「交通量の多い場所で、通り過ぎる車を見つめる車いすの男。車道に出ていて危ないので声をかけると...」(東京都・50代女性)
シリーズ読者投稿~自慢になってすみません~ 投稿者:Uさん(東京都・50代女性)
その日、Uさんは車道にはみ出してじっとしている車いすの高齢男性を見かけた。
怪訝に思ったUさんが、男性に声をかけてあげると......。
<Uさんの体験談>
私が図書館に本の返却に行く途中のことです。高齢の車いすの男性が、交通量の多い幹線道路の車道に出て通りすぎる車を見つめていました。
そばには介助者らしき人は見当たりません。誰かを待っているのか、認知症か何かで状況が理解できていないのか。とにかく車道に出ているので危険と判断し、一瞬迷いましたが、声をかけてみました。
「タクシーを待っているのですが...」
「誰かとご一緒ですか? 誰かを待っていらっしゃるのですか?」と言って私が近づくと、思ったよりしっかりとした表情をしていたその人は、少し寂しそうに答えました。
「タクシーを待っているのですが、もう15台くらい通りすぎて......」
声掛けをしてよかったと思いました。余計なお世話だったらどうしようと不安だった反動で、私も嬉しくてちょっとおしゃべりになりました。
「私がお手伝いしますよ」
「うちの母も車いすを利用しています。介助者がいるとタクシー止まってもらいやすいんですよ」
「タクシーはできれば予約すると良いですね」
するとその人は、「いつもは予約するんだけど、今日は雨予報で天気が良くなかったから...」と、また少し悲しそうに言いました。高齢者が悲しそうなのは母を見ている様で辛くて、「何のために共生社会の実現のための法律が来たんでしょうね」と、私も思わず不満を口にしました。
そんなこんなで一緒に待つことⅠ、2分。車いすのマークがついたタクシーが見え、運転手に合図するとスムーズに止まってくれました。
私と縁があって良かった
単独でないとタクシーがすぐ止まってくれることにほっとしたのか、その人は「有難うございます」と私に告げて。開いたドアから素早くタクシーに乗り込みました。
そんな彼の姿に、「割と元気なんだなあ」とか「乗車拒否が続いてプライドが傷ついたら可哀そうに」とか、「もしかしたら彼も現役時代は立派な立場で仕事をされていたのかもしれない」なんてことを思いました。
とにかく、私と縁があって良かったです。車いすをたたんでトランクに積んでもらうと、私はその人に機嫌よく手を振り、「お気をつけて。さようなら」と伝えました。
高齢になりできなくなることが増えてくると、社会から拒絶されたように感じて悲しい気持ちになるんです。もっと我がことのように心配りのできる余裕を持ちたい。
地方の実家の母が要介護状態になってから、お年寄りを見ると手助けしたくなる私。それまでは高齢者の気持ちや体のことなど気にしたこともありませんでした。
介護をしていると見ず知らずの親切な方に数多く出会います。「ああ、日本に生まれた日本人で良かった」と思える社会を微力ながら目指しつつ、私は今日も幸せです。
誰かに聞いてもらいたい「親切自慢」、聞かせて!
Jタウンネットでは読者の皆様の「感謝してもらえて嬉しかったこと」を募集している。
読者投稿フォームもしくはメール(toko@j-town.net)から、具体的な内容(誰にどんな親切をしたのか、どんな反応が返ってきたかなど、500文字程度~)、体験の時期・場所、あなたの住んでいる都道府県、年齢(20代、30代など大まかで結構です)、性別を明記してお送りください。秘密は厳守いたします。
(※本コラムでは、プライバシー配慮などのため、いただいた体験談を編集して掲載しています。あらかじめご了承ください)