福井の企業が始めた「ヒーロー採用」 給与は?休みは?応募資格は?担当者にぜんぶ聞いてみた
男子なら一度はヒーローに憧れたことがあるだろう。凶悪な敵にも勇敢に立ち向かい、決して諦めずに挑戦し続ける正義の味方の姿に、自分自身を重ね合わせた人も多いはずだ。
「いつかはあんなヒーローになりたい...」
そんな幼い頃の思いが実現できる企画が誕生した。「社会をにぎやかに!」を企業理念に掲げる通信インフラ企業の「ALL CONNECT(オールコネクト)」(福井市)が、冗談ではなく本気でヒーローの採用を始めるというのだ。
今回採用するのは「福井のヒーロー」を自称する「オルコネマン」の中の人。オルコネマンはこれまで福井を中心に活動してきた同社の看板ヒーローで、社会をにぎやかにする企業理念を具現化したような存在だ。
しかし、いったいなぜヒーローを採用しようと考えたのだろうか――。
とある日の昼下がり、Jタウンネット編集部のN記者はオールコネクト東京支社を訪れた。今回のヒーロー採用を担当する竹内真治さんに詳しい話を聞くためだ。
案内された応接室に入ると、なんとそこには竹内さんだけでなくオルコネマンもいた。
間近で見るヒーローに自らのテンションをどこに待って行ったらよいのか戸惑うN記者。ひとまず、一社会人として名刺だけは渡しておくことにした。
なんとも言えない緊張感を感じながらも、気を取り直して、竹内さんと急遽居合わせたオルコネマンに熱い思いを語ってもらおうではないか。
「熱い仲間、待ってるぜ」
インタビューに入る前に、今回のヒーロー採用の詳細を紹介しておこう。
2019年9月10日に応募が始まったこちらの募集。ウェブのアンケート選考、書類選考、面談選考(面談、フィッティング、決めポーズ)を経て、新たにオルコネマンの中の人として1名が内定、業務委託契約となる。
契約期間は1年間(契約満了1か月前に更新手続き・更新面談)。活動場所は主に福井県内で、活動ペースは2か月に1回以上を予定している。もちろん、本人の希望によってはそれ以上のペースで稼働することも可能だ。
これまでは同社の社員が中の人を務めていたというオルコネマン。「決めポーズがある」「ヒーロー活動中は喋らない」などこれまでの中の人の特徴も、参考として募集要項に記載されている。
給与や福利厚生など、詳しい就業条件についてはコチラのページから。
それでは、採用担当者の竹内さんとオルコネマンを直撃したインタビューを、一問一答形式でお届けしよう。
――そもそも、なぜヒーローを採用することになったのでしょうか。
「これまで福井駅前をメインにいろいろと活動してきました。梅雨入りの日に傘を配ったり、夏まつりの会場でタオルを配ったり、ハロウィンの日にゴミ拾いをしたり...。ただ、正直これまではオールコネクトの社員がヒーローをやっていたんですが、本業に追われてヒーロー活動に100パーセントのパワーを注ぐことができなくなってしまったんです...。『これで本当に社会をにぎやかにできるのだろうか』という葛藤がありまして。であれば、いっそヒーロー専門で活動できる人を募集しようかと思い、ヒーロー採用を始めることにしました」
――採用にあたって一番大事にする部分はどういうところか教えてください。
「一番大事にするのは、熱意です。オールコネクト本社がある福井での活動がメインになるため、どれだけ福井のことが好きなのかが熱意の表れだと思っています。
普通のヒーローのように明確な敵がいて、その敵を倒したらヒーローの存在価値が達成できるというわけにはいかないので、代わりにオルコネマンには『福井県のため』『福井県の人々のため』に活動してもらうことになります」
――オルコネマンに聞きたいのですが、ヒーローのやりがいってなんですか。
「オルコネマンはしゃべらないヒーローなので、代わりに僕(竹内)がお伝えします。一番のやりがいは、関わってくださったみなさまの笑顔、その一言に尽きます。たとえば、東洋経済「都市データパック」編集部が発表した「住みよさランキング2019」で、福井市が全国総合第4位にランクインしました(県庁所在地では第1位)。これもオルコネマンの活動があったからこそでしょう」
――それ、本当にオルコネマンのおかげなんですか(笑) でも、活動を続ける上で大変だと思うこともあるんじゃないですか?
