「もうこの街から出られない」 ネットでネタにされがちな「町田」の人気が急上昇している理由
「東京なの?神奈川なの?」と、たびたびネット上で話題となる東京都町田市。
東京都から神奈川県に突き出すような形をしているため、このようなネタにされがちだが、裏を返せばそれだけ愛されているということ。「ネット上で最も親しまれている街」といっても過言ではない。
そんな町田市への注目度が、近頃さらに上昇しているという。
不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」を運営するLIFULL(東京都千代田区)は、サイトに掲載された物件に対する問合せ数から算出した「LIFULL HOME'S コロナ禍での借りて住みたい街(駅)ランキング」(調査期間:2020年4月1日~8月18日)を9月に発表した。
首都圏版で、町田市は10位にランクイン。新型コロナウイルス流行前に発表された前回ランキングより、12位も順位を上げる結果となった。
町田市に住むとしたら、どんな生活が待っているのだろうか――。そんな想像をせずにはいられない。
しかし、実は一度も町田市に行ったことがない筆者。思い返せばネタにするばかりで、真剣に向き合ったことはなかったかもしれない。ごめん、町田...。
これを機に、町田市のことをもっと知りたい。そう思った筆者はさっそく現地に向かい、その魅力を探ることにした。
「人と人をつなぐ」コワーキングスペースを発見
町田駅は新宿・渋谷から小田急線で約30分。 JR横浜線を使えば、横浜からも約30分で行ける。神奈川と間違えられるくらいなので、都心から遠いイメージを持つ人もいるかもしれないが、意外と交通アクセスは良い。
筆者がまず向かったのは、町田駅から約200メートル歩いたところにある原町田大通りだ。飲食店がずらりと並び、食欲をそそる。
その通りに面する商業ビル・アエタ町田の4階にあるのは、コワーキングスペース・シェアオフィスの「BUSO AGORA(武相アゴラ)」。なんでも、テレワークがはかどるステキ空間が用意されているそうだが...。
...降りる階を間違えたかな??と思うほど、おしゃれなカフェのようなスペースが目の前に現れた。思わずエレベーターの中に戻りそうになる筆者。
だがよく見ると、普通のカフェとは少し雰囲気が違う。パソコンに向かって仕事をする人や、スーツに身を包んだ男性たちが何やら話し込んでいる。時代の最先端を行く企業のオフィス...そんな感じだ。
BUSO AGORAは、非会員は3時間1000円(以下、すべて税込)から、フリースペースや会議室(別料金)が利用可能。会員は1か月7500円から、上記に加えて固定ブースや個室オフィスが利用できる。
フロア内はWi-Fi完備で、10種類以上のドリンクが楽しめるフリードリンクも充実している。飲食物の持ち込みも可能だ。
そしてBUSO AGORA最大の特徴は、「人と人がつながれる場所」であるということ。広報を担当する中田千尋さんは、その理由を次のように話している。
「BUSO AGORAはコワーキングスペースであるだけでなく、起業支援・事業支援を通して、人と人をつなぐお手伝いをしています。 例えば、フロアには事業相談にのる専門家が常駐しており、いつでもお気軽に相談できます。また、私たちコミュニティマネージャーが利用者同士を仲介し、適した人材を紹介することもあります」
中田さんによれば、利用者同士の交流も活発。フリードリンクのコーナーで利用者同士が名刺交換し、一緒に仕事を始めるケースもあるという。
さらに、「BUSO AGORAは利用者と一緒に空間を作り上げていくスタンスで運営されています」と話す中田さん。ここで知り合った利用者同士が協力し、フリースペースの本棚にデザイン本のコーナーを作ったこともあるそうだ。
町田市にはこのほかにも、「BIZcomfort町田」、「machinowa COMMUNE BASE マチノワ」など、多くのコワーキングスペースがある。家だと集中できない!という時は、こういった施設を利用するのもいいだろう。
おしゃれな空間でコーヒー片手に仕事する自分、かっこいい...。そんな妄想を繰り広げたところで、次の目的地へ。
行き先は、筆者がどうしても行きたくてたまらなかった場所「リス園」だ。
リスでかい。でも癒される...
