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「一斗缶アイス、430缶余ってます」...その量およそ4万3000人前 弘 前の名物アイス店が悲鳴→店主に話を聞いた

松葉 純一

松葉 純一

2021.05.13 06:00
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青森県の弘前といえば、落ち着いた城下町の佇まいで知られ、旅人に人気が高い。

満開の桜を見ながら、弘前公園を歩いた経験を持つ読者も多いのではないか。

春から夏にかけて、弘前の町を散策すると、屋根つきの青いリヤカーを見かけた人もいるかもしれない。昔懐かしいアイスを売り歩く行商で、「カランカランアイス」と呼ばれている。

2021年5月10日、次のようなツイートが投稿され、話題となっている。

カランカランアイスの製造元である「藤田アイス店」の公式アカウント(@fujitaaisuten)の投稿だ。

投稿者の母親の「だって今年さくらまつりあるって言ったからぁあああ!!!」という悲鳴のような......つぶやきと共に、「一斗缶アイスが430缶余ってるそうです」というコメントも添えられている。

このツイートには、3万3000件を超える「いいね」が付けられ、いまも拡散中だ(5月12日夕現在)。

ツイッターにはこんな声が寄せられている。

「弘前城で食べたアイスか。 美味しかったのよね~」
「合浦公園(青森市)ではチリンチリンアイスでした。チリンチリンアイスが一斗缶で食べられるなんて憧れです」
「一斗缶アイスっていうパワーワード笑」
「一斗缶で食べてみたい!一缶買う!」
「しかし一人で食べたら凍死するよね?」

冒頭のツイートには、「母ちゃん張り切り過ぎました」と書かれているが、いったいどうしたのだろう? Jタウンネット記者は、藤田アイス店に電話で取材した。

桜祭りに、冷たい雨が降った、桜の花もなかった

藤田アイス店の公式アカウント(@fujitaaisuten)より
藤田アイス店の公式アカウント(@fujitaaisuten)より

5月11日、Jタウンネット記者の取材に応じたのは、「金正(カネショウ)藤田正紀商店」(旧藤田アイス店)代表の藤本レイ子さんだった。

「あのツイートを投稿したのは、東京に住んでいる娘です。私が困っているのを見るに見かねて、冷凍庫に積んである大量のアイスの写真を送れと言ってくれました。
スマホで撮って送ると、すぐにツイートしてくれたわけです。娘はときどきツイッターを手伝ってくれるので、本当に助かっています」(藤本レイ子さん)

それにしても、なぜ430缶も余ることになったのだろう?

「弘前名物となっている桜祭りのために準備したのです。昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、中止になってしまいました。今年は、4月23日から開催されるということで、張り切っていたのですが......、いろいろありました。
まず桜が例年より早咲きになってしまって、急遽、4月17日から祭りがスタートとなりました。20日頃には満開になって、天候が悪くなったせいか、すぐに散り始めたのです。寒さが戻ってしまい、冷たい風も吹いたせいで、アイスはまったく売れませんでした。
おまけに新型コロナ感染防止のため、弘前公園内の食べ歩きは禁止となっていたので、アイスを売るリヤカーも出せませんでした。
冷たい雨は降る、桜の花はない、リヤカーも出せない、などといった悪条件が重なったため、予想の10分の1も売れなかったのですよ」(藤本レイ子さん)

藤本さんの残念な思いが、電話を通してビシビシ伝わってきた。

藤田アイス店の公式アカウント(@fujitaaisuten)より
藤田アイス店の公式アカウント(@fujitaaisuten)より

「金正(カネショウ)藤田正紀商店」(旧藤田アイス店)は、藤本さんの実家で、冷凍冷蔵施設を所有する父親が保管業を営んでいたという。母親が副業的に始めたのが、「藤田アイス店」だった。

アイスの売り子さん達から、冷凍庫施設へ「アイスを保管させてもらえないか」と頼まれ、 やがて、売り場となっていた弘前公園に近い場所だったことから、アイスの製造もお願いされたことがきっかけとなり、アイス店として創業したという。

「カランカランアイス」とは、移動式のリヤカー屋台で、売り子さんが「カランカラン」と鐘を鳴らしながら売り歩いたことから名付けられた。

弘前ならではのりんご味の他、バナナ味、いちご味など、さまざまな種類がある。乳製品というより、シャーベットなど氷菓に近い。屋台で買うと、売り子さんが複数の種類のアイスをコーンに盛り付けてくれる。

「屋台の売り子さんは、だいたい年配の女性が多く、高齢化しています。60代、70代、なかには80代の方もいらっしゃいます。
ずいぶん昔のことですけど、屋台の売り子をやられて、家を建てた方もいらっしゃると、母に聞いたことがありますよ」(藤本レイ子さん)

「カランカランアイス」で家を建てた! かっこいいおばあちゃんがいたものだ。

藤田アイス店のYouTube動画より
藤田アイス店のYouTube動画より

ところで、今後の見通しを聞いた。

「夏の『ねぷた』の頃までに、ある程度売れないと、大変な赤字になります。昨年は『ねぷた』も中止でしたからね、今年はどうなるのでしょうか?」(藤本レイ子さん)

売れ残った430缶のアイスを抱え、藤本さんの不安は大きい。

ところが、ツイッターにはこんな声が殺到している。

「個人で買えますか?」
「一缶、購入したいのですがどうしたらいいですか?!」
「普通に欲しいでござる」
「小分けしてくれたら絶対買います!!」

「アイスを買いたい」という人が、殺到しているのだ。そのためか、同店の公式ウェブサイトは一時繋がりにくい状態に。

11日19時ごろ、同店のツイッターアカウントも

「まさか一斗缶を購入してけらぁ!!!という個人の方がこんなに多いとは」

と驚きの顔文字とともに投稿。「ただただ恐縮です」と呟いている。

同店では公式ウェブサイトや電話・ファックスでアイスの通販を行っており、一斗缶だけでなく、小分けのカップアイスや袋入りの商品も販売中だ。

また、同店はYouTubeでアイスの盛り付け方を紹介する動画も公開している。アイスをコーンに盛り付けているのは、藤本代表自身の手だという。「売り子さんに比べると下手なので、恥ずかしい(笑)」と、恐縮しきりだったが......。

この動画を見ながら「カランカランアイス」を自宅で楽しむおうち時間も、良いかもしれない。

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