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新規骨粗しょう症治療薬の候補を発見!

2022.07.01 00:00

-間葉系幹細胞を標的とした新たな治療戦略を確立-

令和4年6月24日
岐阜薬科大学
国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学

新規骨粗しょう症治療薬の候補を発見! -間葉系幹細胞を標的とした新たな治療戦略を確立-

岐阜薬科大学薬理学研究室の山田孝紀博士研究員、深澤和也助教、岐阜薬科大学・岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科の檜井栄一教授らの研究グループは、京都薬品工業株式会社、東京医科歯科大学との共同研究により、CDK8(※1)阻害剤が新しい骨粗しょう症治療薬となる可能性を見出しました。
骨は、生涯にわたって新陳代謝を繰り返すことで、常に新しく作り替えられています。この過程において、破骨細胞は古くなった骨を壊し、骨芽細胞は新しい骨を造ります。しかしながら、このバランスが崩れると、ロコモティブシンドローム(※2)の原因疾患の一つである骨粗しょう症が引き起こされます。特に、加齢や閉経は骨粗しょう症の発症リスクを高めることが知られています。したがって、骨粗しょう症に対する画期的な予防・治療法の確立は、超高齢社会を迎えた本邦における喫緊の課題といえます。
近年、間葉系幹細胞(※3)が破骨細胞の機能を制御することが分かってきました。しかしながら、「間葉系幹細胞がどのようなメカニズムを介して、破骨細胞の骨吸収を制御しているのか?」については、よく分かっていませんでした。本研究では、シングルセルRNA-seq(※4)解析を起点としたデータ駆動型サイエンス(※5)を実践することにより、「間葉系幹細胞のCDK8」を阻害することで、破骨細胞による過剰な骨吸収が抑制できることを世界で初めて明らかにしました。本研究成果は、間葉系幹細胞を標的とした全く新しい骨粗しょう症治療戦略の確立に貢献することが期待されます。
本研究成果は,米国学術雑誌『Stem Cell Reports』に掲載されます。(オンライン版公開日:日本時間 2022年7月1日午前0時)

【本研究のポイント】
・骨粗しょう症に対する画期的な予防・治療法の確立は、超高齢社会を迎えた本邦における大きな課題です。
・間葉系幹細胞において、加齢とともにCDK8の発現が増加することを見出しました。
・間葉系幹細胞のCDK8の働きを抑えると、破骨細胞の機能が低下し、骨量が増加することを発見しました。
・研究グループが独自に開発した新規CDK8阻害剤KY-065を用いることで、骨粗しょう症による骨量の低下を抑制することができました。
・以上の研究成果は、骨粗しょう症をはじめとする様々な骨系統疾患の予防・治療法の確立に貢献することが期待されます。

【研究成果の概要】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202206293138-O5-bwg5k76S】 
「加齢」は骨粗しょう症の発症リスクを高めることが知られています。研究グループはまず、「加齢により、間葉系幹細胞においてどのような因子の発現が変動するのか?」をシングルセルRNA-seq解析により検討しました。その結果、間葉系幹細胞において加齢とともにCDK8の発現が増加することが分かりました (図1)。
図1:シングルセルRNA-seqにより、骨組織における様々な細胞集団を分類した図。①が間葉系幹細胞 (左図)。
間葉系幹細胞では、加齢とともに、CDK8の発現レベルが増加する (右図)。

次に、「間葉系幹細胞のCDK8は骨の恒常性維持に関係しているのか?」を検討することにしました。研究グループは、間葉系幹細胞特異的にCDK8を欠損させたマウス(以下、間葉系幹細胞特異的CDK8欠損マウス)を作製し、その表現型の解析を行いました。その結果、間葉系幹細胞特異的CDK8欠損マウスでは、骨量が増加していることが分かりました (図2)。
さらに、詳細な解析を行ったところ、間葉系幹細胞特異的CDK8欠損マウスでは破骨細胞の数や機能が低下していることが明らかになりました (図3)。すなわち、間葉系幹細胞のCDK8は破骨細胞による骨吸収を調節することで、骨の恒常性維持に重要な役割を果たしていることが考えられました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202206293138-O7-eisz8Ss3】 【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202206293138-O8-5tYmMnVA
次に、「どうして間葉系幹細胞のCDK8の働きを抑えると、破骨細胞の機能が低下するのか?」という疑問を解決することにしました。CDK8欠損間葉系幹細胞について、詳細な解析を行ったところ、STAT1(※6)というタンパク質の機能が低下していることが分かりました。STAT1は、RANKL(※7)という遺伝子の発現を促進することで、破骨細胞の機能を調節していることが知られています。したがって、間葉系幹細胞のCDK8は、STAT1-RANKLシグナル経路を調節することで、破骨細胞の機能を制御していることが考えられました。
最後に、研究グループは、本研究で得られた知見の社会実装を見据え、「CDK8の働きを抑える薬を使って、骨粗しょう症を治療することができるか?」という課題に挑戦しました。以前、研究グループは、CDK8阻害剤KY-065を開発しており、この薬剤が脳腫瘍の治療薬となることを報告しています (Fukasawa et al., Oncogene 2021)。骨粗しょう症モデルマウスにKY-065を投与したところ、骨粗しょう症による破骨細胞の過剰な活性化と骨量の減少が大幅に抑制されることが明らかとなり、CDK8阻害剤が新規骨粗しょう症治療薬となる可能性が示唆されました
(図4)。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202206293138-O9-j0Ve6m8v
図4:椎骨の画像。KY-065の
投与により、骨粗しょう症による骨量の低下が抑制される。

