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「父の死後、初めて訪れた彼の『行きつけの喫茶店』。生前の様子を聞くと、私が恐れていた通り...」(大阪府・50代女性)

横田 絢

横田 絢

2023.03.23 11:00
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シリーズ読者投稿~忘れられない「あの人」と~ 投稿者:Yさん(大阪府・50代女性)

Yさんの父親には、行きつけの喫茶店があった。

その店に行くことは彼にとって習慣になっていたようで、認知症が進行しても、気づけばその店に向かっていたという。

もしかしたら、迷惑をかけているかもしれない。Yさんはそう考えていたが、確認するのが恐ろしく、父親が亡くなるまで店を訪れることが出来なかった。

認知症の父が...(画像はイメージ)
認知症の父が...(画像はイメージ)

<Yさんの体験談>

9年前、父が82歳で亡くなりました。認知症が進み徘徊がひどくなり、夜中に事故に遭い、そのまま回復しませんでした。

父は若い頃から喫茶店へコーヒーを飲みに行くのが好きで、認知症になる前からよく通っているお店が、和歌山の実家の近くにありました。1人で行ったり友達と行ったりしていたようです。

目を離した隙に出かけ、帰ってくるときには...

認知症になってもそのルーティンが変わることはなく、目を離した隙に出かけていることがありました。帰ってきた時に失禁をしていることもありました。

本人はオムツを嫌がって付けなかったので、もしかしてお店に迷惑をかけているのでは......と思いながらも、気持ちに余裕がなく、少し怖くもあり、お店に直接確かめることができませんでした。

病院で父が亡くなって少し落ち着いた頃、やはりずっと気になっていたのでそのお店に初めて伺いました。

するとマスターが、「ああ、あの方ね」と少し困ったような、でもにこやかな顔で対応してくれました。

父は、何度もお店の椅子を汚していたようでした。

何度も汚してしまっていた(画像はイメージ)
何度も汚してしまっていた(画像はイメージ)

見るとお店の椅子は昔のスナックにあるような赤いビロードのスツールに背もたれが付いたような形。失禁なんかしたら掃除に本当に困りそうなものでした。

何度か粗相をしてしまったので、困った末、途中からはビニールを被せた椅子に誘導してくれたそうです。

私は申し訳なさでいっぱいになりました。マスターは一言も責めるようなことを言わず、笑いながら「昔からずっと来てくれてたんやし」と......。

拒否することも出来たのに

最後まで拒絶せずに父を迎え入れてくれて本当に、本当に、本当にありがとうございました。

調べようと思えばうちの連絡先はわかったはずです。もう来ないでと拒否したり、汚した椅子を弁償するように言ったりすることも出来たでしょう。

本当に感謝しかないです。今でも涙が出ます。

父の行きつけだった喫茶店で(画像は投稿者提供)
父の行きつけだった喫茶店で(画像は投稿者提供)

これを書いている今日は、父の命日です。今、そのお店でコーヒーをいただいています。

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