身に覚えがありすぎる... 数多の日本人が「地元」を感じる「地方のバス路線でよく見かける光景」
「地方のバス路線でよく見かける光景」というタイトルのイラストが、2022年1月26日、ツイッターに投稿され、いま話題になっている。下の図がそれだ。

イラストを見ると、「お店はあるけど歩いている人を見かけない商店街」「バイパスが開通してもあくまでもバスは旧道を走る」などと記されている。地方出身者なら思わず「あるある」とうなずくポイントだろう。イラストには「こういう路線、好き」という呟きが添えられている。同感だ。
「Manabu INOUE」(@kasobus)さんが投稿したツイートには、8万6000件を超える「いいね」が付けられ、いまも拡散している(1月28日現在)。
ツイッターには、各地からこんな声が寄せられている。
「地元か?w」
「西鉄バス大牟田の南関線みたい」
「広島やんけ!」
「福井の場合だと、長距離路線の出庫運用の為だけの車庫があったりします」
日本のあちこちでうなずいている読者も、さぞや多いことだろう。このイラスト、いったいどういった経緯でつくられたのか? Jタウンネット記者は、投稿者の「Manabu INOUE」さんに聞いてみた。
路線バスの縮小に危機感!
地方のバス路線でよく見る光景
— Manabu INOUE (@kasobus) January 26, 2022
終点まで1時間程度
こういう路線、好き pic.twitter.com/jxLcDhmVyS
投稿者「Manabu INOUE」さんによると、地方のバス路線でイラストのような光景をよく見かけると意識しはじめたのは、20数年前、大学生のころだったという。
現地でバス路線の情報を入手するしかなかった当時、サークルの先輩と山陰経由で京都から下関を目指し、いくつもの路線バスを乗り継いで旅をしていたとき「大きな街からバスに乗るとこんなこと多いよね、こんな光景をよく見かけるよね」という話になったそう。
そしてその後、大学院生になった後にも気づきがあった。
「私は地理学を専門に研究しているのですが、地域の構造が景観に反映されており、それがバスの車窓からの光景だと大学院生の頃に強く感じるようになりました」
「今回のツイートは、最近地方のバスに乗車する機会が減ったので、『久しぶりにこんな路線に家族で乗りたいな』と思ったのがきっかけです。また、大学の地理学の授業で『このような光景が広がる背景を地理学の視点で考える』ための導入として使おうと思い作成しました」(「Manabu INOUE」さん)
そして、イラストの地図を作成中に新たに分かったこともあるという。
「作成して気づいたのは、中山間地域で大きな役割を持っていた農協(JA)の店舗が統廃合で消えつつある点です。私は妻の実家で米作を手伝っているので、その状況に歯がゆい思いをしています。また、これまではバス路線が1本でつながっていた路線も峠の手前までに縮小される事例や、自治体が運営するバスや乗合タクシーなどに代替されている事例も増加しています」(「Manabu INOUE」さん)
話題になったイラストのような「地方のバス路線でよく見かける光景」は今、減少傾向にあるというのだ。路線自体がなくなることもあり、Manabu INOUEさんが「全国的な路線バスの縮小に危機感を持っています」と語る。
そんな中でも、話題のツイートには全国の「オススメ路線」情報が寄せられた。
「思った以上にバスに乗るのが好きな方が多くて、とても嬉しく思いました。『こんな路線もあるよ』と全国のおススメ路線を紹介いただけたのはSNSならではです。『小さな集落でも寿司やウナギの店舗があるよね』というコメントに対し、『私の地域ではウナギの店舗は少ないですよ』と地域の特性がやりとりされた点は興味深かったです」
とManabu INOUEさん。また、「投稿されたあるあるな光景に対して、その要因を説明される方も散見され、地理学的な視点を持っておられる方々が多数存在することに嬉しく思います」ともコメントした。
だんだん貴重なものになっていく、かつては「あるある」だった光景。
都会ぐらしにすっかり慣れてしまった読者も、気兼ねなく旅ができるようになったら「地方のバス路線の旅」を楽しんでみるのはいかがだろう。