バケーション?いいえ、ワーケーションです 山梨のリゾート地で1週間テレワークしてみた
「ワーケーション」という言葉がある。Work(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた造語で、テレワークを活用し、リゾート地などでバカンスを楽しみつつ、仕事を行うことだという。
猛暑にすっかりまいっていた筆者が7月下旬、Jタウンネット編集長に、「ワーケーションを体験したいのですが......」とおそるおそるお伺いを立ててみたところ、「いいですね」と、なんとあっさり了解してもらえた。「ノートPCとWi-Fiルーターは持参します」と、仕事をやる姿勢も一応示したのだが、はたしてどこまで信じてもらえたかは、かなり疑問だったが......。
「ワーケーション体験」という大義名分もできたことだし、一路中央道を進み、山梨県へと向かった。長坂ICを降りると、青空をバックに八ヶ岳が広がって見えた。車の窓を開けると、頬をなでる高原の風がひんやり涼しい。いよいよ八ヶ岳山麓でワーケーションのスタートだ。
Vacant(空っぽ)になるから、リフレッシュできる
筆者は、テレワーク=在宅勤務、と思っていたのだが、どうやら違うらしい。
テレワークとは、「tele=離れた所」と「work=働く」をあわせた造語だという。ICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことを指す。
テレワークには、大きく分けて4種類あり、在宅勤務(自宅でテレワーク)はその一つに過ぎない。他に、移動中や移動の合間に働くモバイルワーク、サテライトオフィスやコワーキングスペースなどの施設を利用するテレワーク、そしてリゾート地で行う「ワーケーション」があるようだ。
滞在先に着いて、テレワークに必要な機器、ノートPCとWi-Fiルーターで、インターネット接続できるかどうかをまず試してみた。ドコモやソフトバンクの電波状況にもまったく問題なかった。仕事上の連絡はスムースに行えるはずだ。
しかも、Jタウンネットは、「あなたの街の情報サイト」である。山梨県に来たのだから、記者としてはこの街の魅力を思う存分体験するほかない。
というわけで早速、北杜市白州町の尾白(おじろ)川渓谷へ遊び(取材)に行くことにした。
尾白川は南アルプス・甲斐駒ヶ岳を源流とする一級河川だ。日本名水百選にも選定されている。尾白川堰堤(えんてい)では、自然の川を利用して水遊びができる。南アルプスから流れてくる清水は、相当に冷たい。川遊びをしていると、体が冷えてくるほどだった。この時、下界は35度を超える猛暑だったらしいが......。
大自然の中に飛び込んで無心に遊ぶ。Vacation(休暇)とは、Vacant(空っぽ)になることことらしい。いったん空になるから、リフレッシュできる。それが「ワーケーション」のメリットの一つだろう。リフレッシュすることで、新鮮なアイデアも湧き出てくるかもしれない(なお筆者の場合はこの時、仕事のことはすっかり忘れてしまい、文字通りVacantになっていたのだった......)。
「取材」続きの1週間
山梨県北杜市周辺は、大自然の中で遊ぶ施設には事欠かない。
筆者は約1週間の「ワーケーション体験」で、毎日のように北杜市の様々なスポットに遊び(取材)に出かけた。
八ヶ岳南麓の「まきば公園」は、県立八ヶ岳牧場の一部を解放してつくられた公園だ。さまざまな種類の羊たちがのんびり草をはんでいる様子がなんとも和める。あの有名な清里からもさほど離れていない場所にあるのだが、清里ほど混んではいない。
また「南八ヶ岳 花の森公園」では、夏野菜の収穫体験が楽しめる。トウモロコシ、きゅうり、なす、トマト、ジャガイモなどを、自分の手で収穫できるのだ。道の駅南きよさとからリフトカー「こいのぼり号」に乗って約3分半で到着する。展望台から望む八ヶ岳は壮大そのものだった。
車で1時間ほど移動すれば、遊びに行ける選択肢が多いというのが、八ヶ岳南麓の魅力かもしれない。
前述した白州町の他にも、小淵沢町まで足を伸ばせば、楽しい場所はまだまだたくさんある。もちろん本格的なアウトドア派は、八ヶ岳や甲斐駒ヶ岳への登山に挑戦することもできる。それぞれのライフスタイルに合わせて、好みのものを選べばいいのだ。
もちろん、北杜市のグルメも取材
リゾート地滞在で忘れてはならないのが、やはり「食」だ。
前述の野菜収穫体験でゲットしたトウモロコシ、なすなどの野菜と共に、地元の店で買いこんだ肉をバーベキューしながら、飲んだエビスビールは最高に旨かった。
「ヴィラ・アフガン」のショルダーベーコンエッグカレーはもちろん、「月舎」の生粉打ち天せいろも相変わらず絶品だった。
ランチタイムに訪れてみたうなぎ店「森のやまびこ」の、わさびを付けて味わう、あっさり目の関西風うなぎ料理には、新鮮な感動があった。
岐阜県中津川から移住してきたという女将のメニューらしい。テイクアウトもできるというので、次回はぜひ夕食用に利用してみたいと思った。
日常では味わえないご当地料理を満喫できる点も、「ワーケーション」のメリットの一つとして挙げて良いだろう。在宅勤務では味わえない食の楽しみは、モチベーションUPにつながるはずだ(......そう信じたい)。
「ワーケーション」から「フレックスプレイス」へ?
ところで、Vacation(休暇)の方はいいから、Work(仕事)はどうだったの? と、読者からツッコミが入るかもしれない。
「ワーケーション」である以上、編集部とのメール連絡は必須だ。まず朝食前後にノートPCに向かい、日々の連絡業務を行った。通常の在宅勤務と同じで、場所が山梨県のリゾート地だからといってとくに変わったことはない。仮にビデオ会議があったとしても問題はなかっただろう。
携帯電話がつながる環境で、Wi-Fiルーターさえあれば、「ワーケーション」に支障はない。それが体験できただけでも大きな成果ではないだろうか。
「ワーケーション」どころか、いずれは「フレックスプレイス」(働く場所を自由に選べる多拠点型テレワーク)も可能かもしれない......と、すっかり夢が広がっている自分がいる。これも「ワーケーション」のメリットか?
仕事もやりますからという大義名分を掲げたおかげで、心理的に、長期間の旅行に行きやすかったかもしれない。これは明らかに「ワーケーション」のメリットの一つだろう。
宿泊先を移動せず、その土地をゆっくり楽しむことができた点も良かったと思う。山梨県への移動は車だったが、週末の混み合う時間帯を避けられたおかげで、小仏トンネルの渋滞にもあわなかった。スケジュールにゆとりがあると、予想以上のストレス軽減になることを実感した。
今回のワーケーション体験では、普段と比べると仕事の方はさほど成果はなかった。しかし、「ワーケーション」に習熟することによって、仕事の成果はもっと出るに違いない。次回は、また別の場所で、その土地の魅力を味わいながら「ワーケーション」を......、と筆者は目論んでいるのだが、いかがだろう? 編集長。