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「すごい見たい、このこ」 企画展「いつもそばには猫がいた」で展示中の〝猫石像〟にネットめろめろ

松葉 純一

松葉 純一

2025.06.29 13:00
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宮城県南部に位置する村田町の生涯学習施設「村田町歴史みらい館」で、ユニークな企画展が開催されている。

その名も、「いつもそばには猫がいた-猫神信仰と猫供養-」だ。

そこで展示されている石像の一つが、Xユーザーたちを魅了している。

猫石像(青森県つがる市・高山稲荷神社所蔵)、画像は「ねこ太朗」(@nekotaro1601)さん提供
猫石像(青森県つがる市・高山稲荷神社所蔵)、画像は「ねこ太朗」(@nekotaro1601)さん提供

2025年6月20日、Xユーザーの。「ねこ太朗」(@nekotaro1601)さんが投稿したのは、青森県つがる市・高山稲荷神社所蔵の「猫石像」。

猫の一瞬の表情を捉えたような、俊敏さを感じる立像だ。何か獲物でも見つけたのだろうか。なんとも愛嬌溢れるシルエットに、X上では5800件以上の「いいね」のほか、こんな声が寄せられている。

「かわいい!」
「きゃわいい」
「たしかにねこだ」
「すごい見たい、このこ」

企画展「いつもそばには猫がいた」には、他にもたくさんの猫たちが集まっているようだ。

どんな展示があるのだろう。そして、展示の狙いは? Jタウンネット記者は「村田町歴史みらい館」に取材した。

猫は、優秀なハンター

「いつもそばには猫がいた」ポスター画像(村田町公式サイトより)
「いつもそばには猫がいた」ポスター画像(村田町公式サイトより)

Jタウンネットの取材に答えてくれたのは、石黒伸一朗館長だった。

石黒館長は、猫の民俗を20年ほど前から、調査・研究している。

その成果として、過去に3回の猫企画展を開催。前回(2019年)の企画展から6年が経過し、新たな資料も多数見つかったため、今回の企画展「いつもそばには猫がいた」を開催することになったという。

会場には、猫絵の掛け軸、猫石像、猫碑など、約240点の資料が並ぶ。

『朧月猫草紙』初版本、天保12年
『朧月猫草紙』初版本、天保12年

たとえば、この『朧月猫草紙』は、山東京山作・歌川国芳画の、猫のおこまの波乱万丈の物語。当時(天保年間)の人気作品だったという。

このように、昔から多くの人が猫の絵を描き、石像を彫り、猫のために碑を作ってきた。私たち人間のそばには、いつも猫がいたのだ。

それは、どうしてか。なぜたくさんの資料が存在するのか。

「猫が非常に人になつくからだと思います。それと、鼠をよく獲るハンターとしての性質もあったのではないでしょうか」(石黒伸一朗館長)

石黒館長によると、日本では弥生時代から猫を飼っている。

愛玩動物としてだけではなく、優秀なハンターとしても、人びとのそばにいた。

たとえば、江戸時代後期から明治・大正時代に養蚕が盛んに行われていた際には、鼠に蚕の幼虫や繭がたくさん食べられたのだが、養蚕農家ではその鼠を退治するために、猫を飼っていたそうだ。

鼠除け 猫のお札(画像提供:村田町歴史みらい館・石黒伸一朗館長)
鼠除け 猫のお札
「養蚕守護の神仏は、非常に多くの種類がありますが、その中に猫を神格化した『猫神』もありました。鼠除けと繭の豊作にご利益があります。
蚕室に貼る鼠除けのお札には、猫が多く取り入れました。また、同じ目的の掛け軸にも猫が刷り込まれたり、描かれました。
養蚕関係の神社に、猫が描かれた絵馬の『倍返し』が行われ、多量な猫絵馬が保存されています」(石黒伸一朗館長)

養蚕農家にとって、猫たちは鼠駆除のハンター。飼育されるだけでなく、鼠除けのシンボルとしても、猫の像や絵が重宝されたようだ。

新田猫絵、江戸時代
新田猫絵、江戸時代

この「新田猫絵」も、江戸時代、当時の養蚕農家に鼠除けの掛け軸として大切に扱われたものらしい。

江戸時代から、人と同じように供養されてきた猫

また、「いつもそばには猫がいた」では、神格化された猫に関する資料のほか、「猫供養の石碑・石像」も多く展示されている。

「いつもそばには猫がいた」ポスター画像(村田町公式サイトより)
「いつもそばには猫がいた」ポスター画像(村田町公式サイトより)
「猫が亡くなり、人と同じように供養することも、江戸中頃から行われてきました。猫の絵が彫られた石碑や、石像も各地に立てられました。ペット墓の前身とも言えるでしょう」
「今回の企画展では、神格化された猫に関する資料や、猫供養の石碑・石像をなるべく多く展示し、こういったことが古くは江戸時代から行われ、特に東日本に多くあるということを、多くの方に知っていただきたいと考えました」(石黒伸一朗館長)
仙台城跡から出土の猫人形、江戸時代
仙台城跡から出土の猫人形、江戸時代

村田町町制施行130周年・町村合併70周年記念企画展「いつもそばには猫がいた」は、9月21日までの開催。

開館時間は午前9時から午後5時。観覧料は無料だ。

会期中には「猫学シンポジウム『猫と人との多彩な関わりから』」(8月31日)や、石黒館長によるギャラリートーク(7月19日、8月2日)、石黒館長による講演会「北東北の猫神信仰と猫供養」(7月27日)、「南東北の猫神信仰と猫供養」(8月10日)といった関連イベントも実施予定。

猫好きな人も、それほどでもない人も、のぞいてみてはいかが。

各イベントの詳細は、村田町公式サイトを参照のこと。

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