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カタツムリの交尾、まるで殺し合い? 互いに「槍」をグサグサと...そうする理由を専門家に聞いた

横田 絢

横田 絢

2019.11.14 06:00
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なぜ恋矢を刺し合うのか

カタツムリの恋矢について調べていると、カタツムリの交尾行動等を研究する生物学者で、韓国・慶北大学校研究員の木村一貴博士にたどり着いた。

Jタウンネット編集部は11月12日、木村博士にメールで取材した。

まず、「恋矢」とはどんなものなのか。

「(カタツムリの種によって)形だけじゃなくてサイズもバラバラですね。体は大きめなのに小さい恋矢の種類もいれば、体は細いのに長い恋矢を持つ種類もいます。さらに言えば、本数も違います。二刀流の種類もいます!」

と木村博士。自身のウェブサイトでも、様々な形の恋矢を紹介している。

様々な形の恋矢(Wikipedia Commonsより)
様々な形の恋矢(Wikipedia Commonsより)

シンプルな針のような形の恋矢もあれば、かぎ爪のような形のもの、断面が手裏剣のようにトゲトゲしたものもある。

恋矢は石灰質の器官で、交尾のときに口の下の「生殖口」から出てくる。恋矢を持つのは、カタツムリの中でもオス・メス両方の生殖器を1匹の中に持つ雌雄同体の種の一部だそうだ。オス生殖器を互いに挿入するのとほぼ同時に、恋矢も突き刺し合っている。

カタツムリが恋矢を相手に刺す行為は、「ダート・シューティング」と呼ばれる。その刺し方も、種によって異なる。

「日本にいる種類は大概密着してダート・シューティングを行うので、生殖口付近を刺しますね。ヨーロッパの種類だと距離をとるので、刺さる場所はばらつきますね。生殖口付近が多いですが、足の端とかの場合もあります」
「大概の日本産の種類は、1回の交尾でグサグサと何回も刺します。ヨーロッパの種類の多くは、少し距離を取って、1回だけグサっとします。恋矢も相手の体に刺さったままです」

なんだかそう聞くと、ヨーロッパのカタツムリに比べて日本のカタツムリは陰湿な気がするが、これは恋矢の大きさが理由らしい。

「今のところ、刺す回数と恋矢の表面積に相関があるようです。つまり恋矢に塗布された薬物を送り込むのに、小さいのをたくさん刺すか、大きいのを少なく刺すか、という方向性の違いのようです。」

つまり、日本のカタツムリは小さな恋矢を、ヨーロッパのカタツムリは大きな恋矢を持っている、ということのようだ。

ところで、そもそもなぜ恋矢を差し合うのか。

木村博士によれば、恋矢の表面には、相手の次の交尾を抑制し、自分の精子の受精率を高める働きがある分泌物が塗布されている。小さな恋矢で分泌物を送り込むため、日本のカタツムリはグサグサと相手を刺しまくっているのだ。25分間に3000回以上抜き差しを繰り返す種もいるらしい。

ちなみに、中米のカタツムリは「密着しながらでも、部位にこだわらず刺したりこすりつけたりします」とのこと。

地域によってこんなにも違いがあるとは、興味深い。

白いトゲのようなものが恋矢(木村一貴博士のウェブサイトより)
白いトゲのようなものが恋矢(木村一貴博士のウェブサイトより)

カタツムリたちは恋矢に刺されるダメージで寿命が縮み、傷が大きい場合は死につながる場合もあるとされる。それでも自分の子どもを多く残すためにダート・シューティングを行うと考えられている。カタツムリの交尾には、まだまだ分からないことが多いようだ。

現在、木村博士はカタツムリが恋矢を作れるようになったメカニズムを研究中。恋矢に使われているタンパクなどを解析するために、大量の恋矢を必要としている。

そこで、読者のみなさんに、木村博士からお願いがある。

「もしご家庭で不要な恋矢、物置に眠っている恋矢がありましたらご提供いただけないでしょうか」

恋矢を持て余している方、ぜひこちらから木村博士に連絡を。

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