「マスクがすごく暑くなるというのが問題の一つとしてあります(笑)。あとは、福井県のために社会をにぎやかにするとはいっても、まだまだすべての人々をにぎやかにして、笑顔にすることができていないという課題を感じています。たとえば、駅前で傘を配った活動でも、すごく笑顔で受け取ってくれた女の子3人組もいれば、冷ややかな目で歩いて行かれるご年配の方もいらっしゃいます。僕たちの活動は傍から見たら不信かもしれない。けれど、真面目に僕らは社会をにぎやかにするためにやっているんです。
地道にやるしか解決方法はないと思いつつ、もっとより多くの人を笑顔にできるための活動を今後一緒に考えていきたいですね」
――たとえば僕(N記者、29歳男性)のような人間がヒーローになるため、これだけはやっておいた方がいいことはありますか。
「オルコネマンは町の方々に笑顔を届けるので、重要なのが決めポーズと必殺技です。話すことができないので、すべてを行動で伝える必要があります。変な動きや流行のダンスは必須かもしません」
――オルコネマンはそうした技術をどのように磨いているのでしょうか。
「日頃からテレビを見たり、『流行のダンス 20代』で検索したりとか、綿密な情報収集ですね」
――これから応募しようと考えている方にぜひメッセージをお願いします。
「『これまで俺ができなかったことをやってくれる熱い仲間、待ってるぜ』(オルコネマン)だそうです」
実際の応募ってどうなの?
時折竹内さんにごにょごにょしながら、熱い思いを聞かせてくれるオルコネマン。寡黙なように見えるが、燃えたぎる熱い思いはやはり人一倍のようだ。続いて、実際の選考についての質問をしてみた。
――具体的な応募について、年齢制限はありますか。
「年齢制限は特に設けていません」
――福井県民でなくても応募できますか。
「全国から可能です。福井のために何かできるという方のご応募をお待ちしています」
――いま働いているんですが、ヒーローと会社員の兼業は可能ですか?
「兼業OKです。しかし、ヒーローとして活動する以上、100%のチカラでヒーロー活動に取り組んでいただきたいです」
――応募者の熱意はどのように測られるのでしょうか。
「これからの活動をどうやって何のためにやっていきたいのか伺い、熱意を測りたいと思っています。また、福井県のどういったところが好きなのかも伺いたいと思います。たとえば、東尋坊(福井県坂井市)に実際に行って、『ここのお店で食べたカニがおいしかったので福井が好きです』といったように例を挙げて答えていただくと、とても具体的なので僕らも本当に福井のために活動してくれそうだなと思うことができます」
――ほかに選考で重要視される点はありますか。
「脚力、腕力、決めポーズですね。選考のプロセスで決めポーズ選考というものもやりますので、そこでいかに独創的かつダイナミックかつ福井っぽい決めポーズができるか見ます。基本的にこれまでのオルコネマンの活動では臨機応変な対応だったのですが、5歳の子と12歳の子では違う決めポーズがウケたりするので、そういったところも見たいと思っています」
――「100メートルを9.97秒で走り抜けることができる脚力」といった条件は、正直かなり厳しいような気もするんですが...。
「お伝えした条件は必須という訳ではなく、いつくかある項目のうちどれか一つでも該当する方であればオルコネマンになれます。一番大事なことは福井県民のために動ける熱意を持っていることです」
――僕のように頭が大きい人(普段帽子のサイズLかXL)でも応募できますか。
「明確に何センチというのはないのですが、大きすぎると難しいかもしれません。しかし、もしヒーローになれなかったとしてもブレインとしてご活躍、ご協力いただける部分もあるかと思います」
――実際に内定となった場合は、いつからどのようなかたちで活動が始まるのでしょうか。
「早ければ10月、11月から。具体的な活動内容としましては、選考でヒーローになったらやりたい活動を伺いますので、それを元に決まった方と相談して決めていきたいと思っています」
――オルコネマンの中の人に採用されたら家族や友人に口外してもいいですか。
「口外はできません。ただ、ヒーロー期間が終了したら口外していただいて構いません」
――つまり、履歴書に「元ヒーロー」という肩書を書くことができるんですね。それは魅力的かも...。ちなみに、海外からの応募は可能ですか。
「そのために日本に来ていただくのは現実的に厳しいところではあるのですが、日本に来たついでに福井県民のために活動したいというのであればぜひご応募ください」
――採用になったら研修のようなものはあるのでしょうか。
「変身の仕方など研修はする予定です。求める人物像の一つにあるのですが、『子どもたちを0.2秒でサムズアップすることができる右手(左手でも可)』というのがあるので、そうした目の養い方や周囲への気の配り方をフォローします」
――オルコネマンの中の人になる具体的なメリットはどのようなところでしょうか。
「やはり、大好きな福井県、福井県民のためにヒーローとして活動できるということが一番のメリットだと思います」
応募はこちらから
突然のオルコネマンの同席に経験したことがない緊張感を感じたN記者。しかし、取材を終えると、緊張は心地よい疲労に変わり、ヒーロー採用への謎のやる気が満ちてくる。
「もしかしたら、憧れのヒーローになれるかも...」
幼年時代に胸に抱き、大人になったいまではそっとしまっておいたはずの思いが溢れんばかりに高まっている。
気づけば応募する気マンマンとなっていたN記者だけでなく、「ヒーローになりたい」という夢を追い続けている読者の皆様。応募はこちらのページから可能だ。
<企画編集:Jタウンネット>