熊本市公式YouTubeチャンネルで霊夢と魔理沙が「ゆっくり解説」 どうしてこうなった?市役所に聞く
熊本市の公式YouTubeチャンネルに投稿されている同市の上下水道局の動画が、一部のツイッターユーザーをざわつかせている。
熊本市で使われる水道水の水源地である取水井戸を紹介し、水質検査で何を調べるのかを1分42秒にわたって解説するものだ。
これだけ聞くと、熊本市の上下水道事業について紹介するだけの真面目な動画のようだが......サムネを見て、すでにお気づきになった方もいるだろう。
動画内で喋っているのは、「東方Project」のキャラクターである霧雨魔理沙(きりさめ・まりさ)と博麗霊夢(はくれい・れいむ)。2人は、抑揚の少ない合成音声で話している。
いわゆる「ゆっくり解説」と言われる、二次創作から発展した動画ジャンルだ。熊本市公式チャンネルでは22年6月17日から23年2月3日までに、同様の動画を7本も公開している。
お堅いイメージのある自治体が、ネット上で生まれて広まった文化を駆使している。意外性のある状況に、ツイッター上ではこんな声が寄せられている。
「時代が追いついてる。 すげぇ」
「水道局員さんが動画作ってるの想像するとなんか楽しい」
「すげえな熊本市笑」
職員「『ゆっくり解説』というのは完成されたジャンルだと思います」
「ゆっくり解説」はYouTubeでも多くの動画が投稿されているジャンルだ。しかし、どうして熊本市のチャンネルで採用したのか。2月15日、Jタウンネット記者は同市上下水道局総務部経営企画課で動画の編集に携わる職員に話を聞いた。
職員によると、熊本市上下水道局内には、事業内容を発信するための広報戦略などを考えるグループがある。その会議の中で「今の時代に何かを伝えるならば動画だろう」という話になったが、そこで問題となったのが動画の形式だった。
「外注するには予算もかかりますし、手の込んだものだと継続して作るのが難しい。悩んでいた時に私をはじめ、職員の中に『ゆっくり解説』を知っている人がいました」(総務部経営企画課の職員)
「ゆっくり解説」は自分たちが発信したい内容に合っているし、活用している自治体はほかにない。それにYouTubeをよく見ている20~50代の層に見てもらえるのではないか――そんな思いもあって、「ゆっくり解説」で行くことが決まった。
その後、熊本市上下水道局は「東方Project」を手掛ける「上海アリス幻樂団」やイラストレーターにも許可を取り、制作、公開に至ったという。
だが、ここで一つ疑問がわいた。わざわざ他のキャラクターを使わなくとも、熊本には「くまモン」という存在がいるではないか。ゆっくり解説に、絶対に魔理沙と霊夢を使わなければならないルールもないと思うのだが......。そんな記者の問いかけに、総務部経営企画課の職員は
「『ゆっくり解説』というのは完成されたジャンルだと思います。キャラクターを変えてしまうとコンテンツが崩れてしまいますし、魔理沙と霊夢を変えるつもりは最初からありませんでした」
と答える。職員も普段から「ゆっくり解説」の動画をよく見ていて、魔理沙と霊夢の起用には強いこだわりがあったようだ。
熊本市上下水道局では3人の職員で動画を制作しているため、業務状況にも左右されることはあるそうだが、担当職員は「今後も『ゆっくり解説』動画を投稿していきたい」と話していた。