栃木・松田川ダムの壁に〝巨大な侍〟4人見参 30周年記念「高圧洗浄機アート」にSNS感動「すごい傑作」
アートは巨大、こだわりは細部まで
松田川は利根川水系の一つ、渡良瀬川に合流する一級河川である。ダムアートの舞台・松田川ダムの所在地は、栃木県足利市。1996年に完成した、高さ56メートルの重力式コンクリートダムだ。
Jタウンネットの取材に応じたのは、ケルヒャー ジャパン社、マーケティング コミュニケーション部の担当者だった。
実は、松田川ダムでは2008年、ケルヒャー ジャパン社が「リバースグラフィティプロジェクト」を実施した経験があったという。「リバースグラフィティプロジェクト」とは、高圧洗浄機で壁面の汚れ(パティナ)や苔を除去して絵柄を浮かび上がらせる手法のことだ。
そして今回、当時のプロジェクトを担当したアーティスト、クラウス・ダオヴェン氏が再び起用され、広大なダム壁面をキャンバスに見立て、壮大な「侍」の姿を出現させることになった。今回のダムアートの名称は、「BRING BACK THE SAMURAI Powered byケルヒャー」という。まさに「侍ダムアート」である。
Xユーザーたちの疑問「描かれた武士のモデルは?」を、ケルヒャー ジャパン社担当者に投げかけてみた。
「近年、クラウスは、リバースグラフィティのプロセスを通じて『人はなぜ、人なのか』という問いを追求しています。顔に浮かぶ喜怒哀楽や、誰もが持つ人間らしさの象徴をありのままに捉え、人間という存在の根源を探っているのです」
「クラウスが追求する『人の表情』と響き合う題材を栃木県足利市で探し求め、『節分鎧年越』に出会い、4人の侍を描くこととなりました」
「今回描いた4人の侍は、特定の方をモデルとして描いてはいません。約750年前の侍の姿を、現代の私たちが見ることは叶いませんが、『現存する最古の記録』にその面影の在処を見出し、クラウスがこの4人を描くこととなりました」(ケルヒャー ジャパン社担当者)
「節分鎧年越」とは、約750年前の鎌倉時代中期の故事にちなんだ古式ゆかしい行事。足利義兼の孫・泰氏(源姓足利氏4代目)が、坂東武者500騎を鑁阿寺(ばんなじ)南大門に勢揃いさせたと伝えられている。
明治維新以降一時途絶えたが、大正4年に復活。現代でも節分の夜に、鎧や兜をまとい坂東武者に扮した200人あまりの市民が、ほら貝や陣太鼓を鳴らしながら大通りを行進している。
「節分鎧年越」の写真画像や動画をとおして、祭りに参加する、鎧兜を身にまとった人々の表情が、アーティスト、クラウス・ダオヴェン氏の創造力をかきたてたのかもしれない。
今回のプロジェクトでもっとも苦心した点について、チームリーダーをつとめたニック・ハイデン氏はこう話している。
「今回の作業で最も困難だったのは、巨大な壁面にモチーフの輪郭を描く工程でした」
「2000点以上の測量ポイントを正確に繋ぎ、アーティストが意図した繊細な『顔の表情』を忠実に再現することに細部までこだわり抜いたことです」(ニック・ハイデン氏)
ダムの壁面をキャンバスに、繊細な表情の再現にこだわり抜くとは、なんというサムライたちだろう。ドイツのサムライもなかなかやるもんだな。