沖縄の博物館に「アベノマスク」展示される 真意はどこに?学芸員に聞いた
2020年4月、新型コロナウイルス感染症対策として、日本の全世帯を対象に2枚の布マスクが配られたことは記憶に新しい。
当時の首相・安倍晋三氏の名前をもじった「アベノマスク」という呼び方も定着したが......あの「アベノマスク」が今、沖縄市立郷土博物館に展示されているとツイッターで話題になっているのをご存じだろうか。
こちらが話題の写真。沖縄・宮古島で天体観測プロジェクトを行う団体「京都大学 OASES project」の公式アカウントが、2021年11月10日に投稿した。
写真を見ると、たしかに「布マスク」と題し、昨年4月から一斉に配布された布マスク2枚が展示されている。キャプションの説明は、こうだ。
「2020年、新型コロナウイルス感染症の対策として日本中に配られたものです。『アベノマスク』と呼ばれました。学芸員の家に配達されたものを、収蔵品として博物館で保管することにしました。
これは、将来的にコロナウイルス感染症のころの沖縄の世相を振り返る展示に使うためです。このようなモノは大量に出回ったため、かえって大事にされずに短期間で姿を消してしまいがちです」
どうやら、コロナ禍の沖縄を振り返る目的で展示されているようだ。しかし、なぜ「アベノマスク」を?
Jタウンネット記者は15日、沖縄市立郷土博物館を取材した。
「10年、20年、50年後の人々に...」
取材に応じた学芸員によると、この布マスクは同館で開催中の「新収蔵品展」(10月22日~12月26日の開催予定)で展示されている。
これは、2020年度に同館が採集したものや寄贈されたものを、来館者に見せることを目的にした企画展だ。
ある学芸員のアイデアで、国民に配布された布マスクをそのまま展示することにしたという。現在は未開封の状態だが、今後は虫食いなどを防ぐために燻蒸(くんじょう。防虫・防カビ等のために薬剤をいぶして蒸すこと)などの処理を行うそうだ。
この「布マスク」には、展示物としてどのような意義があるのか。そう尋ねると、学芸員は次のように答えた。
「2020年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、市民生活にも大きな影響があり、多くの方々がお亡くなりになったり、経済活動や人々の活動も自粛を余儀なくされるなど、悲しい出来事が続いた年でした。
その年に政府をはじめ、国民一人ひとりが感染症対策にどのように努めたのか、どのような対策をとったのかを10年、20年、50年後の人々に紹介する資料の一つとして、当館学芸員に配送されたマスクを収蔵したものです」
同館では、沖縄県内で開催されたイベントの関連グッズや看板など、市民の生活や世相をあらわすような物を収蔵し、展示などに活用しているという。
現在、新型コロナ関連の展示は「布マスク」のみだが、コロナ禍を記憶するものとして文章・写真も含め、多様な資料の収集も進めているとのことだ。