福井県は「ねこパラダイス」だった? 猫寺に猫島...猫派必見の「にゃんこスポット」3選
福井県といえば、恐竜を思い浮かべる――。そんな人も多いのではないだろうか。
全国的に有名な「福井県立恐竜博物館」があるだけではなく、近年では福井駅前に恐竜がいたり、恐竜をモチーフにしたグルメやホテルがあったり、「ジュラシック・パーク」化が進んでいるらしい。
このように恐竜推しの福井県だが、実は猫好きにはたまらない「ねこパラダイス」でもあるという、そんな噂を耳にした。

なんでも、全国的に有名な「猫寺」や、可愛すぎる「ねこクレープ」。そして田んぼの中に佇む「猫島」など、数々のにゃんこスポットがあるというのだ。
まさか福井県がそんな夢のような場所だとは、知らなかった......。
かわいいものに目がない筆者は早速、福井県へと向かった。
境内ににゃんこがいっぱい!な「猫寺」へ
2020年の冬のはじめ、福井初上陸となった横浜市出身の筆者は、道に残る数日前の雪にちょっと胸を躍らせながら、まずは「猫寺」こと「曹洞宗 萬象山 御誕生寺(ごたんじょうじ)」(越前市)へと向かった。
JR北陸本線の「武生駅」から福井鉄道バスに乗ることおよそ20分。バス停「大手」で降りると、辺りは一面の雪景色。いかにも北陸の冬、といった雰囲気だ。
そこから5分ほど歩いたところで、お目当ての御誕生寺に到着した。

お寺の境内に向かって坂をのぼっていくと......。

すぐに猫ちゃんと遭遇。
猫はこたつで丸くなる、ということで寒がりなイメージがあったが、雪の残る境内のあちこちで、猫たちが自由な姿勢でくつろいでいた。
人間の筆者は寒いのだが、のんびり目を閉じているにゃんこたちは慣れているのか、それとももふもふだからか......意外と平気そうだ。


猫ちゃんたちに目を奪われつつ、境内を進んでいくと、奥に大きな石の大仏様を発見。

その全長は台座から8メートル、総重量は144トン。中国で作られた特注の石仏で北陸最大級の大きさを誇るという。
しかもこの大仏様、なんと膝の上に猫ちゃんが2匹乗っているのだ。


大仏様の膝の上でくつろぐにゃんこたち...。可愛すぎる...。
また、境内の至るところには猫のイラストが描かれていたり、小さな招き猫が入った「招き猫おみくじ」もあったり、......まさに猫好きの楽園である。

しかしここは、ただの「かわいい猫ちゃんスポット」というだけではない。
御誕生寺と猫の関係、そして猫への思いを、同寺の猪苗代昭順(いなわしろしょうじゅん)住職(46)に聞いた。
寺にいるのはすべて保護猫
20年12月時点で、御誕生寺の境内にいた猫は26匹。その全てが、敷地内に捨てられていたところを、寺で保護した。いわゆる保護猫だ。

住職は、猫を保護するようになった経緯について
「寺が建立された20年前、まだ工事中で殺風景だった境内に、子猫が4匹入れられた段ボールが置かれておりました。当時の住職がそれを不憫に思い、食事を与え、水を与え、気にかけはじめたことが、御誕生寺が『猫寺』となったきっかけです」
と話す。
当時の住職とは、先代の住職のこと。猪苗代住職がこの寺に来たのは12年のことで、そのときには境内に80匹ほどの猫がいたという。
「先代の住職はかわいそうだから、という慈悲深い思いで世話をしていたのだと思います。しかし、相手は動物ですからどんどん増えてしまいますし、餌代もどんどんかさむ、喧嘩をすれば怪我もするし、病院にも連れていかないといけない......。
そうすると、猫もかわいそうだし、お寺も大変になってくるということで、無駄な繁殖がないようにと全ての猫に避妊去勢の手術を行いました」
それから、寺では猫の1匹1匹に名前をつけ、今まで以上にしっかりと面倒を見るようになった。
現在は、御誕生寺で修行している僧侶10人が、その世話を担当。朝8時と夕方15時半には、ドライタイプとウェットタイプのフードを混ぜた栄養満点の餌を与えており、一般の参拝客も運がよければ見ることができる。
その瞬間を狙って取材に訪れた筆者も、無事午後のお食事タイムを見学できた。
和尚さんがカンカンと音を鳴らしながら境内を歩くと、それに気づいた猫たちがどこからともなく集まってきて、その後をついていく。

