チープだからこそおいしい! 関東人は知らない「金ちゃん焼そば」の魅力
マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界
第十回 徳島製粉「NEO金ちゃん焼そば復刻版」 文・写真:オサーン
カップ麺ブロガーのオサーンです。「ご当地カップ麺」を食べて紹介していく連載の第十回目。今回は、徳島製粉の「NEO金ちゃん焼そば復刻版」を紹介します。
「NEO金ちゃん焼そば復刻版」を製造しているのは、徳島市に本社を置く徳島製粉。主に即席麺と小麦粉を製造しているメーカーです。
販売地域がほぼ西日本に限られるため、東日本の方にとってはあまり馴染みがないかもしれませんが、1967年から製造されている袋麺「金ちゃんラーメン」や、1973年から続くカップ麺「金ちゃんヌードル」でお馴染みのメーカーです。
徳島製粉というメーカーは知らなくても、「金ちゃんヌードル」を知っている方は多いのではないでしょうか。
なつかしさいっぱいのカップ焼そば
今回紹介する「NEO金ちゃん焼そば復刻版」は、2013年から発売されている歴史の比較的新しいカップ麺です。
商品名に「NEO」や「復刻版」が入っていて、元を辿ると1987年発売の袋麺「金ちゃん焼そば」に行き着きます。この袋麺は残念ながら現在では製造を終了しているものの、元は袋麺だったものが現在はカップ焼そばとして続いている形となっています。
今回の商品とは別に、現在は「金ちゃん焼そば」というカップ麺がラインナップされていますが、巷では今回の「NEO金ちゃん焼そば復刻版」を「金ちゃん焼そば」と呼ぶことが多いようです。
ツメ付き湯切り口と粉末ソースでノスタルジックな雰囲気
カップ焼そばとしては珍しいタテ型形状のカップで、昔のカップ焼そばではよく見られた、プラスチック蓋とツメ付きの湯切り口が採用されています。
このタイプは「ペヤング」で採用されなくなって以来、最近はほとんど見かけることがなくなってしまいました。湯切りの時に蓋が外れて麺をまるごとシンクに流してしまう、あのノスタルジックな思い出に浸れること請け合いです。
別添袋として「粉末ソース」と「かやく」が入っています。最近のカップ焼そばは液体ソースを使用したものが多くなっており、粉末ソースはそれほど多くありません。
粉末ソースを使用する袋麺の「日清焼そば」や「アラビヤン焼そば」などに親しんできた方にとってもなつかしい形態なのではないかと思います。
液体ソースは麺全体に混ぜ合わせやすいメリットがあるのに対し、粉末ソースは混ぜやすさは犠牲になるものの、麺の余計な水分を吸い取ってくれるメリットがあります。湯切りを完全にせずに心持ちお湯を残すようにすると、うまく麺と混ざりやすくなります。
安価で割り切った麺量とかやく
別添の「かやく」の中には肉は入っておらず、キャベツのみです。また、麺量は72グラムで、一般的なカップ焼そばの麺量である90~100グラムに比べると少なめ。
他のカップ焼そばに比べると物足りない構成ですが、店頭では100円ちょっとで売られており(オープン価格)、割り切った商品と言って良いでしょう。麺はカップ焼そばとしては太めの中太麺で、キャベツはしっかり多めに入っています。
ガツンと感じられる「粉末ソース」の濃い味
粉末を使ったソースは、程よい酸味とスパイス感、そして多少の甘みがあり、バランスの良さが光ります。液体ソースのような油脂のこってり感はありませんが、粉末ソースならではの濃くて強い味を楽しむことができます。
袋麺のインスタント焼そばをよく食べていた方ならわかると思うのですが、粉末ソースならではのソースの濃くて強い味には、昔ながらのなつかしさが感じられます。
最近のカップ焼そばだと、液体ソースに入った豚脂の風味が効いていたり、別添のマヨネーズやふりかけでにぎやかな味にしていたりと、それはそれでもちろんおいしいのですが、何の奇抜さもなくガツンと感じられる粉末ソースの味は、郷愁を感じるものがあります。
この粉末ソースの力強さは、袋麺のインスタント焼そばだけではなく、「マルちゃん焼そば」に代表されるチルド焼そばにも共通する味わいです。家庭の味と言って良いのかもしれません。
濃いソースとよくマッチする太めの麺
粉末ならではの濃いソースと合わせるのは、太めの油揚げ麺。ガッシリした食感です。ペヤングはもちろん、カップ焼そばとしては太めのUFOの麺よりもさらにひとまわり太いでしょうか。
ソースが濃いめでパンチがあるため、太い麺と合わせることでバランスはきちんと取れています。太い油揚げ麺を使うとどうしても揚げた油の匂いが前に出てきてしまうことが多いのですが、今回はソースのスパイスがうまく麺の匂いを消しており、麺の味が前に出過ぎることを防いでいました。非常に相性の良い組み合わせです。
「金ちゃん焼そば」は古くて新しい味
カップの形状、湯切りの方法や、粉末ソースならではの濃くてパンチのある味に、昔ながらのインスタント焼そばのなつかしさを感じる一杯でした。
それでいて、最近のカップ焼そばの多くに入っている豚脂やマヨネーズ等を使用しない、ストレートな粉末ソースの味は、昔を知らない人にとっては新鮮な味にも映るのではないかと思います。古くて新しい味と言えるのではないでしょうか。
年々進化するカップ焼そばの本流とは別の道を歩みながら、それでも大きな支持を受け続ける「金ちゃん焼そば」。東日本の方はなかなか手に入らないでしょうが、ネット通販や四国フェア等で手に入れるなら、ぜひとも味わってみて欲しい一杯です。