「見知らぬ女性にタクシーに乗せられた幼稚園児の私。知らない裏道を通り、到着した場所は...」(高知県・50代女性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Oさん(高知県・50代女性)
Oさんは幼いころ、土佐電鉄の路面電車に乗って幼稚園に通っていた。
その日は事故のため電車が動かなくなり、一緒にいたはずの父も見当たらず......。

<Oさんの体験談>
今から55年も前、私は市内の九反田にある自宅から土電に乗って幼稚園に通っていました。
ある日のこと、乗って間もなく事故があり、電車が不通となって乗客は全員電車から降ろされることになりました。
知らない人についていってはいけないのに
いつも乗る時は父と一緒でしたので父の姿を探しましたが、父はすでにいませんでした。
電車内に幼稚園の制服を着た幼児がポツンと取り残されていることに、運転手さんが明らかに困った顔をしていたのを覚えています。
幼児に代替策など浮かぶこともなく困惑していたところ、車内にまだいた髪の長いOLの方が申し出てくださいました。
「この子の制服たぶん聖母幼稚園の制服だから、私、そっちの方向なのでついでに連れて行きます」
それを聞いた運転士さんはホッとした顔をしていました。

その人は私をタクシーに乗せ、並んで後部座席に座りました。
「知らない人についていってはいけない、誘拐される」と繰り返し両親に言われていた私は、タクシーが裏道で知らない道を通ることも手伝って、完全に誘拐されてしまうと思い込み、唇を噛みしめていたのを覚えています。
突然幼稚園に着き「ほら。着いたよ。一人で緊張したわね。よく頑張ったね。バイバイ」とおろしてくれました。
「親切な人だったんだ」
「誘拐じゃあなかったんだ。親切な人だったんだ」
私が自分の間違いに気づいてホッとした時にはタクシーは遠くにいっていました。

親切にも見ず知らずの子をタクシーで遠回りして送ってくださったのに、その子は不機嫌そうに唇噛んで感謝の言葉も言わない、そんな失礼をしてしまったことを今でも申し訳なく思っています。
あの時は本当にありがとうございました。
後から聞いたのですが、父は「銀行の金庫を開けなくては」と急ぎ、私のことは忘れていたそうです。
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