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ひょっとしたら「鬼」に出会えるかも? 鬼退治伝説の残る山に立つ看板が衝撃的だった

松葉 純一

松葉 純一

2021.12.22 18:06
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最近の「鬼滅の刃」ブームで、鬼に関心を持つ人が増えているようだが、鬼に会いたいかと聞かれると......どうだろう?

みなさんはこんな看板を見たら、ワクワクするだろうか。それともヒヤッとするだろうか。

江藤学(@etoogaku)さんのツイートより
江藤学(@etoogaku)さんのツイートより

白い看板に「注意!」と書かれている。

「野生の王国」であると言い切られている。大江山とは、京都府の丹後半島の付け根に位置する連山のことだろうか。案内板には「ひょっとしたら鹿や熊や鬼に出会えるかも?」と記されている。

熊はともかく、鹿に出会えるのは、ちょっと貴重な体験かもしれない。しかし「鬼」って、何?

2021年12月15日、この写真をツイートした江藤学(@etoogaku)さんは

「『出会えたらラッキー!』みたいなノリで言われても...」

とコメント。

写真を見たユーザーからは、「鹿や熊 はわかる。それと一緒に『鬼』と言うのが大江ですな(笑)」「源頼光はいるかなw」といった声が寄せられ、1万6000件を超える「いいね」を集めている(12月22日現在)。 ている。

この看板はいったい何なのか。Jタウンネット記者はまず、投稿者・江藤さんに話を聞いてみた。

鬼伝説の大江山ならではのジョークかも?

投稿者・江藤さんは、Jタウンネット記者の取材にこう答えた。

「撮影日時は、12月上旬です。案内板は京都府福知山市大江町、大江山連峰の『鍋塚』という山へ至る登山道の入り口(駐車場付近)に立てられていたものです。
鍋塚へ登ろうとした時、案内板の地図の横に件の文言が書かれていて、元々こういう洒落っ気のある看板とかが好きなので『鬼伝説のある大江山ならではのジョークで面白いな。センスあるな』と思って撮影しました」(江藤学さん)

江藤さんは、趣味で京都府北部の妖怪伝承を調べていて、「大江山には酒呑童子という鬼の伝説がある関係から何度も足を運んでいます」と語る。

Jタウンネット記者は、この案内板の原文作成者「大江山の赤鬼」(@akaoni1093)さんにも話を聞くことができた。

「大江山の赤鬼」さんは、旧加佐郡大江町(現福知山市)役場に勤めていて、主に観光を担当していたとのこと。約30年前、趣味のハイカーの立場と、行政マンの双方の視点から、登山道にこの看板を立てたのだと証言する。

「ハイカーとしては看板のある位置の場所を地図上で正確に知りたいことと、そこから見える風景の山名地名を知りたいものです。
そして行政マンとしては、豊富な自然豊かな大江山連峰の動植物をハイカーの善意に期待して守ることと、鬼伝説で有名な大江山のPRを兼ねて、あの看板を作製しました」(「大江山の赤鬼」さん)

さらに、「大江町には『日本の鬼の交流博物館』がありますし、マンホールの蓋や街灯にも鬼のデザインが入っています。また千丈ヶ嶽八合目に在る鬼嶽稲荷神社(現在雪に埋まっています)には肝臓の強くなるお札もあります」と付け加える。

前述の投稿者・江藤さんも「大江山の麓にある『日本の鬼の交流博物館』は、日本や世界の鬼資料が展示されている面白いスポットです。かっこいい藁人形がお出迎えしてくれます」と語る。

そこでJタウンネット記者は、「日本の鬼の交流博物館」にも電話で問い合わせてみた。

大江山に残る鬼退治伝説とは?

大江山(As6022014さん撮影、Wikimedia Commonsより)
大江山(As6022014さん撮影、Wikimedia Commonsより

取材に応じた「日本の鬼の交流博物館」の職員は、大江山に残る3つの「鬼退治の伝説」について以下のように説明する。

「もっとも古いものは、日本の国が成立したころの陸耳御笠(くがみみのみかさ)という土蜘蛛が日子坐王(ひこいますのきみ・祟神天皇の弟)に退治された話です。
二つめは聖徳太子の弟にあたる麻呂子親王が、三上ヶ嶽(大江山の古名)で英胡・軽足・土熊などを討った話です。
三つめは、よく知られている酒呑童子の話です。
大江山の周辺には、『鬼の岩屋』『頼光の腰掛け岩』『酒呑童子屋敷跡』『酒呑童子の供養碑」など、こうした伝説をとどめる遺跡がたくさん残っています」(「日本の鬼の交流博物館」担当者)

もっとも有名なのは、やはり酒呑童子伝説だろう。

西暦1000年前後の平安時代、京の都では一握りの摂関貴族たちのみが繁栄し、世は乱れていた。そんな中酒呑童子は、京の都から姫君たちを次々にさらっていたという。

酒呑童子を退治するため、大江山へ差し向けられたのが、源頼光(みなものとのよりみつ)を頭に藤原保昌(ふじわらのやすまさ)、そして四天王と呼ばれた、坂田公時(さかたのきんとき)、渡辺綱(わたなべのつな)、ト部季武(うらべのすえたけ)、碓井貞光(うすいのさだみつ)らだった。

頼光らは山伏姿に変装し、大江山へと向かい、酒呑童子の屋敷にたどり着く。酒呑童子は一行を歓待するが、頼光たちは毒酒を飲ませて、童子たちを討ち果たす。捕らえられていた姫君たちを救出し、意気揚々と都へ帰って行ったのだ――。(参考:日本の鬼交流博物館のウェブサイト)

この大江山の鬼「酒呑童子」の伝説は、読者もご存じだろう。「ひょっとしたら鹿や熊や鬼に出会えるかも?」と案内板にも書かれているからには、ひょっとするかも......と期待(?)する人もいるのだろうか。

ただ、「最近、寒気の影響で、大江山にも積雪があったそうです。鍋塚に向かう登山口への道路も通行できなくなった恐れもあります」と、同館職員。

冬の大江山では、鬼に出会う前に、雪の方が恐いようだ。

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