自粛生活のお伴に「ヒエログリフ」いかが? 博物館の提案ツイートに反響、その意図を聞いた
古代エジプト文字の一種「ヒエログリフ」。エジプトの遺跡などに刻まれた絵のような象形文字だ。
そんなヒエログリフが、令和の日本で注目を集めているらしい。
きっかけは、九州国立博物館(福岡県太宰府市)の公式ツイッターが2020年4月20日、「ヒエログリフで秘密の手紙を書こう!」と題した企画を紹介したこと。
「お友達に会えなくて寂しいという方は古代エジプトの象形文字、ヒエログリフを使って秘密の手紙を書いいてみよう」といったメッセージが添えられたこの投稿には、2万4000件を超える「いいね」が寄せられている。
ヒエログリフをアルファベットに当てはめた表をもとに、ローマ字の文章をヒエログリフ化するという内容だ。
例えばAはエジプトハゲワシ...いきなり難しい。口(R)やロールパン(T)のように簡単なものから、ライオン(L)やフクロウ(M)のように画力を要するものまで様々だ。
さらにややこしいことに、CとS(折りたたんだ布)のように2つのアルファベットを表すヒエログリフが3文字もある。ただでさえハゲワシなのかフクロウなのか分かりづらいのに――大人であっても解読は容易ではなさそうだ。
しかし、九州国立博物館のツイートには、
「敷き詰めて書くのが コツ!」
「日直の学級日誌ヒエログリフで書いたことあったわ」
「娘が小二の頃ヒエログリフ文字で自分の名前とか書いてました笑笑」
といった声が寄せられ、意外にも使い手(?)は少なくない様子。絶対読みづらいのに、なぜこんなにも人気なのか...。
Jタウンネットは28日、九州国立博物館の企画担当に詳しい話を聞いた。
ヒエログリフには母音がない?
九州国立博物館は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2月末から臨時休館中。公式サイトでは、過去に実施したワークショップの内容などを紹介する「おうち de きゅーはく!」を展開している。
そこで4月15日から公開している「ヒエログリフ」の対照表は中部大学教授・中野智章氏監修のもと制作された。
企画の担当者によれば、今回のツイートで紹介したのは、25日から開催予定だった特別展「古代エジプト展」で準備していた企画だった。特別展では「名前を書こう」だったが、「手紙を書こう」に変更したという。
その理由としては、
「一人で書くのもいいのですが、外出自粛や休校中で、お友達や離れて暮らす家族などに会えない人がいると思いますので、その人たちに手紙を書いてもらえたら、と思いました」
と説明している。
公開された資料によれば、ヒエログリフは記すと力を持つ神聖な文字とされている。書いた言葉は現実になると信じられており、神殿や墓、石碑や彫像などに記されている。
しかし当時のエジプトでヒエログリフの読み書きできたのは人口のわずか1%ほど。書記や神官、王など、限られた人だけだったという。
ところで2つのアルファベットを表すCとS、 EとI(葦の穂)、UとW(ウズラのヒナ)はどのように書き分ければ良いのだろうか。担当者に聞いてみたが、その方法はないという。
これらが2つのアルファベットを表している理由については、
「ヒエログリフには母音がないと言われていて、母音に近い音をアルファベットの母音に置き換えています」
と担当者。ヒエログリフの正確な発音は分かっていないという。
ヒエログリフ、なぜ人気?
それにしても、なぜヒエログリフはツイッターで話題になったのか。「子供が描いていた」といったコメントがあることにも驚きだ。子供たちよ、一体どこで習ったのか...。
ツイッターで話題になった理由について、担当者に聞いてみると、
「正直、わかりません。紙と鉛筆だけで簡単にできる、というのはあるかと思います。あと、手書きで文字を書かなくなったから、よけいに複雑な文字を書くことが面白いと感じてもらえてのかもしれません」
とのこと。筆者も試しに書いてみたが、最初の1文字からうまく書けず何度も書き直してしまった。だが絵を描いている感覚で苦にはならず、書き上げたときに達成感を覚えたのも事実だ。おこもり期間中の暇つぶしにはもってこいかもしれない。
担当者はヒエログリフが話題になったことについて、
「こんなに反響があるとは思いませんでした。これを機に、少しでも博物館の活動や当館の展示に興味を持ってもらえる人が増えればいいなと思います。そして、開館したときには、ぜひ遊びに来てもらいたいです」
と話している。