テクノプロ・R&D社と大阪大学蛋白質研究所が共同研究契約を締結
~AIを用いた熱安定性予測アルゴリズムの構築によりタンパク質の熱安定性を向上~
2022年8月19日
テクノプロ・ホールディングス株式会社
当社子会社 株式会社テクノプロの社内カンパニーであるテクノプロ・R&D社(以下「テクノプロ・R&D社」)はこの度、創薬バイオインフォマティクス及び計算生物学研究を行なう大阪大学 蛋白質研究所 計算生物学研究室(水口賢司教授)と、AI技術を用いたタンパク質熱安定性予測アルゴリズムの構築に関する共同研究契約を締結いたしました。
共同研究の背景
タンパク質は一般的に熱に弱く、長期保存等の観点から創薬・バイオロジー分野では熱安定なタンパク質が求められています。しかし、タンパク質にどのような改変を加えれば熱安定性が上がるのかを予測するために利用される学習データセットは既報論文に依拠しており、文献ごとに実験方法が異なる点やデータにバイアスが存在する可能性があるなど、正確な予測が困難であるという課題が存在しています。
本共同研究では、AI技術による予測とハイスループットな実験実証系の組み合わせを用いて予測の精度を高め、タンパク質熱安定性向上に役立てることを目指します。
共同研究の内容
今回の共同研究では、条件や方法の揃った実験データセットから予測に用いるデータベースを作成するために、多くのタンパク質実験の手法を熟知し豊富な経験を持つテクノプロ・R&D社のバイオリサーチセンターが、短期間で多数のタンパク質を製造して熱安定性を調査することが可能なハイスループット系を構築します。
大阪大学 蛋白質研究所 計算生物学研究室(水口賢司教授)では、上述のプロセスを経て得られたデータベースを元に予測アルゴリズムを構築し、熱安定性の向上につながる可能性が高い改変の候補を絞り込んだ上で、テクノプロ・R&D社のハイスループット系で作製して評価を行うことにより、熱安定性予測の精度向上を実現します。
今後の展望
この共同研究による予測精度の向上により熱安定性の高いタンパク質製造が可能になることで、タンパク質の安定性が製品の品質保持期間や使用条件範囲に大きな影響を与える診断薬や、タンパク質を固定化したバイオセンサー等の研究開発に大きなメリットが生まれることが見込まれます。また、今回の共同研究で得られた知見を活用し、「工業生産プロセスで用いる酵素の耐熱性の向上を図りたい」「タンパク質が安定な条件を探したい」「pH安定性を変えたい」といった、実際にテクノプロ・R&D社にお寄せいただいているご要望にお応えするサービスの提供も予定しております。
テクノプロ・R&D社は、今後もタンパク質の発現・精製から各種解析まで数多くのデータ・課題探索で培った技術と経験を産業界で活用し、社会的に大きな意義を持つ研究の推進を支援してまいります。
大阪大学 蛋白質研究所 計算生物学研究室について
《主な研究分野:創薬に向けたバイオインフォマティクス研究》
計算生物学研究室では、計算科学的手法を用いて、疾患や生命現象の解明と創薬などへの応用を目指した研究を行なっています。様々な分野で人工知能(AI)への期待が高まる中、コンピュータ解析に適した形に整理されたデータをどれだけ利用できるかが、AI開発の成否に大きな影響を与えるとの認識から、遺伝子、タンパク質を中心とする分子レベルのデータから、疾患、化合物などに至る幅広いデータの統合、データベース開発に力を入れています。また、タンパク質の構造、機能、相互作用などを予測する手法の開発と、具体的なデータ解析への応用も推進しています。
[URL]https://mizuguchilab.org/ja
《主要業績》
■アミノ酸配列のみからのタンパク質立体構造、相互作用や機能の予測法の開発(ホモロジー同定ソフトウェアFUGUE、タンパク質結合部位予測PSIVERなど)
■多種類の生命科学データ統合技術とデータベース開発(創薬支援統合データベースTargetMine、薬物動態解析プラットフォームDruMAPなど)
■上記ツールを用いてインシリコのみで生理活性を持つ化合物の同定に成功(キナーゼ阻害剤、乳癌細胞の増殖抑制分子など)
テクノプロ・R&D社について
テクノプロ・グループは、日本および中国、東南アジア、インド、英国などの拠点に23,944人(国内21,054人、海外2,890人、2022年3月末時点)の技術者・研究者を擁する日本最大規模の技術系人材サービスグループです。機械、電気・電子、情報システム、組込制御、化学、バイオ、医薬、建築、土木など産業界が必要とするすべての技術領域をカバーする専門領域の広さと高度な技術力が評価され、国内外で常時約2,500以上の企業・研究機関・公共団体・大学に対し、技術を軸とした各種サービスをご提供しています。
テクノプロ・グループの中核会社である株式会社テクノプロの中で化学・バイオの研究開発や受託試験に特化して事業を行っているテクノプロ・R&D社は、1,300名超の研究者を正社員として擁し、大手製薬企業や化学企業を中心に大学研究室・官民の研究機関など、常時約500のお客様にサービスを提供しています。研究者派遣、受託サービス、技術コンサルティングなど、お客様の抱える技術的な課題解決に向け個別最適なソリューションをご提案しています。
[URL]https://www.technopro.com/rd/