ココからあなたの
都道府県を選択!
全国
猛者
自販機
家族
グルメ
あの時はありがとう
旅先いい話

「サントリー天然水」はどうして4種類もあるの? アクアソムリエに聞く「それぞれの個性」と「天然水の森の意味」

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2023.03.10 18:30
提供元:サントリー食品インターナショナル

皆さんが、スーパーやコンビニでペットボトルの水を買うとき、何を基準に選んでいるだろうか。

しかし、一見同じように思える水にも、違いがある。お馴染みの「サントリー天然水」にだって、実は4つも種類があるのだ。

「天然水」の下に書かれた地名が違う
「天然水」の下に書かれた地名が違う

主に東日本以東では「南アルプス」、長野や新潟を中心に北陸・東海では「北アルプス」、西日本エリアでは「奥大山」、九州では「阿蘇」のサントリー天然水が販売されているそうだが......。

一体、どう違うのか? その疑問を解消するため、Jタウンネット記者は2023年2月13日、水の専門家・アクアソムリエとして活動している「MASA」さんこと鶴田雅人さんに話を聞いた。

鶴田雅人(アクアソムリエMASA)

鶴田雅人(アクアソムリエMASA)

日本アクアソムリエ協会認定アクアソムリエマイスター/公認講師

日本の水と海外の水に味の違いがあることにふとした疑問を抱いたことをきっかけに、15年ほど前にアクアソムリエの資格を取得。その後、さらに上位の「アクアソムリエマイスター」となる。アクアソムリエの中でも「マイスター」と「公認講師」の資格を併せ持つのは数パーセントのみ。
Twitter(@aquasomme)


4つの「サントリー天然水」

4つの「サントリー天然水」の何が違うかというと、「採水地」である。

南アルプスは山梨県北杜市白州町、北アルプスは長野県大町市、奥大山は鳥取県日野郡江府町、阿蘇は熊本県上益城郡嘉島町で採取された水がボトルに入っている。

編集部作成
編集部作成

なぜ4つも採水地があのかというと、さらなる安定供給実現のため。それぞれの採水地にある工場で作られた「サントリー天然水」は、その時々の消費の変化などに応じて、全国に出荷される。たとえ災害時でも、少しでも早く、少しでも多く全国に水が行き届くようにしようとしているのだ。

今回、Jタウンネット編集部はそんな4つのサントリー天然水を確保することが出来た。

ただ......正直なところ素人である記者が飲んでみても、その違いはほとんどわからない。すべて同じくらい美味しい水である。

記者が飲み比べた感想です。
記者が飲み比べた感想です。

しかし、水の専門家である鶴田さんの舌にかかれば、それぞれに「特徴」を感じられるという。

そもそも水の「味の違い」は何故生まれるのか。その要因は「硬度」の違いだ。水分中に含まれる カルシウムとマグネシウムの量が多いほど硬度が高く、少ないほど低い。

アクアソムリエが水を評価するときは、まず視覚と嗅覚で異常がないことを確かめてから、味わう
アクアソムリエが水を評価するときは、まず視覚と嗅覚で異常がないことを確かめてから、味わう

サントリーの「水大事典」によると、基準は様々だが、硬度100以下が「軟水」、101~300は「中硬水」、それ以上は「硬水」というのがおおよその目安。「サントリー天然水」の硬度は10~80で、いずれも軟水に分類されるが、どのように違うのか。

今回は「南アルプス」→「奥大山」→「阿蘇」→「北アルプス」の順に飲み比べてもらった。

標高3000メートルを超える高峰を多く有する南アルプス国立公園の北部で採水される「南アルプス」は、硬度約30。

「基本的には柔らかい味ですが、同じく南アルプスで採水されている他社製品と比べるとキレが良い感じ。硬度30の柔らかさとまろやかさの中にもシャープなキレ味がある」(鶴田さん)

鳥取・島根・岡山の3県に跨る大山隠岐(だいせんおき)国立公園の中央にそびえる標高1709メートルの山・大山の南部地域で採水された「奥大山」は、「南アルプス」よりやや低い硬度約20。

「個人的にこれが一番好きかもしれません」と鶴田さんは語る。

「柔らかいんですよね、本当に。『南アルプス』は最後にシャープなキレ味があるのに対し、『奥大山』は柔らかい味のままスッと体にしみこんでいく感じです。雪解け水のような柔らかさというか、とげとげしさやエグみが全然ないと思います」(鶴田さん)

熊本県の嘉島町が故郷の「阿蘇」は、4つの中では断トツで硬い硬度約80。昔から何度も噴火を繰り返してきた阿蘇山によって幾重にも重なった独特の地層がフィルターとなり、地面にしみ込んだ雨水などが程よくミネラルを含むからだという。

