「うちんち」が関東方言ってマジ? 全国調査の結果→静岡の特異性が明らかに
「私の家」のことを「うちんち」と言うか?
そんな素朴な疑問をきっかけに、Jタウンネット編集部で巻き起こった「うちんち」議論。
「うちんち」は関東の方言だって聞いたけど、本当か?兵庫では「うっとこ」と言う人もいた。静岡では「うちっち」と言うらしい――。
さまざまな意見が錯綜したため、実際に読者の皆さんに聞いてみることに。
2021年5月16日~6月16日の期間、「『自分の家』のこと、なんて呼ぶ?」をテーマにアンケート調査を行った。
選択肢は、編集部内ででた「うちんち」「うちっち」「うっとこ」と、「その他」の4つ。「その他」については、具体的になんと呼んでいるか、投稿を募った。
投票総数は、1187票。はたして結果は――。
静岡の存在感
まずは、全国の結果を見てみよう。
最も多いのは「うちんち」で、42.0%(498票)。
「うっとこ」が17.9%(213票)、「うちっち」が8.7%(103票)、そして「その他」は31.4%という結果に。
「うちっち」や「うっとこ」は少数派だが、地域ごとの特徴に目を向けると、なかなかおもしろい側面が見えてきた。
4つの選択肢のうち、各都道府県で最も多かった「呼び方」ごとに色分けした地図が、こちら。
茨城は「うちんち」と「その他」が50.0%ずつ、大分は「うちんち」、「うっとこ」、「その他」が33.3%ずつで拮抗している。
全国で半数近くが使っている「うちんち」。
47都道府県中21地域で最も多くの票を集めた。
「日本方言大辞典(小学館、ジャパンナレッジ版)」では、神奈川県藤沢市で使われている言葉だとされているが、地図を見ると、特に関東・中部・中国地方を中心に東西にわたって広く使われている様子が窺える。
そして、ちょうど地図の真ん中あたりでひときわ存在感を放つのが、静岡だ。47都道府県のうち、「うちっち」という呼び方が多数派なのは静岡のみだった。
ご覧のとおり、なんと静岡では88.3%の人が「うちっち」を使うという結果に。
「うちんち」は9.0%、その他は2.7%で、「うっとこ」に投票した人はいなかった。
ちなみに、静岡県以外で「うちっち」に投票があったのは、山梨、長野、新潟、秋田から、1票ずつのみ。
ほぼ静岡でしか使われていない呼び方と考えてよさそうだ。
また、「うっとこ」が多数派の地域は近畿地方(三重県は近畿地方として集計)に集中している滋賀(56.3%)、京都(63.0%)、大阪(64.0%)、兵庫(55.4%)、奈良(53.3%)、和歌山(68.8%)の2府4県で「うっとこ」が多数派だ(かっこ内は「うっとこ」派の割合)。
近畿地方にしぼって見てみると、「うっとこ」が58.2%、「うちんち」が25.7%、その他が16.1%だった。「うちっち」への投票はなし。
ツイッターでも、
「『うっとこ』が関西外から来た人に受けた。なんや知らんけど「音」として面白いらしい」
「母が使う関西弁で『うっとこ』ってのがある」
「うっとこ関西なんで風強い」
などの投稿があり、主に関西圏の人が使っている様子だ。
やっぱり関西弁なのだろうか? 再び「日本方言大辞典」を参照すると、「私の家」という意味で「うっとこ」という表現が使われるのは、滋賀県彦根、京都市、大阪市、兵庫県加古郡。また関西だけでなく、香川県、愛媛県の一部でも使われていると書かれている。
また、兵庫県神戸市では、小さい子どもが使う 「児童語」として使われているという記述も。
たしかに、今回の調査結果とほとんど一致している。
「その他」には「うちんく」や「うちげ」など
地方ごとの結果をグラフにすると、以下の形になった。
これを見ると、東北と四国で「その他」が過半数を占めている。東北の61.8%、四国では70.7%がその他に投票したのだ。
では、「その他」には、どんな呼び方があるのだろうか。
Jタウンネットには、以下のような投稿が寄せられた。
「『うちんく』と言います。 友人と遊ぶときに『うちんく来る?』というように使います」(徳島県)
「『うちげ』です。 ひとの家は、『○○さんげ』」(鳥取県西部海側地域)
「石見地方と出雲地方では言い方が異なると思いますが、石見では、自分の家のことを『うちね』、他人の家のことを『そちね』と言っていました。友達の家に遊びに行くときに、『そちね、行っていい?』と、いう使い方をしていました」(島根県)
あなたの地元はどんな結果だっただろうか。
相手の出身地を知りたいときは、さりげなく「自分の家」について会話をしてみるとわかるかも?
6月18日10時35分編集部追記:記事初出時、地図に誤りがありましたので訂正しました。