1991年生まれの「フルーツポンチ缶」を開けてみた結果→ダークマター出現 どういう現象?専門家に聞いた
缶詰といえば、肉や魚、シロップ漬けの果物などを年単位で保存できる優れもの。災害などに備えて家に置いてあるという人も多いだろう。
しかし......、いくら長期間の保存ができると言っても、たとえば数十年も放置していたら、さすがに中身は大変なことになってしまうようだ。
こちらは、千葉県北西部でタケノコの収穫・販売を行っている「火中の栗原」(@chestnut100kg)ことクリハラさんが2021年11月2日にツイッターに投稿した写真だ。
白いお皿の上に入れられているのは、何やら炭の塊のような、どす黒い物体。皿の底にも墨汁のような黒い液体が広がっている。
およそ食べ物には見えないが、その正体はながらく開封されずにいたフルーツポンチ缶の中身である。製造された時にはカラフルな果物が入っていたのだろうが、いまや見る影もない。
その姿に、ツイッター上ではこんな声が寄せられている。
「ダークマターだぁあああ!」
「これはもう熟成を通り越してホラーですね」
「まさにクサレポンチですね」
「フルーツのシロップ漬けの缶詰は賞味期限を過ぎると缶が破裂する可能性もあるのに、よく缶自体は無事で......中身は凄いことになってるけどw」
一体、なぜこんなことになったのか。Jタウンネット記者は投稿者と、食品の研究や技術開発などを行っている「日本缶詰びん詰レトルト食品協会」の研究所(神奈川県横浜市)に話を聞いた。
製造年は1991年
クリハラさんは投稿の数日前、友人からフルーツポンチの缶を貰った。記載されていた製造年月日は1991年3月30日、つまり30年以上も前だ。
そして投稿の日――11月2日、中身が無事なら夕食後のデザートにでもしようと、自宅で開封したところ、中から出てきたのは真っ黒な物体と液体だった。
「驚きの一言です。器に移して写真をツイートするくらいには驚きました」(クリハラさん)
クリハラさんはその後、黒くなったフルーツを口に含んでもみた。ほぼ無臭で甘みも全くなく、味と食感は炭に似ていた。ただ、その後は飲み込まずに口をゆすいだそうだ。
ちなみに、友人からはフルーツポンチ缶と一緒に、1989年製のスイートコーン缶、1990年製のみかん缶、1990年製のタケノコ水煮缶も貰ったという。そのうち、みかん缶を開けてみたらやはり同様に黒くなっており、しかもフルーツポンチ缶と比べて少し金属臭さがあったとのこと。
開封した缶詰は中身と缶を冷蔵保存し、未開封の缶詰はそのまま保管しているそうだ。
さすがに放置されすぎた
それにしても、数十年放置したフルーツ缶の中身がここまで黒くなってしまった理由は何なのか。Jタウンネット記者は8日、日本缶詰びん詰レトルト食品協会の研究所にも聞いた。
取材に応じた職員は、モノや保存状況などにもよるとしつつ、原因の一つとして「鉄が溶けだした」ことが考えられると説明する。
「缶詰は通常、ブリキ(鉄でできた容器にスズのメッキをコーティングしたもの)で作られています。
スズには食品の性質を保持する効果がありますし、例えばフルーツポンチやミカンといった酸性の性質がある中身が容器の内側の鉄を溶かしてしまうことも防止します。
しかし、それもあまりに長年放置された場合は、コーティングされていたスズが全部溶け切ってしまい、今度は鉄の部分が溶けだしてしまいます」(担当者)
そうしてスズだけでなく鉄までもが溶けだしてしまった結果、中身が黒く変色してしまった可能性がある、とのことだ。
保存食といえども、いつまでも置いておけるわけではない。ストックしている缶詰があるという人は、一度製造年月日を確認してみた方が良いかもしれない。