「揖保乃糸」そうめんだけじゃなかった 実は中華麺・パスタも存在...なぜ?組合に聞いた
「揖保乃糸」と聞いて多くの人が想像するのは、白くて細い、まさに糸のようなそうめんだろう。
筆者もつい先日まではそうだった。しかし、今やそうではない。「揖保乃糸」と聞けば、そうめんと同時に黄金色の麺が脳裏に浮かぶ。
こちらは揖保乃糸の手延中華麺「龍の夢」。
そう、揖保乃糸にはそうめんだけでなく、中華麺も存在したのだ。色の薄いそうめんとは対照的に中華麺は黄味がかっていて、中華麺らしい色合いだ。
ツイッターで中華麺の存在を知った筆者は、早速食べてみたくなりオンラインショップで注文した。
はたして、どんな味がするのだろうか----?
めちゃくちゃうまい
注文して数日のうちに届いた揖保乃糸中華麺「龍の夢」(3束1パック310円・税込)。鮮やかな黄色い麺が眼に眩しい。パッケージに同封されていた「おいしいゆで方・お召しあがり方」によると、冷やし中華として食べてもラーメンとして食べてもおいしいようだ。冷やし中華も気になるが、その日は少し肌寒かったのでラーメンにして食べることにした。
麺の茹で時間は、ラーメンの場合は約2分半。冷やし中華なら約3分。大きめの鍋に湯を沸かし、麺をパラパラと入れる。茹であがるまではあっという間なので、この間にスープも用意しておこう。今回はお湯で薄めるだけのラーメンスープを使用した。
茹であがった麺はこんな感じ。ストレートな細麺だ。ラーメンのスープに入れる前に少しだけ麺を食べてみると、麺自体に塩気があり、しっかりと味がする。何より特徴的なのが、そのツルツルとした舌触りだ。そうめんのようにスルスル食べられた。そしてこの麺をラーメンにしてみると、想像以上にスープと麺が絡む。
細くてまっすぐな麺をすすると、麺を単体で食べた時よりもさらにツルツルとした食感が際立つ。また、歯切れがよくあっさりとした印象で、どこかそうめんのような雰囲気がある。食欲があまりない時でも、このラーメンなら食べられるかもしれない。
そうめんと同じ「手延べ製法」の中華麺
2020年4月20日、Jタウンネットが揖保乃糸を製造する兵庫県手延素麺協同組合(兵庫県たつの市)に取材したところ、この中華麺は2006年にお中元やお歳暮に送るギフト用として誕生したそうだ。2010年には家庭用商品が発売された。
そうめん作りでつちかった手延べ製法で、時間と手間をかけて生産しているという。この製法でそうめん以外の麺を作ろうと思ったのはなぜか、同組合の担当者に尋ねてみると、
「定番のそうめんやひやむぎに限らず、様々な麺づくりがどこまでできるかという一種のチャレンジをすることで、製造技術を向上させるため。また、手延べ麺の良さを発揮し、コアなファンの皆様にも揖保乃糸の良さを再認識していただくと共に、新たなファンの獲得にもつなげるためです」
とのこと。
担当者によると、手延べ製法の特徴は、「麺を細くできること」で、既存の中華麺以上に細く、おいしい麺をつくろうという思いで作り上げたのが手延中華麺「龍の夢」だそうだ。技術的にはより細くすることも可能だが、麺のおいしさが際立つよう、今の太さになっているという。
「中華麺は開発・商品化・販売までかなりの時間と思いをかけた商品です。
開発では、もちろん手延べの良さを出すために原料にこだわり、中華麺らしさを出すためにかんすいを使用したことがポイントです。かんすいには麺を引き締める特性があり、麺を細く延ばしていく手延べとは相反するところがあります。試行錯誤を重ねかんすいを用いておいしい麺を作り上げました」(担当者)
そんなこだわりの中華麺のオススメの食べ方は、「冷やし中華」。
「手延べのつるみ感とコシを感じられ、おすすめです!
細めでつるみがある麺はつゆと絡みやすく、通常のめんつゆで食べてもおいしい中華麺となっています。簡単なアレンジでは、通常のめんつゆにみりんと酢を足し、胡麻油やゴマを少し加えるだけで中華風になりあとは好みの食材をトッピングするだけで簡単に楽しめます」
と担当者。もう少し暖かくなったら、筆者もぜひ冷やし中華を楽しみたい。
なんとパスタもある
ちなみに揖保乃糸の「龍の夢」には中華麺だけでなくパスタもある。こちらは2014年に発売された。デュラム小麦粉を使用した龍の夢パスタも、中華麺と同様そうめん作りでつちかった手延べ製法で作られている。
太さは普段よく食べるパスタより少し細いくらいだが、なんと茹で時間は2分〜2分半。この時間で茹であがるパスタといえば、冷製パスタに用いられることが多い極細の麺、カペッリーニくらいではないだろうか。ちょうど自宅にカペッリーニがあったので太さを比較してみた。
上がカペッリーニ、下が「龍の夢」パスタ。これが同じくらいの茹で時間で仕上がるとは驚きだ。なぜ短い茹で時間で済むのかというと、「手延べ製法」のおかげだそう。
「手延べ特有のソフト感と細さ、かんすいによるしっかりとした食感を出して完成したのが龍の夢パスタです。
手延べ製法は、その工程で数本の麺の帯をよりをかけながらねじり合わせていきます。そのため、1本の麺の中に空洞がたくさんでき、茹でる時にこの穴に湯が入り込むことで、より早く均等にうまい麺が茹で上がります」
と兵庫県手延素麺協同組合の担当者。特にオススメの食べ方は「冷製パスタ」だそう。
「喉ごしの良さと少し細めの麺にソースの絡みがよくおすすめです。バジルソースやあっさりとした味付けがより揖保乃糸のパスタ楽しめると思います」(担当者)
筆者もシンプルにオリーブオイルと塩のみで食べてみると、麺の味がしっかり感じられておいしく、具がなくてもかなりの満足感があった。