「被災地での避難中、トイレを借りに入った民家。水も食料もない空腹の中、『家族のためのおにぎり』がとても美味しそうに見えて...」(福島県・40代女性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Sさん(福島県・40代女性)
Sさんは2011年3月11日、福島県双葉郡で被災した。
親友と2人で自衛隊の指示に従って西へ避難をしている途中、お手洗いに行きたくなった。
運よく一軒の民家でトイレを貸してもらえることになった彼女は、その家のテーブルに置いてあった「おにぎり」に目を奪われたという。
<Sさんの体験談>
2011年3月11日東日本大震災の翌日の出来事です。私は当時、福島県双葉郡大熊町にある企業に勤務しておりました。
地震が発生し避難し、しばらくは一人で車の中にいました。雪も降ってきて恐怖と寂しさと戦っていたとき、親友から連絡があり、合流しました。
二人でどこに行けばいいのか、これからどうなるのかわからずにいた時、自衛隊から「西に逃げろ」との指示が。私たちはそれに従い、避難を続けました。
テーブルの上のおにぎりが、とても美味しそうに見えて...
その途中、私たちはトイレに行きたくなってしまいました。ちょうど、一軒の民家を見つけたので、ご迷惑だろうなと思いながらもお願いしてみると、嫌な顔せず快くトイレを貸してくださいました。
その時、テーブルに置かれたおにぎりが目に入りました。ご家族で食べるものだと思います。
私たちには水も食料もなく、正直空腹で、そのおにぎりがとても美味しそうに見えました。
「おにぎりどうぞ。お腹空いてるでしょ」
お家の方がそう言っておにぎりを差し出してくださったのは、私たちがトイレを済ませ、感謝を伝えて立ち去ろうとしたときです。
当時、地震の影響で、営業しているスーパーやコンビニなどはなかったので、ご家族にとっても貴重な食糧だったはずです。
とても嬉しくて、でも申し訳なくて......涙が出ました。
数年後、再び家を探したが...
震災から数年後、立ち入りが可能になった後、どうしてもお礼を伝えたくて、うろ覚えの記憶を辿りながらお世話になったお家を探したのですが、たどり着くことができませんでした。
もう一度、きちんとお礼を伝えたかったです。
頂いたおにぎりとご家族の優しさは、今でも忘れていません。
ありがとうって、直接伝えたいです。
そのご家族以外にも、震災当時は、本当にたくさんの方に助けて頂きました。
見ず知らずの方、親友のご両親、勤務していた企業の社長や上司・従業員、転勤先で知り合った方......語りつくせません。
今の私が生きているのも、出会った方々のみんなのお陰だと言っても過言ではありません。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
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