大学生のメンタルヘルスを可視化するシステムを開発
学生にも即時に結果をフィードバック
2023年1月10日
国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学
大学生のメンタルヘルスを可視化するシステムを開発 学生にも即時に結果をフィードバック
【本研究のポイント】
・国際標準の心理指標であるCCAPS(シーキャップス)注1) の日本語版を用いて、大学生のメンタルヘルスを可視化するWebシステム「CCAPS-iQAS(シーキャップスアイキャス)」注2) を開発しました。
・CCAPS-iQASに回答した学生には、自身の結果が自動かつ即時にフィードバックされます。同時に学内の相談窓口の連絡先が表示され、基準値より高い(メンタルヘルスに不調が見られる)学生には相談を促すメッセージが表示される機能が搭載されています。
・岐阜大学では定期健康診断の受診学生とカウンセリングを受ける学生に対して本システムを実装しており、複数の他大学でも導入が始まっています。
【研究概要】
岐阜大学保健管理センターの堀田亮准教授は、国際標準の心理指標であるCCAPS日本語版を用いて、大学生のメンタルヘルスを可視化するWeb回答システム「CCAPS-iQAS」を開発しました。
新型コロナウイルス感染症の拡大は未だ終息に至らず、大学生のメンタルヘルスへの影響は大きな社会問題となっています。本システムは、回答した学生に対して自動かつ即時に結果がフィードバックされ、相談窓口の連絡先や結果に応じた相談を促すメッセージも表示される機能を搭載しています(図1)。このような機能は他に類を見ないもので、その研究成果と意義が高く評価され、日本学生相談学会発行の学生相談研究に掲載されました。本システムは岐阜大学をはじめ、複数の大学ですでに実装されています。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202301101951-O5-12a95izR】
図1 「CCAPS-iQAS」の回答結果画面
【研究背景】
コロナ禍が大学生のメンタルヘルスに与えた影響に関しては、これまで国内外で多くの研究結果が公表されてきました。しかしながら、データは研究のために用いられているばかりで、学生個人に対するフィードバックや支援への活用はなされてきませんでした。
そこで、本研究では大学生のメンタルヘルスを可視化するだけではなく、回答した学生個人にも結果を即時にフィードバックすることにより、学生自身の自己理解や、要支援学生の早期発見、早期支援にも活用できるWeb回答システムの開発を試みました。
【研究成果】
高い信頼性、妥当性が実証されている国際標準の心理指標であるCCAPSの日本語版を用いて、大学生のメンタルヘルスを可視化するWebシステム「CCAPS-iQAS」を企業と共同開発しました。また、岐阜大学生約4,000名に対して試験運用を行い、高い安定性と実用性を確認しました。
【今後の展開】
今後、CCAPS-iQASを導入する大学が増えていけば、大学生のメンタルヘルスに関するビッグデータを構築できるようになり、年度ごとの特徴や推移といった実態把握に役立てることができます。また、性差や学年差といった比較検討も可能となり、大学生のメンタルヘルス支援に関するアクションプランの立案への貢献が期待できます。
【論文情報】
雑誌名:学生相談研究 43巻2号, 182-193ページ
論文タイトル:CCAPS ウェブ回答システム(CCAPS-iQAS)の開発
著者:堀田 亮(岐阜大学保健管理センター)
【用語解説】
注1)CCAPS:
Counseling Center Assessment of Psychological Symptomsの略。米国で開発された大学生の心理・精神症状の測定に特化した国際標準の心理指標。米国では750以上の大学で導入されている。日本語版は堀田准教授が研究代表者となり開発した。
注2)CCAPS-iQAS:
CCAPS-internet-based Quick Assessment Systemの略。本システムの詳細はWebサイトもご参照ください。
https://sites.google.com/benkyoenkai.org/ccaps/index?authuser=0
【研究者プロフィール】
堀田 亮(ほりた りょう)
岐阜大学 保健管理センター、医学部附属病院、医学教育開発研究センター、教育推進・学生支援機構
2014年 筑波大学大学院 人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻 3年制博士課程 修了(博士(心理学))
2014年〜2022年 岐阜大学保健管理センター 助教
2022年〜現在に至る 岐阜大学保健管理センター 准教授
<資格>
臨床心理士、公認心理師、大学カウンセラー