不朽の名作カップ麺、真冬の風物詩「辛辛魚」 14年間オンリーワンであり続ける「激辛×魚介」の合わせ技
マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界
第七十五回 寿がきや食品「麺処井の庄監修 辛辛魚らーめん」
文・写真:オサーン
カップ麺ブロガーのオサーンです。
「ご当地カップ麺」連載の第七十五回目となる今回は、寿がきや食品の「麺処井の庄監修 辛辛魚らーめん」をレビューします。
東京・石神井公園に本店のある人気ラーメン店監修の商品ですが、発売から14年になる激辛カップ麺の大定番としておなじみの商品でもあります。
今年も「辛辛魚」の季節になりました
「麺処 井の庄」は、東京・石神井公園駅前に本店のある人気ラーメン店。
お店の看板メニューは「辛辛魚」で、つけ麺やラーメンの他に、最近はまぜそばでも供されています。
激辛カップ麺の大定番商品としてもおなじみで、カップ麺ファン以外にも広く知られる激辛カップ麺といえば、「辛辛魚」とセブンの「蒙古タンメン中本」が双璧ではないでしょうか。
「辛辛魚」は発売から今年で14年目、「蒙古タンメン中本」は15年目を迎えた歴史のある商品。十数年も経てばラーメン業界には様々な栄枯盛衰がありますが、そんな中でも両商品の人気は衰え知らずです。
毎年1月最終週か2月最初の週あたりに期間限定で発売され、14年の間に毎年少しずつ改良が繰り返されて現在に至ります。
「ボージョレ・ヌーヴォ」の解禁日は毎年11月3週ですが、カップ麺ファンの間では、毎年1月最終週が「辛辛魚」の「解禁日」であり、「今年も『辛辛魚』の季節になりましたねぇ」なんて季節の挨拶になっていたり、もしくは季語扱いされていたりするとかしないとか。
この冬も寒さの本番を迎え、14回目の「辛辛魚」の季節となりました。いかがお過ごしでしょうか。
「辛辛魚」の内容物を確認
カップには麺のみ入っています。
麺に使われている小麦粉のうち5%が全粒粉で、何となく浅黒いのが視認できます。
別添袋は「液体スープ」「後入れ粉末スープ」「かやく入スープの素」の計3袋。
発売初期には「焼のり」が入っていたこともありますが、毎年リニューアルされている中で、もう10年ほどずっとこの3袋の構成です。
3袋のうち「かやく入スープの素」だけ先入れ。粉末と一緒にねぎが入っていて、「かやく入」とは言ってもこれ以外入っていません。
そして粉末は、これが激辛だとはとても思えないピンク色。
でも騙されてはいけません。
激辛と濃厚魚介を両立した大定番スープ
特製のラー油をたっぷり入れた豚骨醤油味のスープに、唐辛子と鰹粉を配合した「特製辛魚粉」を加えて辛味を強化。さらに強い魚介風味も加えています。
辛味や魚粉の主張が強いスープなので、豚骨醤油味がそれほど前に出てくるわけではありませんが、豚骨も醤油もしっかり太く、スープの魅力を支える屋台骨として機能しています。
スープ表面は真っ赤な特製ラー油に覆われており、豚骨醤油スープに辛味とこってり感を加えています。辛さはこのラー油だけでもかなり強く、色味通りの刺激の強さです。
唐辛子と鰹粉が入った「特製辛魚粉」。これが特製ラー油の辛味をさらに強固なものにし、激辛になります。
また、大量の鰹粉が入っており、魚介ラーメンとしても超濃厚。辛味を抜いても十分に成立するレベルで強力です。
14年前にはかなり話題になった激辛ぶりでしたが、激辛商品が多くなった現在だと、さすがにそれほど目新しいものではなくなりました。
それでも、これほど高いレベルで激辛と濃厚魚介を両立しているカップ麺は他に見当たらず、まだまだオンリーワンな存在と言えるでしょう。
「具はネギだけ」の割り切った構成
麺は、中太幅広で縮れのしっかりついた、全粒粉5%配合のノンフライ麺。太い上に縮れと弾力があって、スープに負けない存在感があります。
お店の麺はストレートの太麺で、全粒粉が入っているわけでもないので、カップ麺の麺はお店から離れて独自進化を遂げている形。
14年間の歴史の中では一時期、丸麺形状でちょっと細くなったこともありましたが、今回くらい太くて弾力がある方が、辛くて濃い「辛辛魚」のスープとバランスが取れるのは間違いありません。
具として入っているのはネギのみ。
お店ではチャーシュー、メンマ、焼のりなど具が充実していますが、カップ麺は割り切った構成となっています。
魚粉がたくさん入っているので、他の具にまでコストをかけられないのは致し方ないところでしょう。
ご飯投入不可避です
スープがあまりに美味しいので、毎年ご飯投入が不可避。
スープと麺の組み合わせは当たり前においしいですが、このスープは「ラーメンライス」にするにも最強と言って良いかもしれません。
激辛、魚介に加えて、気づいたら炭水化物だらけになってしまう恐ろしい一杯です。
不朽の名作カップ麺
今年で14年目となった「辛辛魚」のカップ麺。
14年経っても、激辛と濃厚魚介を両立したオンリーワンの存在価値があります。
辛くて魚介を効かせた他社製のカップ麺を筆者は「辛辛魚ジェネリック」と勝手に呼んでいますが、「辛辛魚」に比べたら辛くなかったり、魚介が強くなかったりと、なかなか辛味と魚介の両者を高レベルで両立した商品は出てきません。
激辛商品の場合、どれだけ辛いのかが気になり、辛味の強さこそ商品の魅力のように感じてしまう部分があります。
しかし「辛辛魚」はただ辛いだけではなく、濃厚魚介という付加価値がついていて、それこそが、14年も続く秘訣ではないかと思います。
冬の風物詩である激辛と濃厚魚介の一杯、季節を感じるためにも是非おすすめしたいです。