野沢菜、信州味噌、八幡屋礒五郎... 地元民なら必食?長野への愛が凄まじいご当地カップ麺が存在していた
マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界
第三十八回 「凄麺 信州味噌ラーメン」 文・写真:オサーン
カップ麺ブロガーのオサーンです。「ご当地カップ麺」をレビューする連載の第三十八回目です。今回は、信州長野県のご当地ラーメン「信州味噌ラーメン」を再現したカップ麺、ヤマダイの「凄麺 信州味噌ラーメン」をレビューしていきます。
信州味噌ラーメンはカップ麺発のご当地ラーメン
信州味噌ラーメンは、信州味噌を100%使用した長野県のご当地ラーメンです。長野県は全国の味噌生産量の4割を占める大産地で、味噌ラーメンをご当地ラーメンとするのはとても理にかなっていると言えます。仙台のご当地ラーメンが仙台味噌を使用した「辛味噌ラーメン」なのとよく似ています。
信州味噌ラーメンの歴史は浅く、2015年2月に日清食品から発売された、「麺ニッポン 信州味噌ラーメン」というカップ麺に端を発します。日清食品と長野県内のラーメン店が加盟する「信州麺友会」がコラボして信州味噌ラーメンの定義を作り上げ、カップ麺化されました。
信州味噌ラーメンは、カップ麺発信の新しいご当地ラーメンと言えます。
その定義は、信州味噌を100%使用すること、信州りんごを隠し味に使うこと、そして大きく刻んだネギを使うことの3つ。日清食品のカップ麺でもその定義に則り、信州味噌を100%使用。信州りんごの効果でほのかに甘く、そして具に大きなネギ、さらにカップ麺では珍しい長野名物野沢菜も入ったこだわりの一杯でした。
日清食品の信州味噌ラーメンは現在販売されていませんが、約5年の時を経て復活したのが、今回紹介する「凄麺 信州味噌ラーメン」です。日清食品が作ったご当地ラーメンを、別のメーカーであるヤマダイが引き継ぐ構図が面白いですよね。
日清食品時代から引き続き、「信州麺友会」の推奨も得ています。
信州味噌を100%使用したニンニク風味のスープ
豚骨をベースに2種類の信州味噌を100%使用した味噌味のスープです。残念ながら私の味覚では信州味噌ならではの特徴はわかりませんが、白味噌を使用したクセのない味噌味となっています。
以前は信州味噌ラーメンの定義のひとつだった信州りんごは今回入っていないようですが、ニンニクやごま油によって風味良く仕上げています。どちらも日清食品時代にも入っていましたが、今回その威力がかなり増していました。味噌の味よりも、ニンニク&ごま油の香ばしさが特徴のスープと言えそうです。
「八幡屋礒五郎」の七味を使用
信州味噌に加え、さらに地元長野善光寺の老舗「八幡屋礒五郎」の七味唐辛子が別添されています。東京浅草「やげん堀」や京都清水「七味家本舗」と並ぶ、三大七味のひとつと称され、他に比べて辛味が強いとされています。
カップ麺で使われる七味唐辛子は、せいぜい香り付け程度なことが多いのですが、今回は七味の量が多い上に、刺激の強い「八幡屋礒五郎」ということも相まって、全部入れるとスープの味が変わるレベル。香りの良さとピリっとした辛味が印象でした。
つるみと弾力のある中太ノンフライ麺
麺は中太のノンフライ麺で、麺表面のつるみと強い弾力が特徴の多加水麺食感となっています。信州味噌ラーメンの定義に麺に関するものはありませんでしたが、日清食品時代と今回で見た目や食感にそれほど大きな違いはなさそうです。
「凄麺」シリーズは、多くの商品で多加水麺食感の中太ノンフライ麺が使用されており、信州味噌ラーメン専用の麺というよりは、いつもの凄麺シリーズの麺という印象。濃いめの味噌味スープに対し、太めの麺を合わせることでバランスを取っていました。
長野県産のぶなしめじと野沢菜
具として入っているのは、鶏肉団子と、長野県産のぶなしめじ&野沢菜。鶏肉団子は4個入っていて、日清食品時代に入っていた粒の小さな肉ミンチに比べるとだいぶ食べ応えが増しています。
長野県産のぶなしめじは、カットが小さいので、見た目にはそれほど目立っていませんが、実際食べるとカップ麺の具としては十分に弾力があり、風味も豊か。長野県はぶなしめじ生産量の全国トップで全国の4割超えているとのことで、その底力をまざまざと見せつけられました。
野沢菜は具の枠を超えた信州味噌ラーメンのシンボル
そして長野県の野沢菜。カップ麺の具としては非常に珍しい存在で、日清食品時代にも入っていましたが、今回はそれ以上にたくさん入っています。野沢菜らしいシャキシャキした食感と味も感じられました。
かなりたくさん入っていて、欠片がスープに多く浮いており、スープの味にも影響を及ぼしています。さしずめ野沢菜味噌ラーメン的な雰囲気を醸し出していました。今回の一杯の主役と言って良い存在です。
長野愛が詰まった一杯
これでもかと長野の食にこだわった一杯で、カップ麺でここまでやるのはあまり見たことがありません、これだけこだわって定価税別220円というのは、メーカーに利益があるのか心配になるレベル。
特に八幡屋礒五郎の七味と野沢菜の効果は大きく、味噌ラーメンの新しい形を見た気がしました。
今回の商品を製造したヤマダイは茨城県のメーカーですが、中の人に長野県人がいるのではないでしょうか。そうでなければ実現し得ないような、長野愛に溢れた一杯であり、ご当地カップ麺の理想の姿でした。