「答え」は武田信玄らしいけど... 夏休みの宿題に山梨県民「炎上間違いなし」→専門家も「これはダメですね」
突然だが、読者の皆さんにある歴史の問題を見ていただきたい。
こちらは2022年8月16日に山梨県民のツイッターユーザー・カンカンのパパ(@naiacin1)さんが投稿した、娘さんの夏休みの宿題の一部。郷土の歴史についての設問だ。
「室町時代の後半は、戦国時代ともよばれ、山梨にも有力な戦国大名が登場しました。それは、誰でしょうか」
この問い対して用意された選択肢は、(1)武田勝頼、(2)武田信虎、(3)武田信玄の3つ。
......さて、みなさんはこの問題を見て、どれが正解だと考えるだろう。多くの人は「(3)武田信玄」を選ぶのではなかろうか。
しかし、カンカンのパパさんは設問自体に疑問を投じる。
「娘の『夏休みの友』(最近知ったけど、これ、山梨独自らしい...)に炎上間違い無しの問題が!」
「正解は3番らしいが... これ、拡散希望! 色々意見を伺いたいです」
何がおかしいの?
まさに戦国時代に生き、名将として有名で、山梨県のみならず日本中で大人気の戦国大名(3)武田信玄を選ぶことの、何がおかしいのか。
Jタウンネット記者が19日、カンカンのパパさんに「炎上間違いなし」と思った理由を聞いてみると......。
「最初に見た時、『この問題でこの選択肢はないな~』って。『作った先生は山梨の歴史を知らないのかな?』と思いました。
おそらく信玄公と答えさせたいとは思いますが、他の2人も同じように有力な大名なので問題として良くないと考えました」
つまり、(3)武田信玄は当然ながら「正解」である。しかし、あの問いならば(1)武田勝頼、(2)武田信虎も「正解」になるべきだ、という考えなのだ。カンカンのパパさんと同じ意見を持つ人はツイッター上にも少なくない。
「これは全員ですね 特に勝頼は信長も認める名将でしたし」
「これはもう好みの問題で、人気投票なんじゃ」
「全部正解やろ」
正直、歴史ファンではなく、埼玉県民で武田氏に特別な思い入れもない筆者にとっては、ピンとこない感覚だ。
それぞれ功績がしっかりある
カンカンのパパさんは記者に、(1)も(2)も(3)も正解だと思う理由を熱弁する。
「信玄公が一番有名ですが、信虎公は甲斐を統一して戦国大名武田氏の基礎を作り、石和から今の県都である甲府へ山梨の中心を移し、その後の山梨の歴史に大きく影響を与えています。
勝頼公は最終的に滅んでしまいましたが、一時は信玄時代を凌ぐ武田氏の最大版図を築いており、それぞれ立派な実績を持っています」
前提として、室町時代とは室町幕府が成立した1336年(あるいは1338年)から足利義昭が織田信長に追放された1573年までと言われる。その後半から戦国時代が始まるが、いつからいつまでを戦国時代とするのかは、様々な説がある。
とはいえ甲斐国主になった年はそれぞれ、(1)武田勝頼が1573年、(2)武田信虎が1507年、(3)武田信玄が1541年で、(1)勝頼が家督を継いだのも足利義昭の追放より数か月前で、いずれも室町時代後期の話だ。
(3)武田信玄の父で、甲斐を統一し、甲府を造った功績を持つ(2)武田信虎には、近年再評価の動きもある。18年にはJR甲府駅北口に信虎公の像が建てられ、21年11月には彼を描いた映画「信虎」が公開された。
(1)武田勝頼は、設楽原(長篠)合戦で織田・徳川連合軍に大敗して勢力が衰え、甲州征伐で滅亡したが印象が強い。しかしその一方で、父である(3)武田信玄でさえ攻略できなかった高天神城を攻略。武田氏の領土を最大にした功績も持っている。そして、JR甲斐大和駅前に像もある。
専門家も「全員正解」
全国的な知名度だけで考えれば、カンカンのパパさんがツイートした問題の正解は(3)武田信玄を選びたくなる。
ただ、選択肢に入っていた他の2人もまた山梨の有力な大名であるということも確かで、全員正解であるという意見も納得できるものだった。
「信虎公、勝頼公の再評価が近年進んでまして、勝頼公は数年前のNHK大河ドラマ『真田丸』で聡明な様子が放送され、見方が変わった人が多いと思います。
信虎公も甲府駅北口に銅像が建ち、昨年も映画が作成されるなど、昔のただ野蛮な人物というイメージからは大分変わってきていると思います。なので、山梨県民では違和感を抱く人が多いと思います」(カンカンのパパさん)
カンカンのパパさんが議題にあげたこの設問には、専門家も首をかしげる。
「武田氏滅亡」(角川学芸出版)、「武田三代」(PHP研究所)などの著者である歴史学者・平山優さんは16日、自身のツイッターアカウント(@HIRAYAMAYUUKAIN)で「これはダメですね」とつぶやき、3人とも正解であると述べたのだ。
武田氏研究の第一人者である平山さんがそういうのなら、この設問は答えようがなさそうだ。