猫はなぜコンクリに足跡をつけてしまうのか コンクリートと猫の専門家に見解を聞いてみた
街を歩いていて、思わずほっこりしてしまうものと言えば、コンクリートについた猫の足跡だ。
コンクリートを流し込んだ業者や依頼主からするとたまったものではないのだろうが、ちょこちょこと歩いた形跡をみると、なんとも言えず癒される。
ツイッターで検索してみると、
「コンクリートにネコちゃんの足跡がついててほっこりした」
「コンクリートににゃんこの足跡あった!乾く前に触っちゃったんだろうなぁかわいい」
「コンクリートとかにネチコヤンの足跡がついちゃってるやつ、もし自分が家などを建てる機会があるなら逆に付けて行ってもらいたいくらい好き」
と、猫の足跡に和むユーザーも少なくない。
実際に自宅に猫の足跡がついてしまったというユーザーも「夢の『コンクリートに猫の足跡』が我が家に!!夢のよう!!かわいい!」と、喜びのツイートを投稿しており、猫好きにはたまらない光景のようだ。
しかし、なぜ猫たちはコンクリートの上を歩いてしまうのだろう。
その理由を検索してみると、コンクリートが固まる際に発する熱に猫が寄ってくる、というリフォーム会社や造園会社のブログ記事がいくつか見つかった。造園会社に勤める知人に聞いてみても、「そう聞いたことがある」との答え。
では、実際のところはどうなのだろう。Jタウンネット編集部はコンクリートの専門家と、猫の専門家に取材した。
「コンクリはあったかいから」ってホント?
まず話を聞いたのは、生コンクリートの製造販売を行う長岡生コンクリート(静岡県伊豆の国市)。
取材に答えてくれた試験室(編注=生コンクリートの品質管理等を行う部署)の二見さんは、「『猫が暖を求めて寄ってくる』という説には疑問を感じる」と話す。
コンクリートに足跡が付いているということは、コンクリートが柔らかいうち、つまり、発熱する前にその上を歩いていると考えられるそうだ。また、
「猫の体温ほどの熱(38度くらい)を発している段階では、その表面は足跡がつくほど軟らかくないと思われる」
と二見さん。さらに、「一般の外構工事(土間コンなど)では、せいぜい厚みも100~150㎜程度で、そのくらいの厚みでは、発生する熱量もそんなに大きくはない」とのことだ。
ただ、猫がコンクリートに足跡をつけてしまうのは珍しくない光景で、「猫の足跡」についての問い合わせもよくあるという。補修することも可能だが、そのメリット・デメリット(仕上がり・効果・費用など)を伝えると、音信が止まることが多いそうだ。職人が数時間ほど作業することになるので、費用は万単位になるらしい。
にゃんこは好奇心旺盛
猫専門の動物病院、猫の病院シュシュ(東京都江戸川区)の獣医師・阿部麗さんも、コンクリートの発熱と猫の足跡の間には「関係がないんじゃないか」と話す。
「あたたかいのであれば、そこで丸くなって寝ちゃったりすると思うんですけど、そういうことって聞かないですよね。足跡だけが付いていると思うので」(阿部さん)
温かさに引き寄せられていないのだとすると、一体なぜ猫たちはコンクリートの上を歩くのか。
「ただ純粋に通り道だったたり、普段と色やにおいが普段と違う、と興味本位で乗ったりすることはあると思います」
と阿部さん。「なんだろう?」と打ち立てのコンクリートを確認する、好奇心旺盛な猫。想像するだけでかわいい。人間の都合は全くお構いなしなところも、猫っぽい。
しかし、ペタペタと足跡をつけた後、肉球にコンクリートがついて困ってしまうことはないのだろうか。
阿部さんに聞いてみると、
「それで困ったり、病気したりするっていうことはないと思いますね」
とのこと。これまでもそんな猫を見たことはないそうだ。