たこ焼きと明石焼き、結局何が違うの? そんな疑問を一瞬で解消するボードがこちら
みなさんは「明石焼き」というご当地グルメをご存知だろうか。
黄色く丸いフォルムで中にはタコ。一見するとたこ焼きそっくりだが、間違っても一緒にしてはいけない。あくまで明石焼きは明石焼き。たこ焼きとは似て非なるものなのだ。
しかし悲しきことに、明石焼きとたこ焼きを間違える人、同じだと思っている人はどうも少なくないらしい。
ある明石焼き専門店に掲げられた、こんなプレートが話題になっている。
「明石焼とタコ焼とのちがい」
よほど間違う人がいたのだろうか...明石焼きとたこ焼きの特徴がそれぞれ表にまとめられている。その内容は以下の通りだ。
「明石焼」
・【形】丸いが、平ぺったい
・【中の具】タコだけ
・【硬さ】柔らかくても、くずれない
・【鍋】銅板製
・【食べ方】つめたい汁で冷やして食べる
・【材料】玉子が主である
「大阪のタコ焼」
・【形】ボール状
・【中の具】タコ・紅生姜・ネギなど
・【硬さ】硬いダンゴ状
・【鍋】鉄板製(鋳物)
・【食べ方】ソース・青のりなど
・【材料】メリケン粉が主である
明石焼きとたこ焼きをなぜ間違えるのか不思議なくらい、違いが明確に示されている。ツイッターユーザーの基地司令(@Military_AFV)さんが紹介したこの一覧表に、他のユーザーからは、
「こんな便利な早見表があったとは」
「タレに浸して食うのとマヨネーズぶっかけて食う位の違いかと思ってました」
「明石焼きは怒らせると怖い食べ物です」
といった声が寄せられている。
店主「説明に疲れ果てました」
基地司令さんが紹介したプレートは、魚の棚商店街(兵庫県明石市)に店を構える明石焼き専門店「よこ井」の店内に掲げられている。
Jタウンネットは2020年7月13日、店主の横井孝子さん(79)に詳しい話を聞いた。
よこ井は1952年創業。プレートを掲げたのは30年ほど前だという。明石焼きとたこ焼きの違いを明確にした理由を横井さんに聞くと、
「お客さんがお見えになった時に聞かれて、説明に疲れ果てました」
とのことだった。たこ焼きと間違えられることは今でもあるようで、「たこ焼きください」と言ってくる人もいるという。間違えられることに対して、横井さんは、
「不愉快です」
と一言。何十年も間違えられ続けてきたら、そう思うのも無理はないだろう。
一般社団法人・明石観光協会の公式サイトによれば、明石焼きは「じん粉」という、小麦粉のでんぷんを精製したものを使用するのも特徴の一つ。柔らかい食感は、じん粉の働きによるものだ。
また、話題になった一覧表には、明石焼きの特徴について「つめたい汁で冷やして食べる」とあるが、同協会のサイトによれば、つけ汁は温かくても冷たくても良いそうだ。
たこ焼きのルーツは明石焼き?
改めて明石焼きとたこ焼きを比べて見ると、姿かたちは本当にそっくりだ。横井さんが言うように、間違える人が多いのも頷ける。
では明石焼きとたこ焼き、なぜこんなにも似ているのか。それぞれのルーツをたどってみた。
明石観光協会のサイトには明石焼きのルーツが載っている。なんでも江戸時代末期から明治にかけて製造された模造珊瑚の「明石玉」を作る過程で、残った卵の黄身と小麦粉、タコを入れて作られたのが明石焼き(玉子焼)の始まりなのだとか。
では、たこ焼きはどこから生まれたのか。
大阪府立中央図書館の調査(レファレンス協同データべース掲載)によれば、「暮らしと物価 大阪百話」(「暮らしと物価大阪百話」編集委員会)という文献に、たこ焼きの発祥について以下のような記述があるという。
「たこやきの創始者は、いま西成区橘1丁目に店を構えている『会津屋』の初代遠藤留吉さん。福島県から大阪へ出て来た遠藤夫妻が、知人にすすめられて、ラジオ焼(編注:小麦粉にすじ肉やネギなどを入れて焼いたもの)の屋台を始めたのは昭和10年(1935)の秋でした。
遠藤さんは子どものおやつでしかなかったラジオ焼を改良し、なんとか大人の口にもあうものにしようと工夫を重ねました。初めはコンニャクや豆・肉などをネタに加えてみましたが、いまひとつ評判は芳しくなかっか(原文のまま)のです。
そんなある日、明石から来たという客が、『大阪は肉かいな。明石はタコいれとるで』。この一言がヒントとなり、肉のかわりにタコをいれ、初めて『たこやき』と名付けました。また小麦粉を、醤油味のダシで溶くようになったのも、そもそも遠藤さんのアイデアで、かくして会津流のたこやきが誕生しました」
「明石はタコいれとるで」――これは明石焼きのことだろうか。そうだとしたら、たこ焼きは明石焼きに着想を得て生まれたと考えられる。
実際、明石市公式サイトにも「大阪のタコ焼きにタコが入っているのは、明石焼からヒントを得たと言われています」と記載がある。これらの記述を踏まえると、たこ焼きと明石焼きは、いわば兄弟のようなものと言えるかもしれない。だったら、似ているのも当然だろう。