフルルが頑張ったからだよ。おめでとう! 感謝を込めて大使に任命します」という趣旨だったはず。ところが、知事が発した言葉は予想外の「喝」だった。
しゃべったら人気がでるのか
確かに、ふなっしー人気の源泉の1つは、そのユーモラスな「しゃべり」だ。また同じく、尼崎市の「ちっちゃいおっさん」も、しゃべるご当地キャラとして人気を得ている。彼らにならうことで、伸び悩むフルルに「改革」を――という府知事の発想は、それなりに納得できる。
ただ、ふなっしーにしろ、ちっちゃいおっさんにしろ、彼らは自治体の「非公認キャラ」だ。歯に衣着せぬその軽快なトークは、「非公認」という自由な立場だからこそ、ともいえる。
一方、自治体のマスコットは宣伝隊長のようなポジションにあり、慎重に言葉を運ばないといけない立場にある。佐賀・鳥栖市のマスコット「とっとちゃん」が2013年10月ラジオの深夜番組でわいせつ発言してしまい、市長が謝罪する問題になったことは記憶に新しい。そういった騒ぎを予防する意図があるかは不明だが、ほとんどのキャラはしゃべらない。熊本県のくまモンにしても、お付きの県職員が言葉を「通訳する」スタイルだ。
もちろん、しゃべる「公認キャラ」がいないわけではない。たとえば、静岡・浜松市公認のマスコット「出世大名家康くん」だ。ゆるキャラグランプリ2013開催中しゃべるキャラにシフトした。もっとも、家康くんがしゃべる現場に記者も立ち会ったことがあるが、お殿様特有の上品さが感じられた一方で、"はままつ福市長"という肩書きのせいか言葉を選んでいる印象だった。公認キャラが「しゃべり」で打倒ふなっしーを目指すのは、なかなか簡単なことではなさそうだ。
そもそもキャラを作りすぎでは!?
ゆるキャラグランプリ2012で大阪府のキャラクターはワースト3を独占したが、そもそも単一の自治体でつくる数が多すぎるという問題もある。
2013年11月25日、NHKの「ニュースウォッチ9」にふなっしーが出演した際、ゆるキャラブームの現状について、番組は次のように伝えている。
勢いを増す「ゆるキャラブーム」。ところが、各自治体が作りすぎたため、狙いが裏目に出るケースも――大阪府の各部署が次々と独自のゆるキャラを制作し、その数は32。しかし数が多すぎて、どれもぱっとしませんでした。「ちょっと多かったかなと感じています」(取材対応した大阪府広報担当)