「大阪で迷子になった女子大生の私。男の人が『僕も行くから』と声をかけてくれたけど、なぜか遠く離れていって...」(長野県・30代女性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:N さん(長野県・30代女性)
大学1年生だったNさんはその日、鹿児島から富山の実家に帰省しようとしていた。
しかしその途中、大阪のバスターミナルで迷子になってしまい......。
<Nさんの体験談>
今から十数年前、大学1年生の夏休みに実家へ帰省したときのことです。
富山県出身で鹿児島県の大学に通っていた私は、鹿児島から大阪まで夜行バス、大阪から特急で富山へ帰る計画を立てていました。
しかし、夜行バスの降り口が駅の改札の目の前なわけがなく......。
「私を怖がらせないために...」
初めて降り立った大阪のバスターミナルで、私は迷子になってしまったのでした。
大きな荷物を抱えたまま途方に暮れていると、スーツ姿の見知らぬ男性が声をかけてきました。
「大阪駅に行きたいの? 僕も行くから、離れてついておいで」
その人は何故か、私から離れていき、かなり先を歩きはじめたのです。
とはいえ決して私を置き去りにはせず、時々振り返り、ついて来ていることを確認している様子でした。
やがて駅までたどり着くと、私は人混みの中でその人を見失いました。
今思えば、あのとき...
当時は若く世間知らずで、「なんであんな遠く離れて歩くんだろう」と疑問だったのですが、年を取ってふと思い出したときに、気付きました。
「あの男性は、若い女性であった私を怖がらせないために、わざと百メートル近く離れて歩いてくれていたんだ」
駅に着いてからも、おそらく私が男性を見失ったというより、男性は私が駅に到着したことを遠くから見届けた後に、そのまま私に声をかけたりすることなく、ご自分の目的地に向かわれたのだと思います。
お名前も連絡先も分からず、お礼をきちんと言えずじまいです。どんなお顔で何歳くらいの方だったかも思い出せません。
ですが、早朝の、真っすぐな地下道のような道のずっと先の方に見えるグレーのスーツの後ろ姿だけは思い出すことができます。
あの時私を助けてくださった方、本当にありがとうございました。
おかげで無事に予定通りの特急に乗って、実家へ帰ることができました。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてくれた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
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