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<東京暮らし(19)>家で一番大事なのは「寝室」だ!

中島 早苗

中島 早苗

2020.02.02 13:00
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<文 中島早苗(東京新聞情報紙「暮らすめいと」編集長)>

皆さんは毎晩、よく眠れていますか?

週刊誌などでは繰り返し、「よく眠るためのヒント」や「睡眠薬は危険だ」などという特集が組まれ、睡眠不足や、睡眠に問題を抱えている人が少なくないことがうかがえる。実際、主要先進諸国の中でも日本人は睡眠時間が短い。

厚生労働省の2014年「国民健康・栄養調査」では、1日の平均睡眠時間は男女とも「6時間以上7時間未満」と回答した人の割合が最も高く、男性34.4%、女性33.9%。「ここ1か月間、睡眠で休養が充分にとれていない」人の割合は 20.0%だった。

私は住宅雑誌の編集者歴が長かったこともあり、寝室や眠りの取材も数多くさせてもらう中、これからの住まいで一番大切なのは寝室なのではないかと思うようになった。

それを直接教えてくれたのは、早稲田ハウスという、千葉県の住宅会社社長、金光容徳(かねみつ・ようとく)さんだ。金光さんは、化学物質を使わない、住む人が健康でいられる住宅を提案、造り続けているが、特に力を入れているのが寝室である。

これからの住まいは、寝室こそよく考えて造りたい(写真は全て、早稲田ハウス提供)
これからの住まいは、寝室こそよく考えて造りたい(写真は全て、早稲田ハウス提供)

「究極の寝室」とは

金光さん曰く、「1日8時間近く寝室にいるとすると、人生の3分の1は寝室で過ごすことになります。寝室が変わると人生が変わります。住まいの中で最も気を使い、自然由来の材料できちんと造るべきは寝室だと、私は考えています」。

確かに、日中外で働いている人だと、働いている日はリビングやダイニング、キッチンのそれぞれにいる時間よりも、寝室にいる時間の方が長いかもしれない。にもかかわらず、家造りや引っ越しの際、寝室は何となく後回しとなり、お金や気を使う場所として設えることが少ないのではないだろうか。

寝具やカーテンに関してもそうだ。ベッドはいいものを買いたいと思い、例えばヨーロッパの高級ブランドのフレームやマットレスを買う人はいるだろうが、「寝心地」優先で正しいベッド選びができている人は多くないように思う。

今まで数十年、数百軒の住宅を取材させてもらった経験と、自分自身の睡眠体験からベッドについてわかったのは、「フレームなんかどうでもいい」ということ。マットレスこそが重要なのだ。ポイントは、「寝返りが打ちやすい」こと。もしもあなたが今不眠に悩んでいるとしたら、ぜひとも、睡眠中に何度も打っている寝返りがしやすい、体重を分散して体を支えてくれるマットレス、枕をぜひ研究して選んでいただきたい。

そしてカーテンやブラインドは、できるだけ完全に外光をシャットアウトできる遮光タイプを選ぶと深く眠れると思う。

しかし最も大事なのは、金光さん言うところの、寝室空間の素材である。早稲田ハウスでは、化学物質を使わないのはもちろん、床・壁・天井を天然素材で仕上げ、その施工方法を「究極の寝室」として特許を取得。床は宮崎県産の天然木の飫肥(おび)杉、壁や天井には炭を砕いた材料や珪藻土を使い、リラックスして眠れる寝室を造り上げている。早稲田ハウスのモデルハウスで、その宿泊体験もできる。

床は宮崎県産飫肥杉の無垢板、壁は珪藻土、天井は炭を砕いた塗料で仕上げた「究極の寝室」
床は宮崎県産飫肥杉の無垢板、壁は珪藻土、天井は炭を砕いた塗料で仕上げた「究極の寝室」

早稲田ハウスの家に住んだ方々に取材をしたところ、「前の家では2時間おきに起きてトイレに行っていたのが、朝まで眠れるようになった」「子どもが夜中に起きなくなった」という感想を聞いた。

特に私がいいなぁと思ったのは、飫肥杉の床だった。最初にびっくりしたのは、無垢板を張っているのにもかかわらず、床暖房を施していたことだ。一般的なフローリングは、無垢材を使うと割れや反り、隙間が生じるとして、床暖房ができる商品はほとんどない。というか、私は早稲田ハウスの飫肥杉に出会うまで、床暖房のできる無垢床を見たことがなかった。床暖房を敷設したいなら、一般的には、合板フローリングを選ぶしかないのである。

それが、金光さんによれば、「もう何年もモデルハウスでもショールームでも床暖房で使っていますが、何ともないですよ」。確かに、当時で6~7年経っているという床暖房を入れた飫肥杉の無垢床は、反っても割れても隙間が空いてもいなかった。それどころか、天然オイル拭きだけで仕上げたその杉板は、ほどよい艶が出て実にいい感じの風合いだった。聞けば、飫肥杉というのは昔は船にも使われた材料で、木材の中でも油分を多く含んでいるという。その油分が、床暖房で温めても過剰に乾燥することなく、反り、割れ、隙間を防いでくれるのではないだろうか。

千葉県松戸市にある、早稲田ハウスのモデルハウス。宿泊体験もできる
千葉県松戸市にある、早稲田ハウスのモデルハウス。宿泊体験もできる

実は私は、築約30年の中古マンションをリノベーションして住んでいるのだが、早稲田ハウスに学び、床は飫肥杉の無垢板を使って床暖房を入れた。間もなく3年が経つが、ありがたいことに、我が家の床は反りも割れも隙間もなく、年々艶が出て、いい色合いになってきてくれている。この家に住んでからスリッパははかず、素足で冬は床暖房の温かさ、夏はサラリとした優しくほどほどに柔らかい足触りを楽しんでいる。ちなみに私は漆喰が好きなので、壁と天井は漆喰で仕上げてもらった。

また金光さんは、快眠の恩恵にあずかれる人がもっと増えるようにと、「究極の寝室DIYキット」や、「究極の寝室体験カー」まで作ってしまった。これらによって、千葉から遠くに住んでいる人でも、自分で天然素材に囲まれた寝室を造り上げたり、体験したりできるようになった。

早稲田ハウスの「究極の寝室 体験カー」。内部は究極の寝室と同じ仕様の空間になっていて、ベッドもあり、体験することができる
早稲田ハウスの「究極の寝室 体験カー」。内部は究極の寝室と同じ仕様の空間になっていて、ベッドもあり、体験することができる

金光さんの教えのおかげで天然素材の空間に包まれて、体圧を分散するマットレスに寝るようになってから、以前の住まいより私の眠りの質は格段に上がった気がする。これから引っ越しをする、家を建てる、リフォームするという方は、そして今よりぐっすり眠りたいと望んでいる方は、ぜひとも寝室に注目してみて欲しい。寝室が変わると人生が変わる。今では私も、そう思っている。

中島早苗

今回の筆者:中島早苗(なかじま・さなえ)

1963年東京墨田区生まれ。婦人画報社(現ハースト婦人画報社)「モダンリビング」副編集長等を経て、現在、東京新聞情報紙「暮らすめいと」編集長。暮らしやインテリアなどをテーマに著述活動も行う。著書に『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)、『建築家と造る 家族がもっと元気になれる家』(講談社+α新書)、『ひとりを楽しむ いい部屋づくりのヒント』(中経の文庫)ほか。
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