そして、境内の端に置かれた雨どいの前に集合。
みんなで並んでフードを仲良く食べる姿は、たまらなく愛らしかった...。


このような猫たちの餌代や、薬や予防接種などにかかる医療費は基本的に寺の負担だが、境内に設置された「ねこの募金箱」に参拝者が入れたお金も、その一部となっている。

募金は1000円からで、お金を入れると、そのおしるしとして寺の猫ちゃんたちの写真が使われたオリジナルの日めくりカレンダーやキーホルダーなどがもらえるそうだ。
「いずれは寺にいる猫をゼロにしたい」
一時は80匹もいた猫が、今や26匹。約3分の1にまで減った理由は、実は猫たちに行った避妊・去勢の手術だけではない。
御誕生寺では、保護猫の里親探しも行っているのだ。
「1匹1匹の猫を大切にするためには、かわいそうだからとただ飼っているだけではなく、その先に繋げていくというのがお寺らしい活動ではないかなと思います。
そこで、ブログやフェイスブックを立ち上げて、皆さんが更新を楽しみにしてくれるような、癒されるような、猫たちのそんな様子を発信しています。
また、うちの猫だけではなく、軒下で生まれてしまって困っている、というような猫ちゃんたちについても、預かることはできないのですが、うちの寺で里親探しを仲介することもあります」
と住職。お寺が猫と里親をマッチングさせるとは...なんとも珍しい。
そんなところも、このお寺が「猫寺」として有名となった理由のひとつだそうだ。

なんと今まで繋げた猫ちゃんと里親のご縁は、400以上。
その影響もあり、御誕生寺は「縁結びの寺」としてもご利益があるいう評判も広まっている。
「いずれは寺にいる猫をゼロにしたい」
住職が掲げているのは、こんな目標だ。
「うちにいる猫たちは、とても大切に世話をしているのでみんな人懐っこくて穏やかな子ばかりです。
中には、うちの猫の状況を心配して見に来てくださる方もいらっしゃいますが、皆さん実際の様子を見たら安心されるんです。好きな人が見れば、その猫たちがどういう精神状態で、どういう雰囲気なのか一目瞭然ですからね。動物は嘘もつかないし、演技もしません。
ですが、それでもこの子たちは、みんな一度捨てられた猫なんです。かわいそうじゃないですか」
住職は、「そういう、かわいそうなことをなくしたいんです」と強く語る。
境内にある猫の乗った大仏様も、そんな思いをこめて建立されたそう。
「100年、200年経ってから、あそこの大仏様に猫が乗っているのは、昔猫が捨てられていたっていう社会問題があったけど、お寺のお坊さんたちがみんな縁を結んであげたらしいよって、そんな話ができるような未来になればいいなと思います」(猪苗代住職)

可愛すぎる!にゃんこクレープ
御誕生寺の猪苗代住職は
「猫が好きで、観光がてらうちに寄ってくれた参拝者さんたちが、何か新しい気付きを得て帰ってくれたら嬉しい」
と話していた。
かくいう筆者も、お寺に来たときは、素直に猫ちゃんがたくさんいてかわいい......としか思わなかった。だが、取材後に境内でくつろぐ猫ちゃんたちを見ると、また違った感情がこみ上げてくる。どうか、素敵な里親さんとのご縁があってほしい。
「猫寺」から猫が少なくなる......。それは寂しいことのようにも思えるが、猫ちゃんにとって幸せなことなのだ。
感極まる筆者をよそに、境内で変わらずのんびりとくつろいでいる猫ちゃんたちに別れを告げる。気持ちを新たに、筆者は次なる猫スポットを目指した。
次の目的地は福井駅からJR北陸本線で一駅の「森田駅」で下車し、歩くこと約10分。
手作りクレープのお店「にゃいすでぃ」だ。

雪景色の中に赤い屋根が映え、店の周りには猫のイラストや置物が。
まるで絵本に出てきそうな愛らしいこのお店で、SNSでも大人気の「可愛すぎるクレープ」を食べられるらしい。
期待に胸を弾ませながらドアを開けると、店のオーナー・高橋詩織さん(27)が迎えてくれた。
高橋さんは、製菓の専門学校を卒業後、ケーキ屋やクレープ屋で経験を積み、18年12月にこの「にゃいすでぃ」をオープン。かわいいクレープの店を作ろうと、大好きな猫をモチーフにしたそう。
「猫好きなお客さんが遠方から買いに来てくれることもある」という人気のクレープが、こちらだ。

