龍を形づくるのは、108ピース=煩悩の数の畳 お寺に納品された「すごい畳」がすごすぎる
こちらは、あるお寺の一室の様子である。普通の畳とは、なにやら様子が違う。
床の間いっぱいに、パズルのような模様が描かれている。何だろう? よく見ると、どうやら龍のようだ。
いったいこれは......?
2022年1月18日、この写真と共に次のようなつぶやきがツイッターに投稿され、いま話題となっている。
「新潟県の本量寺に龍の畳を納品させていただきました」
投稿者は「Kenze Yamada ~すごい畳~」(@japanese_floor)さん。ツイートには、6万7000件を超える「いいね」が付けられ、こんな絶賛の声が殺到している。
「畳でこんなことができるなんて」
「凄い ダイナミックで素晴らしいです」
「これ畳なんですね。パズルのピースの、ようです」
「畳のデザイン発想、それを形にする畳職人、素晴らしいと言う言葉では足りないぐらい芸術的」
「畳にこんな可能性があったとは!!! めっちゃ良い」
「踏むのがもったいなや」
「もったいなくて、踏んだり座ったりできないです」
「畳の香りを嗅ぎたくなりました」
この「龍の畳」には、いったいどんな狙いがあるのだろう? Jタウンネット記者は、投稿者の「Kenze Yamada ~すごい畳~」さんに取材した。
108パーツ(煩悩)で構成される、龍の顔
ツイッターアカウント「Kenze Yamada ~すごい畳~」は、岐阜県羽島市で山田一畳店を営む山田憲司さんのものだ。「龍の畳」のような、芸術的なデザインの畳......「TatamiArt」に取り組むようになった経緯について、山田さんはこう語った。
「TatamiArt は、2018年頃から始めました。 家業が畳屋だったのですが、畳業界が衰退していたので、家業を継がずに別の業界で働いていました。そんな時、たまたま遊びで変形した畳をつくった時に畳の可能性を感じ、片手間に畳を制作するようになりました。
そのころは畳で利益を上げるような活動ではなかったですが、少しずつ作品のクオリティーが上がってきて、畳製作に専念するようになりました」(山田憲司さん)
TatamiArt制作で苦心しているのは、どんな点なのか?
「『すごい畳』の制作には非常に時間がかかりますし、体への負担が大きいです。8畳間の畳を作るのに、一般的な畳だと1日~2日で制作できますが、『龍の畳』ですと、それに専念して4か月くらいかかります。 首肩腰を痛めやすいので、通院しながら制作しています」(山田憲司さん)
やはり超人的なパワーと作業量が必要なようだ。
では、今回の「龍の畳」の制作意図は? と聞くと、山田さんはこう語った。
「新潟県加茂市のお寺『本量寺』さんから依頼を依頼をいただききました。お寺さんと言うこともあり龍の顔の部分を108パーツ(煩悩)で構成し、その周りのパーツを49枚(四十九日)で構成しました。龍の畳は私の代表作でもありますが、初期に龍の畳を作った理由は、畳に利用されている素材のイグサは水を張った水田で育つので、水田を守る龍をモチーフとしてつくりました」(山田憲司さん)
龍の顔の部分が108パーツ(煩悩)で構成されているとは......凝りに凝った仕掛けと言うしかない。
「すごい畳」作家の「すごい作業ぶり」
山田さんは、2017年に会社員を辞めた後、18年から「すごい畳」の制作開始。20年には恵比寿・弘重ギャラリーにて畳の個展、21年は名古屋・岳見町ギャラリーで合同個展を開催した。今までに30件ほどの実績があり、販売先は旅館、飲食店、寺、個人宅だという。
山田さんの制作風景の動画はYouTubeでも公開されており、「すごい畳」作家の山田さんのすごい作業ぶりが記録されている。