町田駅から約20分バスに乗ったところで、リス園に到着。市内はバスが多く走っており、買い物などのおでかけの移動もしやすい。
リス園は、「町田薬師池公園四季彩の杜」という東京ドーム3個分の面積を保有する公園の敷地内にある。その他にも、薬師池、ダリア園、ぼたん園、ふるさと農具館、そして20年4月にオープンした西園など、複数のエリアに分かれている。
リス園では、タイワンリス、シマリス、ニホンリス、アカリスのほか、ウサギやモルモット、プレーリードッグなどの小動物を飼育している。見ているだけでも十分癒されるが、彼らにはエサをあげることも可能だ。
なんて平和な世界...。ポカポカ陽気と小動物のダブルコンボに、仕事を忘れかける筆者。時折、目に飛び込んでくる独特な絵柄の看板も味があって良い。
しかし本番はここから。園の目玉である、タイワンリス約200匹が放し飼いされているリス放し飼い広場に、いよいよ足を踏み入れる。
「野生なんですよね、彼らは。そこに人間が入っていくという感じです。ここで30年くらい育てているので、他の動物園の方に『もうタイワンリスじゃなくて町田リスなんじゃないか』と言われたこともあります」
園のタイワンリスたちについてこう話すのは、園長の樋口健治さんだ。
周りを見渡せば、エリア内を縦横無尽に駆け回るリス、木に寝そべって日向ぼっこをするリス、差し出されたエサにがっつくリス...。たしかに皆、思うがままに生きている。
「お客さんはリスたちにエサをあげたりして楽しんでますね」と話す樋口園長。動物たちと直に触れあえるのもリス園の醍醐味だ。
だが、筆者がリスにあげるエサを買おうとした瞬間、優しい園長から険しい声が飛んだ。
「絶対にミトンと手袋をつけてください!彼らエサ袋を狙ってきますから!!気をつけて!!!」
そう、このリスたちはエサ(ヒマワリの種)が大好き。自身がケガをしないようにミトンと手袋の装着は必須だ。
見渡すと3、4歳くらいの小さな子どもも、リスにエサをあげている。樋口園長は「来園者は家族連れが多いですが、最近はカップルも訪れますね」と話しており、大人も子どももリスに魅了されているようだ。
リスよ、癒しをありがとう...。後ろ髪をひかれつつ、今度は薬師池周辺を散歩することに。ここは四季折々の自然が美しく、春は桜が見ごろになっていることだろう。
筆者が訪れたときは梅が咲いており、カメラを構える人や写生に励む人の姿が見られた。
時間はちょうどお昼時。ここで、夫婦で公園に来たという男性に話しかけてみた。
「町田に住んで6年目になります。ここに来たのは2、3年ぶりで2回目。家からコーヒーとおかしを持ってきて野外喫茶店の気分です」(83歳男性)
公園は広く、コロナ禍でも他の利用者と十分な距離がとれる。一周するだけで軽い運動になるうえ、開放的な気分を味わいたいという人にはうってつけの場所だ。
おだんごなどの甘味や軽食を楽しめる「やくし茶屋」も人気だという。
また、ベンチで息子さんと昼食をとっていた男性は、
「町田に住んで3年目です。僕が仕事休みなので、3歳の息子とリス園に行ってきました。今、住んでいるところは幼稚園が近いし、大きめの公園が多いのでありがたいですね」(37歳男性)
と話した。町田市には芹ヶ谷公園、野津田公園もあるので、子どもがのびのびと遊ぶ場所には困らないだろう。
ちょっと小腹が空いてきたタイミングで、西園にあるカフェ・レストラン「44 APARTMENT薬師池店」を発見。
ここの名物は「薬師バーガー」と「薬師ソフトクリーム」。筆者はミルクとブルーベリーをミックスした「薬師ミックスソフトクリーム」(480円)を注文した。
一口食べると、まるで口の中が牧場になったかのよう。ミルクの甘さとブルーベリーの酸味が、半日歩き回った疲れを癒してくれる。地場産のミルクとブルーベリーを堪能できる町田らしい1品だ。
このほか、西園にある直売所では町田産の農作物や卵、町田市名産品などを販売。ライブラリー・ラウンジでは休憩がてら本を読める。ラボ・体験工房にはキッチンが付いており、事前予約をしておけばスペースを貸し切ってパーティーなどに利用できる。
一休みしたところで、最後の目的地へ。町田駅に戻り、電車を乗り継いで向かった先は「南町田グランベリーパーク」だ。
アウトレットなのにカヤック体験!?
まず訪れたのは、南町田グランベリーパーク内にあるアウトレット複合施設「グランベリーパーク」だ。
ここでは買い物だけでなく、「遊び・体験」ができる場所があるのが特徴。大人も子どもも楽しめる要素がたくさん詰まっている。
そのうちの一つ、アウトドアブランド「モンベル」では、なんとクライミングとカヤックが体験できる。
クライミングのヘルメットやハーネス、カヤックのライフジャケットなど必要な装備はレンタル可能。クライミング体験は小学生以上、カヤック体験は3才以上が対象で、どちらも参加者は小学生が多いそうだ。
続いて訪れたのは、大きな窓と木のぬくもりを感じる内装が特徴の「まちライブラリー」だ。
ここの本棚や家具は、鶴間公園の伐採材で作られているという。
外の景色を眺めながらの読書は最高だ。まちライブラリーは「みんなの居場所」を目指しているという。
「ここでは、子どもは走ってはいけない、静かにしなきゃいけない、飲食してはいけない...というNGがありません。中高生、ファミリー、お年寄りなど、いろいろな世代の人が来ます」(まちライブラリー・スタッフ)
そして本を開くと、中にはこんなカードが。
これは「みんなの感想カード」。他の人がこの本を読んでどう感じたか、自分の感想と比べてみるのも面白いだろう。
まちライブラリーの建物の下には南町田子どもクラブ「つみき」があり、子育て世代も気軽に訪れることができる。「つみき」には、遊戯室や乳幼児室など、子どもたちがのびのびと遊べる施設がそろっている。
そして、スヌーピーファンの聖地ともいえる「SNOOPY MUSEUM TOKYO(スヌーピーミュージアム)」と「PEANUTS Cafe(ピーナッツ カフェ)」があるのも、南町田グランベリーパークの大きな特徴だ。
幼い頃からスヌーピーのぬいぐるみと共に暮らしてきた筆者。スヌーピーだらけのミュージアムの外壁をみただけで、ときめいてしまった。
ピーナッツカフェには、お馴染みの犬小屋風の装飾が。壁面には初期から現在に至るまでのスヌーピーが描かれている。
ここでテイクアウトの「ピーナッツ・ギャング ピクニックボックス」(2376円)を買って、パークゾーンの鶴間公園へ。セットのレジャーシートを広げてワッフルをつまむ。気づけば、もう夕暮れだ。
今日1日過ごしてみて、町田の快適さを思い知った筆者。ここなら遊ぶ場所には困らないし、都心の会社に通うことも、快適な空間でテレワークすることもできる。いっそのこと住んでしまうのもいいかもしれない。
気になった人は、まずは休日に訪れてみてはいかがだろうか。
<企画編集・Jタウンネット>