色鮮やかで美味しそうなクレープの上に、キュートなにゃんこが乗っている...!
まるでぬいぐるみのようなキュートさに思わず悶絶してしまう。
両脇のクレープの真ん中あたりにちょこんと乗っているのはトッピングの「にゃんこマシュマロ」(30円)。これは、「ツナチーズレタス」などのデリカクレープやクリームのないクレープ以外であれば、トッピングすることができるという。

実はこの「にゃんこマシュマロ」も高橋さんの手作り。マシュマロに耳と目、手をチョコペンでつけているそうで、毎日一時間以上かけて、50匹ほど作っているそうだ。
「クレープをお渡ししたときに、お客さんがこのにゃんこたちを見てすごく喜んでくださるんです。そういった反応がいただけるのがとても嬉しいので、皆さんの笑顔のために頑張っています」
と高橋さん。確かにこれは、誰もがときめいてしまう愛らしさ。破壊力抜群だ...。
と、すでに見た目で大満足してしまった筆者だが、もちろん味にも、大満足。いちごミルフィーユとWクリームチョコバナナの2種類をぺろりと完食してしまった。(にゃんこマシュマロを食べるのには、少々心が痛んだが......。)
もちもちした食感が特徴的なクレープ生地は、福井県産のコシヒカリの米粉を使用している。生まれも育ちも福井県で、小さい頃からお父さんがお米を作っているのを見てきたという高橋さんは、「福井県のお米の味を知って、愛してもらいたい」と語る。
「福井県産コシヒカリの米粉を使うことで、地元の人にとっては特に馴染みのある味になっていると思います。また、お砂糖を控えめにしてお米本来の優しい甘みがよく出るように工夫しています」(高橋さん)
田んぼの真ん中にある「猫島」?
可愛いお店のキュートなクレープでお腹も心も満たされた筆者は、最後の猫スポットを目指した。
知る人ぞ知る、そして知らなければ気づけない、そんな猫スポット、「猫島」(大野市)だ。
そう聞くと、猫がたくさんいる島をイメージする人もいるだろうが、この猫島はそうではない。田んぼの真ん中にある猫の形をした岩が、「猫島」と呼ばれているそうなのだ。
福井駅から車で走ること約一時間。国道158号線を東へ進み、目印となる大野市蕨生(わらびょう)の「中休交差点」を右折したところで、案内してくれた福井県職員のAさんが「地図上だとこの辺りだと思うんですが......」と教えてくれる。

見渡すと、そこは一面の雪景色。Aさんいわく「この時季には珍しい」というほど晴れきった青空と山々が美しく、思わず見惚れてしまうが......猫島らしきものはなかなか見つからない。
さすがは「知らなければ気づけない」スポット。もしかしたら、このまま見つけられないのではないか...。そんな焦りを胸に、車窓から猫を必死に探していたところ、それは突如出現した。

背の高い二本の木が、まるでにゃんこの耳のようではないか。
まるで雪の中から巨大な猫がちょっとだけ顔を出している姿......に見えなくもない。
そう、これが「猫島」だ。

積もっている雪の下には田んぼが広がっているため、暖かい時期であればその間の道を通って、もっと近づけるようだ。
ちなみにこの猫島を楽しむためには、見る角度がとても大切になってくる。
試しに、猫島を横側から撮影してみると...。

「猫感」は全く感じられず、ごくありふれた、木が密集している光景にしか見えない。
このように発見難易度が高すぎる猫島だが、猫好きのみなさんはぜひこの記事を参考に探してみてほしい。
ちなみに夏場に訪れると木がもっと生い茂っており、より猫っぽく見えるそうである。
さて、福井県の「ねこ」巡りはこれでおしまい。いかがだっただろうか。
かわいいものには目がないが、実は猫が特別好きというわけではなかった筆者も、今回の旅ですっかり猫の魅力に憑りつかれてしまった。猫ちゃんかわいい...。
猫が好きなひとも、そうでないひとも、ぜひ福井県の猫たちに会いに行ってみてほしい。そうしたらきっと、ますます、あるいは新たに、虜にされてしまうこと間違いなしだ。
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<企画編集・Jタウンネット>