本研究では最初に、シングルセルRNA-seqを用いた網羅的かつ客観的なスクリーニングにより、間葉系幹細胞のCDK8が骨粗しょう症に対する新規創薬標的候補となることを見い出しました。その後、遺伝子改変マウスや培養細胞を効果的に活用することで、創薬標的の蓋然性(確からしさ)を確認しました。最後に、研究グループが独自に開発したCDK8阻害剤KY-065の骨粗しょう症治療薬としての有効性を実証しました。
以上のように、研究グループは、①:データ駆動型サイエンスの実践、②:遺伝子改変マウス・細胞を用いたin vivo/in vitro実験、③:阻害剤を用いた薬理学的検証を行うことで、間葉系幹細胞を標的とした新規骨粗しょう症治療戦略の基盤確立に成功しました (図5)。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202206293138-O11-8qoISx94
図5:本研究成果のまとめ。 CDK8はSTAT1-RANKLシグナル経路を調節することで骨量を制御する。CDK8阻害剤KY-065は、新規骨粗しょう症治療薬の候補である。

【研究成果の意義・今後の展開】
本研究は、間葉系幹細胞のCDK8が有望な骨粗しょう症創薬ターゲットになることを細胞・生体レベルで明らかにした世界初の報告となります。本研究成果は、骨粗しょう症に限らず、破骨細胞活性化異常や、骨組織の恒常性維持の破綻によって引き起こされる様々な運動器疾患や骨系統疾患に対する革新的治療法を提供し、アンメット・メディカル・ニーズ(※8)の解消にも貢献することが期待されます。

【用語解説】
※1 CDK8
CDKと呼ばれるリン酸化酵素の遺伝子グループの一つ。CDK遺伝子の8番目。近年、がん幹細胞やiPS細胞の幹細胞性を制御することが報告されている。

※2 ロコモティブシンドローム
運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態。骨粗しょう症はその原因疾患の一つである。

※3 間葉系幹細胞
骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞などへと分化する能力を持つ幹細胞の一種。

※4 シングルセルRNA-seq
細胞一つ一つの遺伝子発現を調べる手法。細胞の機能的特徴や未知の細胞集団、細胞運命分岐の発見などにつながる画期的な技術。

※5 データ駆動型サイエンス
様々な方法で得られたデータを基に、仮説やバイアスなしで客観的に生命現象を解き明かそうとする手法。

※6 STAT1
STAT1と呼ばれる、転写因子の遺伝子グループの一つ。STAT遺伝子の1番目。増殖や分化、生存などの様々な細胞機能を制御することが知られている。

※7 RANKL
破骨細胞の分化を促進するサイトカインの一つ。骨組織においては、骨芽細胞や間葉系幹細胞などで発現している。

※8 アンメット・メディカル・ニーズ
未だ有効な治療方法が確立されていない疾患に対する医療ニーズ。

【掲載論文】
雑誌名:Stem Cell Reports

論文名:The role of CDK8 in mesenchymal stem cells in controlling osteoclastogenesis and bone homeostasis
(間葉系幹細胞のCDK8は、破骨細胞機能と骨恒常性の調節に重要な役割を果たす)

著者名:Takanori Yamada, Kazuya Fukasawa, Tetsuhiro Horie, Takuya Kadota, Jiajun Lyu, Kazuya Tokumura, Shinsuke Ochiai, Sayuki Iwahashi, Akane Suzuki, Gyujin Park, Rie Ueda, Megumi Yamamoto, Tatsuya Kitao, Hiroaki Shirahase, Hiroki Ochi, Shingo Sato, Takashi Iezaki, and Eiichi Hinoi.
(山田孝紀、深澤和也 (同等筆頭著者)、堀江哲寛、門田卓也、呂佳俊、徳村和也、落合信介、岩橋咲幸、鈴木紅音、朴奎珍、上田理江、山本恵、北尾達哉、白波瀬弘明、越智広樹、佐藤信吾、家崎高志、檜井栄一)

本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業 基盤研究B(特設)「栄養環境センサーを分子基軸とした脊椎側弯症に対する発症・進行予測技術の開発」(研究代表者:檜井栄一)、新学術領域研究(研究領域提案型)「メカノセンサーとしての間葉系幹細胞」(研究代表者:檜井栄一)などの支援を受けて行ったものです。

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