学歴も資格もいらない「家族」という役割
東京・信濃町にある真生会館の理事長を務める森一弘さんは、カトリック司祭(神父)の立場から、キリスト教について学びたい人や宗教に関わらず、人生そのものや生きるということについて考えたいと思う人たちのために、さまざまな講座・講演会を主宰すると同時に、50年以上もの間、相談に訪れる多くの悩める人や苦しむ人に向き合い、その声に耳を傾け続けてきました。
第5回 家族と一緒にいる今だからできること
緊急事態宣言が再発令されてから、家族で過ごす時間がさらに増えました。家族の健康が心配でたまらない人も、「いったいいつまで家族と一緒にいなければならないのか」と憂鬱になる人も、皆、自分の家庭についてこれほど考える時間は今までなかったかもしれません。
もちろん、親子関係も夫婦関係も人それぞれ。「ステイホーム」のつらさも一様ではないはずです。親の暴力にさらされる子どもたち、名ばかりの家族でことばも心も通わせられない人たちにとっては、どんなに立派な家に住んでいても砂浜につくられたもろい家にいるようなもの。そんな家には誰だってステイしたくないでしょう。
本書『「今を生きる」そのために』の1章「家庭、家族の力を取り戻す」では、著者の森さんが、たとえば「夫婦」について、「どちらかが一方的に相手を助ける存在でなく、同じ平坦な場所にいて助け合う存在(ケネグドーエーゼル)」といっています。
家以外に自分の居場所を求めて出かける、家族以外の人と気晴らしをする、そうしたことが難しい状況ですし、そもそも気晴らしや気分転換では解決にならない。それならいっそ、この機会に「家族」について考え直してみてもいいかもしれません。
著者がこれまで接してきた、実にさまざまな家族の姿から、何らかのヒントを見いだしてもらえたらと願います。
今を生きていくために、私たちには何ができるのか?