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まるで「塩の街」みたい? 地面を覆う「白いフワフワ」...台風14号が生み出した奇妙な光景

松葉 純一

松葉 純一

2022.09.23 17:00
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2022年9月、大型で非常に強い勢力の台風14号が3連休中の日本列島を縦断し、各地に大きな爪痕を残したのちに三陸沖で消滅した。

台風の通過後、高知市には普段とは異なる景色が現れていたそうだ。

市内の桂浜水族館の公式ツイッターアカウント(@katurahama_aq)が19日に投稿した次のようなツイートが、話題となっている。

建物の前、一面、高知らしい坂本龍馬像、屋外にある東屋のような場所が、白いもので覆われている。

「『塩の街』みたいになってきた」

というつぶやきが添えられたこのツイートには、25000件を超える「いいね」(9月21日現在)が付けられ、大きく拡散。ツイッター上では、こんな声が寄せられている。

「すごい、波の塩、はりまやばしまで、飛んできてんですね」
「波の花、ですね」
「波の花久しぶりに見た。桂浜がこんな感じってことは 地元の東部の方も凄いことになっちゅうろか」
「台風過ぎたら高圧洗浄機で飛ばすしかないですね」
「洗浄大変なのは間違いない」
「塩害、いろいろなところに影響を及ぼしそうで心配ですね」
「塩分だから、洗浄と設備のメンテナンスが大変ですね」

Jタウンネット記者は、話題のツイートを投稿した桂浜水族館に詳しい話を聞いた。

「ここ6年間では今回が初めてです」

桂浜水族館公式アカウント(@katurahama_aq)のツイートより
桂浜水族館公式アカウント(@katurahama_aq)のツイートより

桂浜水族館の公式アカウントは、公式マスコットキャラクターの「おとどちゃん」が、飼育員や生きものこと、水族館の日常などいろいろとツイートしているという。

今回の台風14号は何がすごかったのだろう? ツイッターのDMで「おとどちゃん」に聞いてみた。

「これまでも、台風や豪雨によって物が壊れたり、目の前の海から波が押し寄せてきて浸水したりといった被害はありました。ですが、荒波によって発生した大量の『波の花』に見舞われたのは、ここ6年間では今回が初めてです」(おとどちゃん)

波の花とは、海水が激しくかく拌されることによって発生する泡。海中のプランクトンなどが関係しているという。

石川・能登など日本海側の地域では「冬の風物詩」とされ、観察できる場所が観光スポットになっている場合もあるが、それが街を覆うとなると一大事。

「雨はそれほど降らなかったのですが、風がとても強く、大量の松葉や飛んできたゴミ、波の花によって、建物の外壁やガラス、地面にこびりついた潮や汚れを処理するのに苦労しました」とのことだ。

『塩の街』を知っているか? 

桂浜水族館公式アカウント(@katurahama_aq)のツイートより
桂浜水族館公式アカウント(@katurahama_aq)のツイートより

今回のツイートへの反響に対する感想を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「有川浩さん(現:有川ひろさん)の『塩の街』を知ってる方と知らない方の反応の違いがおもしろいなあと思いました」(おとどちゃん)

つまり、「『塩の街』みたいになってきた」というツイートは、高知出身の作家・有川さんの小説『塩の街』を踏まえたものだったのだ。これに気付いたツイッターユーザーからは次のような感想が届いている。

「有川浩さんの小説かと思いました!」
「塩の街って有川浩さんですよね この風景をみてそこへ繋げる感性というか言葉のセンスに脱帽です 賢いしお洒落だなーって思いました」
「さすがは高知県民、有川浩(ひろ)先生作品で例えるとは!」
「塩の街懐かしい! 塩は恵にも毒にも成り得るものですね 。『図書館戦争』もそうでしたけど、有川浩さんの作品は着眼点が鋭くて、はっとさせられるものが多いと思います」
桂浜水族館公式アカウント(@katurahama_aq)のツイートより
桂浜水族館公式アカウント(@katurahama_aq)のツイートより

有川浩(ひろ)さんは、『図書館戦争』シリーズや『阪急電車』『フリーター、家を買う。』など映像化された作品も複数ある人気作家だ。

『塩の街』は彼女のデビュー作。突如、空から塩の結晶が落下し、人々が塩へと変わる――。そんな怪奇現象のせいで塩に埋め尽くされてしまった世界で生きる人間たちのドラマを描いた物語である。

「とても素敵な小説なので、まだ読んだことがない方は、これをきっかけにぜひ『塩の街』に出合ってほしいと思いました」(おとどちゃん)

「水族館」でありながら、「水族館」という枠にとらわれない

ところで「桂浜水族館公式」のツイートには、今回のような「その日の出来事」を伝えるものが結構ある。

もちろん生き物たちの様子も多いのだが、そこに添えられている呟きには面白おかしいものも。「水族館の公式アカウント」としては大変ユニークなテイストのように感じるが、いつごろから、どんなコンセプトで発信しているのだろう。

記者が質問すると、「『水族館』でありながら、『水族館』という枠にとらわれないことを心がけています」とのこと。

「イベント情報や日常の出来事を発信することはもちろんなのですが、業種や界隈にこだわらず、さまざまな人とコミュニケーションをとり、いい意味で企業らしくない、水族館らしくない、フランクな存在でありたいと思っています。
ありのまま、感じたまま、思ったままのことを、かっこうつけずに発信しています」(おとどちゃん)
桂浜水族館公式アカウント(@katurahama_aq)のツイートより
桂浜水族館公式アカウント(@katurahama_aq)のツイートより

今年で創業91年を迎え、日本で二番目に歴史ある水族館だという同館に「おとどちゃん」というマスコットキャラクターが生まれ、ツイッターの活用を始めたのは、2016年5月。

2014年に職員が一斉退職したこともあり、大きな経営難に陥り、負のイメージが根付いてしまった同館を立て直すため、現館長が「なんか変わるで、桂浜水族館」をモットーに始めた改革の一環だった。

「(2016年当時は)とにかくお金がない。もちろん広報費にも予算がありません。そんな中、持前の負けん気とド根性を活かすため、無料で全国に情報発信ができるSNS(Twitter/Instagram/Facebook)の活用を開始しました。それぞれ担当が異なり、一番人気のTwitterは、おとどちゃんが担当しています」(おとどちゃん)

一見カジュアルな公式アカウントには、真面目な背景があったのだ。

2022年9月21日現在、桂浜水族館の公式ツイッターアカウントのフォロワー数は23万5000以上。日々一般ユーザーとのやり取りを繰り広げ、親しまれている様子がうかがえる。

おとど 桂浜水族館ダイアリー

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