「南三陸ではニホンカモシカも階段を利用します」 人里に馴染みすぎてる「天然記念物」にビックリ
国の特別天然記念物に指定されているニホンカモシカ。
日本の固有種で、名前にはシカが付くが、ウシの仲間だ。
場所によっては「絶滅の恐れがある個体群」に指定されるほど希少な動物だが、一部地域では非常になじみ深い存在のようで......。
Jタウンネット記者は、そんなニホンカモシカが人里に馴染んでいるこんな写真を発見した。
これは、南三陸産の農産物や海産物、それらを活用した加工食品等を製造販売している「南三陸直売所 みなさん館」(宮城県・南三陸町)内にある「みなみさんりく発掘ミュージアム」の公式ツイッターが2021年5月18日、
「南三陸ではニホンカモシカも階段を利用します」
というコメントを添えて投稿した写真だ。
ちょうどのぼり終えたところなのだろうか。階段の上から、ニホンカモシカがこちらを振り返っている。
これが南三陸では日常風景なのだろうか......?
気になったJタウンネット記者は19日、このつぶやきを投稿したツイッター担当者を取材し、話を聞いた。
「一日何度も利用しているようです」
ニホンカモシカは、上質な肉と皮を目当てとした密猟等の影響で一時は絶滅の危機に瀕していた。
保護活動が積極的に行われた結果、現在は中国地方を除いた本州、四国、九州の山地や丘陵地帯に広く分布している。
環境省レッドリスト2020では九州地方や四国地方、紀伊山地、鈴鹿産地では「絶滅の恐れのある地域個体群」に指定されているものの、それ以外では数が増加している地域もあり、山間部だけではなく民家周辺に出没することも増えてきている。
比較的おとなしい性格で、こちらから近づかなければ人に危害を加えることはないといわれているニホンカモシカ。
「みなみさんりく発掘ミュージアム」が投稿した写真は、同施設近くの防潮堤で、18日の昼頃に撮影された。
取材に応じたツイッター担当者は
「普段から南三陸の豊かな自然を発信しているのですが、階段を利用するカモシカは凄く身近に感じると思い投稿しました」
と投稿の経緯を明かす。
ここでニホンカモシカを見かけるようになったのは、21年春ごろからだそう。
「最近は毎日見かけます。一日に何度も階段を利用しているようです」
とのこと。この状況について担当者は
「地元民は未だ防潮堤に戸惑いがありますが、カモシカはお構い無しなので滑稽に思えました。
ほぼ決まった時間に階段にいるのは微笑ましいですね!」
南三陸町全体でも、2日に1度はどこかでニホンカモシカを見かけるそうで、担当者は
「震災後は山林を開発して道が作られたので、見る機会が多くなったのかと思います」
とも語った。人間よりカモシカの方が、この階段をよく利用しているらしい。地元の人にとっては馴染みのある存在なのだろう。
仮想博物館として町が運営するウェブサイト「南三陸町 VIRTUAL MUSEUM」でもニホンカモシカの項目にも、こんな解説が掲載されていた。
「国の特別天然記念物に指定されていますが、ここ15年ほどで急激に数が増え、南三陸地域ではもっとも見かける機会の多い野生動物になりました」
もっとも見かける機会の多い野生動物が、特別天然記念物とは......。野生のニホンカモシカを見たことがない記者には驚きの状況だ。
どうかこれからも、うまく共存してほしい。