関西人が「ホッピー」を知らない理由 メーカーを直撃してみると...
茶色いビンに入っているのが特徴の「ホッピー」。焼酎で割って飲むことが多く、「中(焼酎)多めで」といった頼み方をする。
東京では浅草の「ホッピー通り」が有名。しかし実はこの飲み物、関東圏とそれ以外では認知度に差があるようだ。ツイッターでは、
「関東で初めて飲んだわ~!」
「関東では一般的らしいホッピーという飲み物。私も上京の際には好んで頂きますが、地元の関西では一切見かけません」
「地域的にホッピーって馴染みが無いのよねこれはお酒なの?」
といった声があがっている。
実際のところ、富山、名古屋に住んでいた筆者がホッピーを知ったのは就職で東京に出てきてから。上司にいきなり「黒派?白派?」と聞かれるも訳が分からず、飲み方を教わった経験がある。
ホッピーは関東圏特有の飲み物なのか。Jタウンネットはその実態を探ってみた。
売上の9割は関東
Jタウンネットは2015年3月5日~2019年6月11日の期間、「ホッピー、飲む?」というタイトルで投票を行った。その結果が以下になる。
「飲んだことがある」が赤、「飲んだことがない」が青、「結果が拮抗」が黄色だ。
こうしてみると関東地方含め、東日本は「飲んだことがある」と回答する地域が多い。その一方、長野・岐阜より西側は「飲んだことがない」と回答する地域が増えてくる。
東日本の場合は18地域のうち15地域が「飲んだことがある」派だが、西日本だと「飲んだことがある」派は29地域のうち11地域だけ。その差は一目瞭然だ。
東日本は関東でホッピーを飲んだ人が他県に引っ越した可能性も考えられるが、西日本に関してはホッピーを飲める店が限られていると言えるだろう。
ホッピーを製造する「ホッピービバレッジ」の広報担当者に聞いてみると、ホッピー自体は全国47都道府県で取り扱っているという。しかし売上の9割は関東圏で占められ、特に東京・神奈川・千葉・埼玉の取り扱いが多いという。
地域によって、見られるホッピーにも違いがあるようだ。
全国に流通している、紙ラベルが巻かれた「ホッピー330」は、地方自治体の資源ごみとして回収、リサイクルされる。一方、ボトルに「ホッピー」とプリントされているのは、飲食店専用のリターナブル製品。飲み終わって空になったビンをそのまま工場に持ち帰り、中を洗浄して再利用しているという。
後者のリターナブル瓶は、主に東京・神奈川・千葉・埼玉を中心に取り扱っている。関東ではお馴染みのリターナブル瓶を関西では目にしないことから、「ホッピーは関東のみの流通と思う人も多くいる」(担当者)とのこと。
アルコールと割って飲むのはなぜ?
ホッピーといえば焼酎などのアルコールで割って飲むのが一般的だが、そもそもは「割って飲むもの」ではなかったようだ。
ホッピーの開発は大正時代に遡る。ラムネの製造販売業を営んでいた創業者の石渡秀さんは、1926(大正15)年、信州の野沢に新しいラムネ工場を構えた。その後縁あって、大手ビールメーカーで買い占められていた、ビールの原材料である「ホップ」を農家から譲ってもらったという。
当時は高級品だったビールの代表品として「ノンビア」と呼ばれるノンアルコールビールが広まっており、市販品の中には「まがいもの」も流通していた。石渡さんは本物のノンビアを作るべく開発に着手、1948年のホッピー発売に至る。
ホッピーとアルコールを割って飲む、現在のスタイルが確立されたのは戦後のことだ。お酒やビールに代わって、人々は闇市で流通していたメチルアルコール等の質の悪いものを飲んでいたという。そこで、
「メチルアルコール等をホッピーで割ることで独特の臭みがとれ、安く美味しく早く酔える」
と、アルコールで割ることが広まっていったという。
なお、メチルアルコールは毒性が強く、飲んだ場合は死に至ることもある。非常に危険なので、飲むのは絶対にNGだ。
歴史あるホッピーだが、担当者に今後の販売地域を聞くと、
「本当にゆっくりとではありますが徐々に拡大し、広がった先で浸透しているのが実態です。海外への進出も視野に入っております」
とのこと。
「関東の飲み物」のイメージは間違いではなかったようだ。
(7月15日11時追記)
メチルアルコールの危険性を伝える記述を、本文中に追加しました。