「店でいちばん安いメニューを、3年間毎日頼み続けた大学生時代。そんな私にある日、店の奥さんが...」(東京都・50代男性)
あなたの「忘れられない味」は何だろう。
幼い頃に食べた家庭料理?それとも常連だった店のメニュー?
それがもし、もう食べられないものだとしたら――いっそう大切な味に感じられるのではないか。
東京都在住のEさん(仮名、50代男性)からJタウンネット編集部に、大学生の頃に通ったラーメン屋にまつわる思い出が届いた。
当時、古いアパートで一人暮らししていた彼は、店でも特に安いラーメンとチャーハンを毎日交互に食べていたという。
そんな生活を続けて3年。いつものようにラーメンを注文すると、彼の食卓にある「変化」が起きた。
ラーメン300円、チャーハン350円
30年以上前、千葉県の大学に通っていた私は、古いアパートで一人暮らししていました。
そのアパートと大学のちょうど中間に、「二番館」という小さなラーメン屋さんがありました。私は毎日、昼食をそのお店で食べていました。
ラーメンが300円、チャーハンが350円。このお店で特に安いメニューです。
くる日もくる日もこれら2つのメニューを代わりばんこに食べ続けて、3年が過ぎたある日。
ガランとしたお店のカウンター席に座り、私はいつものようにラーメンを注文しました。
ご夫婦で営まれていたこのお店の奥さんは、普段と変わらない様子で注文を受けると厨房に入り、ご主人とほんの二言三言、会話を交わしました。そして、この日もいつもと変わらないタイミングで、私の目の前にラーメンのどんぶりが運ばれてきました。
――それは300円のラーメンではなく、山ほどの具がのった広東麺でした。
「出前の注文を取り間違えちゃったから」
奥さんは「ごめんねー、出前の注文を取り間違えちゃったから食べて」、と。
けれどこの日、私が席に着いてから一度も、出前の注文の電話は鳴っていなかったのです。
3年間もラーメンとチャーハンしか食べられない私を心配して下さったのでしょう。ご夫婦への感謝の気持ちは、生涯消えることはありません。
先日、30年ぶりに「二番館」の近くを訪れると、残念ながらそのお店はもうありませんでした。
ご主人、奥さん、あの時はありがとうございました。夢の中で「二番館」のラーメンを食べさせて頂きます。
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