「電車ではしゃぐ子供たちを見ているうちに寝落ちした私。『ママー!』と泣き叫ぶ息子の声で飛び起きると...」(沖縄県・30代女性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Tさん(沖縄県・30代女性)
Tさんはその日、年子の子供たちを連れ、3人で家族旅行に出かけた。
電車に乗ったTさんは、子供たちを見守っていたはずが、いつの間にか眠ってしまっていて......。
<Tさんの体験談>
私は年子の乳児を抱え、シングルマザーになりました。
息子3歳・娘2歳の時、今では恒例となった「夏休みの家族旅行」に初めて行くことに。
「ひとり親だから出来ないなんて言いたくない!!人の助けなんてなくたって、1人で子供達を守るんだ」と、意気込んでいたのを覚えています。
我が子の叫び声で目を覚ますと...
機関車に乗ってみたいという夢を持つ息子と、お魚を見るのが大好きな娘なので、当時熊本に住んでいた私は山口まで車で走り、蒸気機関車の「SLやまぐち号」や美しい日本海が見える山陽本線に乗車、島根県のアクアス水族館近くに宿泊というプランを立てました。
当日、日付が変わった頃に寝ている子供達を車にそっと運び、出発。
息子に出会わなければ、知ることもなかった「SLの貴婦人」と呼ばれる蒸気機関車を満喫。終点の津和野駅周辺では美味しいランチをいただき、水筒の補充もさせてもらいました。
1回目の乗り換えもスムーズにいき、後は山陽本線への乗り換えをこなすだけ。
そう思ってはしゃぐ子供達を見ているうちに、いつの間にか眠ってしまっていたようです。
「ママー!!ママー!!」という叫び声が突然聞こえて、私は飛び起きました。
みれば、息子が鼻血を出していました。びっくりして泣き出したようです。
「大丈夫だよー」と慌ててティシュを取り出しながらなだめる私をよそに、息子は大号泣。つられて娘も大泣きしてしまいました。
ホームを眺めることしかできずにいると...
降車駅のアナウンスが入ったのはそんな時でした。大きなスーツケースとベビーカー、娘と息子を抱きかかえて下車。乗り換えの電車はすでに、線路を挟んだホームの向こうに待っています。
乗り換え時間は1分で、次の便は2時間後。小さな駅舎なので階段を上って下りればすぐ乗り換えられるのですが、娘は泣きわめき、息子はパニック。エレベーターもなく、私は娘に服の裾を離さないように握らせ、息子の鼻にティッシュを当てたまま、ただ乗り継ぎのホームを眺めることしかできませんでした。
その時、「あらあら、大丈夫よー」と中年のご婦人が娘を抱き抱えて下さいました。
そして、ご婦人のお連れ合いが無言で私の大きなスーツケースとベビーカーを持ち上げ、階段を上り出したのです。
「いきましょうね」
優しく微笑みかけて下さったご婦人に着いていき、ホームの階段を上がりました。
乗り換えの電車まで娘を抱いて運んで下さったご婦人は、あら、お利口さんねー」と、乗り換えの電車の入り口で娘をそっと、私に返しました。
そしてお連れ合いは私の荷物を乗り換えの電車まで運び入れると、優しく微笑み頷いてくれました。
「ばいばい!と手を振ってくれるご夫婦。きちんとお礼も伝えられないまま、電車の扉はすぐに閉まりました。
人生観を変える旅行に
その後は予定通りに旅行を楽しむことができました。もうすぐ中学生になる子供達ですが、あの旅行の出来事は楽しかった思い出として断片的に覚えていてくれています。
「世の中なんて、敵ばっか」。そう思っていた私の人生観を変える旅行となりました。
お二人とのエピソードは子供達も大好きで、よく旅行の話題で出てきます。
私たちもお二人のような人間になりたいです。あの時は、ほんとうにありがとうございました。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
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