空に広がる黒い煙←この光景をみた鹿児島市民が、真っ先にとる行動とは
空一面に、黒い煙が広がる。こう聞いて、読者は何を想像するだろうか?
何かが、爆発した? どこからかミサイルでも飛んできた? なんだかヤバいことが起きたかも......、そう覚悟する人もいるかもしれない。
だが鹿児島市民は、冷静に次の一手を考える。いつものことだから......。
2021年2月28日に投稿された次のようなツイートが話題となっている。
鹿児島市民はこの光景を見て、また桜島が噴火したみたいだな(いつものことだが......)と判断する。
風向きは、鹿児島市に向かっているかな。火山灰が降ってくるまで、あと5分か。やれることは、何だろう?
この写真から読み取れるのは、そういった状況なのだ。それらを冷静に分析し、判断の上、行動しなければならない。
空に広がる煙を見て、その5分後を予測し、すばやく行動できるのは、鹿児島市民か、在住経験がある人に限られるだろう。
ツイッターにはこんな声が寄せられている。
「ああ...風向き確認」
「こうなったのを見た瞬間、親は洗濯物を室内に戻すために走り、子供は窓を閉めて家に篭もる」
「目がめっちゃ痛くなって、服がめっちゃ汚れるやつ」
「これに雨が追加されたら笑うしかない」
桜島の火山灰とは、いったいどんなものなのだろう?
Jタウンネット記者は、投稿主の古好(@retro_kokou)さんと、鹿児島市役所の桜島火山対策係に、話を聞いてみた。
最優先は「洗濯物の取り込み」
投稿主の古好さんによると、この写真は2月28日の午前10時ころ、鹿児島市中心部から磯街道を仙巌園方面に車を走らせていた時、急に空が暗くなったのに気が付いて、あわてて停車し、持っていたスマホで撮影したものだという。
「桜島が噴火するのは通常のことですが、煙が鹿児島市方面に向かうのは、この時期珍しいことだな、と思いました。鹿児島市に灰が降ることが多いのは、夏の時期なのですが......」(古好さん)
桜島の煙が灰を降らせる場所は、風向きによって、ずいぶん違うらしい。
Jタウンネット記者は、鹿児島市役所の危機管理課桜島火山対策係にも電話で聞いてみた。
「桜島は一年をとおして噴火していますが、冬場は偏西風の影響を受け、空に上がった噴煙は西から東に流れて行く傾向があり、大隅半島側に灰を降らせることが多いのです。
逆に、夏場になると風向きが東から西へと変わり、鹿児島市内に灰を降らせることが多いと言えます。
2月28日午前の噴煙は、この時期珍しく、風が鹿児島市内に向かっていたようですね」
桜島火山対策係の担当者は極めて冷静に答えてくれた。別にどうってことない、「通常運転」という雰囲気だった。
毎日のように噴火しているので、ときどき風向きが変わることもあるのだろう。
ともかく鹿児島市民が桜島から噴煙が上がるのを見たら、まず風向きを確認することが、最優先のようだ。
風向きを確認して、噴煙はこちらに向かっていると知った鹿児島市民は、次にどうするのだろう。
投稿主の古好さんは、灰が降ってくるときの様子をこう語った。
「5分どころか、2〜3分のうちに、窓ガラスに音を立てるように、灰が降ってくることもあるので、洗濯物の取り込みは最優先ですね。全部、洗い直しになってしまいますから。布団なんか干していたら、やっかいなことですよ」
着ている服も、白いシャツ、ブラウスには、細かい黒いシミが付くという。逆に黒っぽい上着には、白っぽい灰がびっしり付着するそうだ。
舞い上がった灰が目に入ると痛いので、コンタクトレンズを外して、眼鏡をかけるという人もいるらしい。気管支が弱い人はマスクをつけるというが、コロナ禍の現在、マスクの用意は万全だろう。
車を運転中の場合は、降灰が霧のようになり、視界が遮られることもあるという。昼間でもライトが必要なことも......。 火山灰がフロントガラスに付着すると、ワイパーの作動速度によっては、ガラスに傷がつく場合があるそうだ。
わずか5分足らずで、洗濯物を取り込み、服を着替え、コンタクトレンズを眼鏡に替え、車のライトを点け、ワイパーを調節する......、こんなことを、パニクらずに、テキパキと行動できる鹿児島市民は、やはりすごい。
桜島の噴火を見ると、
「お、元気にやってるな」
と感じるのだと、古好さんは笑いながら語った。
しばらく噴火がないと、かえって心配になってくるのだという。そのうちドカンと、大きい噴火が来るのではないかと......。
鹿児島市民にとって、桜島の噴火は「日常茶飯事」。その後の迅速な行動も「通常運転」で、そんな日々の方が、実は安心するようだ。