これだけは、記者にも違いが分かった。というのは「硬度が高めだから飲みにくい」というものでは決してなく、他の天然水と比べると、口当たりがトロッとしているのだ。

「これまでの2種類と比べるとものすごくトロみがあって、それに加えて金属の丸みがあるんですよ。おそらくはカルシウム由来の丸みだと思います。牛乳やチーズといった、カルシウムが豊富なものに共通するようなエッセンスを感じます。いい意味で『カルシウム感』のある味わいですね」(鶴田さん)

2021年5月から生産が始まった「北アルプス」の水源は、長野県大町市。3000メートル級の山々に囲まれたこの場所で採られた水は、硬度約10。4種の中で最も低い。

「味わいとしては、これが一番クリアだと思います。余計な味が無いというか、非常にピュアな味わい。そして、その中に天然水らしい、『南アルプス』以上にシャープで、ピッと切ったようにキレがあるのが特徴だと思います」(鶴田さん)


「良い天然水」の条件とは?

ところで、先ほどから「天然水」という言葉を連発しているが、日本で水が「天然水」と名乗るには条件を満たす必要がある。

「特定水源の地下水を原水とし、沈殿・ろ過・加熱殺菌以外の物理的・科学的処理を行わない」というものだ。つまり、「白州で採ってきたから南アルプスの天然水だ」という単純なものではない。

「天然水というのは、山や森に雨が降って、それが20年以上かけて大地のフィルターでろ過されて湧き出してくるもの。なので、山にちゃんと森がなかったりすると、そもそも水が蓄えられないんです」(鶴田さん)

だから、おいしい「天然水」を飲み続けるためには、採水地周辺の山や森を良い形に保つ必要がある。

鶴田さんによると、EUでは「ナチュラルミネラルウォーター」として水を売るためには、厳しい基準が設けられていて、その中で「採水地周辺で、既定の面積の水源環境を保全すること」などが義務付けられている。しかし、日本にはその義務がない。採水地を保全するかどうかは、メーカーの裁量にゆだねられているのだ。

サントリー天然水は「ナチュラルミネラルウォーター」。鶴田さんは様々な情報が書かれたラベル裏を見ずに水を買うことはないという。
サントリー天然水は「ナチュラルミネラルウォーター」。鶴田さんは様々な情報が書かれたラベル裏を見ずに水を買うことはないという。

その中にあって、サントリーは採水地の保全にかなり力を入れている。

「サントリーは、とにかく『水を大切にする』という思いから出発された会社。『水を守るには森や山を守らなくてはいけない』と、国内でもいち早く採水地の保護保全に取り組まれたのがサントリーさんだと思います」(鶴田さん)

サントリー天然水の公式サイトでは、天然水を作る「森」を守るための様々な取り組みが紹介されている。「サントリー天然水」の採水地を含めた、日本各地にある22か所のサントリー「天然水の森」で、最先端技術を駆使した調査から、現地で行う整備や植栽まで、様々な活動を行っているのだ。

「一見関係ないように思われがちですが、水にとって森や山の存在は本当に大事なものなんです。なので、日本では義務化されていない採水地保護活動にも積極的に力を入れて、森や山の大切さを伝えているサントリーさんの姿勢は、すごくありがたいことだと思っています」(鶴田さん)

鶴田さんは業界への期待として「会社の規模によっては難しいかもしれないが、他のミネラルウォーターのメーカーもどんどんそうした意識を持って活動してくれるようになったら良いと思う」とも語った。

サントリー天然水ブランドサイトを参考に編集部が作成
サントリー天然水ブランドサイトを参考に編集部が作成

人間というのは、何もしなくても汗や尿といった形で、1日におよそ2~2.5リットルの水を体から排出しているという。

食事から摂取できる水分もあるが、それでも2リットルほどの水を飲まないと、体から出る分と入ってくる分の収支が合わない。そこでお茶やコーヒーなどカフェイン入りの飲み物を飲むと利尿作用によって排出量が増えるし、ジュースでは糖分を摂りすぎることも。

「なので、純粋に水で2リットル以上の水分を摂取するのが良いと思います。そして、一気に2リットル以上を飲むのではなく、コップ一杯分(およそ200ミリリットル)を10回に分けるなど、なるべくこまめに飲むようにすると、最も体が水分を吸収しやすいです」(鶴田さん)

その時に飲む水は、どんな水がいいか。どんな水を、あなたは飲みたいと思うか。

鶴田さんのように味の違いは分からないかもしれない。だったら――いや、だからこそ「よりよい環境」で作られた水を手に取ってみるのはどうだろう。

あなたが飲んだ一本が、50年後、100年後の豊かな森と水に繋がるかもしれないのだから。

PAGETOP